番外編 friction
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「え?」
最後の言葉が聞き取れなくて、伊理穂は聞き返した。
結子が慌てたように首を振る。
「な、なんでもない! とにかく、絶対、誰にも、内緒、よ! 水戸くんだろうと誰だろうと、何が何でも絶対に絶対に話しちゃダメ! いいわね!?」
「わ、わかった!」
伊理穂は固く結子の手を握り締めて頷いた。
結子が頼れるのは自分だけだと思うと、さらに使命感が湧いた。
なんとでも機密を厳守し、絶対に任務を遂行しなくては。
(がんばるからね、結ちゃん!)
その約束を結んでから、ずっと伊理穂は三井の周辺をかぎまわっていた。
部活の朝練も、休み時間も、部活の午後練も、帰りの時間も。
そういえばそれが原因で、ここ最近きちんと洋平との時間をとれていなかった。
これじゃあ洋平が怒るのは当たり前だ。
思わず事情を説明しようと伊理穂は息を吸い込んだけれど、すぐに唇を強く引き結んだ。
言えない。だって、結子と約束している。洋平にも秘密にすると。
(ど、どうしよう……)
うまい言い訳も見つからず、どうしたらいいかわからずにきつく瞳を閉じると、耳元でダンと壁を殴る大きな音がした。
びくりと肩を震わせて洋平を見ると、洋平の顔が今にも触れそうなくらい近くにあった。
苦しげに刻まれた眉間の皺が、洋平の心境を表しているようで、伊理穂の胸が不穏にざわめいた。
「よ、ようへ……」
弁解しようとした伊理穂の言葉の先を奪うように、洋平が低く抑えた声を出す。
「伊理穂。オレはそんなに頼りないか? それとも……お前が頼りたい相手は、もうオレじゃないのか……?」
「よ、洋平、ちが……っ!」
「ちがう……? じゃあなんだよ。言ってみろよ」
「そ、それは……」
(どうしよう……。言えないよ……!)
言葉につまる伊理穂の頭上で、洋平が小さく鼻で笑う。
洋平は伊理穂から顔を背けると、ぽつりと呟いた。
「オレたち、やっぱり考え直した方がいいのかもな」
「――え?」
「バイトいってくる」
それだけ言うと、洋平は身を翻した。
洋平の部屋には、驚きに目を見開いた伊理穂だけが残された。
あれからしばらくして、伊理穂は洋平の部屋を出ると、街へと来ていた。
とぼとぼと足取りも重く、目指す場所もないままにさまよい続ける。
(どうしよう。洋平、怒っちゃった……)
脳裏に、どこか傷ついたように怒っていた洋平の顔がよみがえる。
洋平にすべて話してしまえたらどんなに楽だろう。
(考え直すって……別れるってこと……? そんなのやだよ、洋平……!)
絶望で視界が真っ暗になって、伊理穂は足を止めた。
と、そのとき。
最後の言葉が聞き取れなくて、伊理穂は聞き返した。
結子が慌てたように首を振る。
「な、なんでもない! とにかく、絶対、誰にも、内緒、よ! 水戸くんだろうと誰だろうと、何が何でも絶対に絶対に話しちゃダメ! いいわね!?」
「わ、わかった!」
伊理穂は固く結子の手を握り締めて頷いた。
結子が頼れるのは自分だけだと思うと、さらに使命感が湧いた。
なんとでも機密を厳守し、絶対に任務を遂行しなくては。
(がんばるからね、結ちゃん!)
その約束を結んでから、ずっと伊理穂は三井の周辺をかぎまわっていた。
部活の朝練も、休み時間も、部活の午後練も、帰りの時間も。
そういえばそれが原因で、ここ最近きちんと洋平との時間をとれていなかった。
これじゃあ洋平が怒るのは当たり前だ。
思わず事情を説明しようと伊理穂は息を吸い込んだけれど、すぐに唇を強く引き結んだ。
言えない。だって、結子と約束している。洋平にも秘密にすると。
(ど、どうしよう……)
うまい言い訳も見つからず、どうしたらいいかわからずにきつく瞳を閉じると、耳元でダンと壁を殴る大きな音がした。
びくりと肩を震わせて洋平を見ると、洋平の顔が今にも触れそうなくらい近くにあった。
苦しげに刻まれた眉間の皺が、洋平の心境を表しているようで、伊理穂の胸が不穏にざわめいた。
「よ、ようへ……」
弁解しようとした伊理穂の言葉の先を奪うように、洋平が低く抑えた声を出す。
「伊理穂。オレはそんなに頼りないか? それとも……お前が頼りたい相手は、もうオレじゃないのか……?」
「よ、洋平、ちが……っ!」
「ちがう……? じゃあなんだよ。言ってみろよ」
「そ、それは……」
(どうしよう……。言えないよ……!)
言葉につまる伊理穂の頭上で、洋平が小さく鼻で笑う。
洋平は伊理穂から顔を背けると、ぽつりと呟いた。
「オレたち、やっぱり考え直した方がいいのかもな」
「――え?」
「バイトいってくる」
それだけ言うと、洋平は身を翻した。
洋平の部屋には、驚きに目を見開いた伊理穂だけが残された。
あれからしばらくして、伊理穂は洋平の部屋を出ると、街へと来ていた。
とぼとぼと足取りも重く、目指す場所もないままにさまよい続ける。
(どうしよう。洋平、怒っちゃった……)
脳裏に、どこか傷ついたように怒っていた洋平の顔がよみがえる。
洋平にすべて話してしまえたらどんなに楽だろう。
(考え直すって……別れるってこと……? そんなのやだよ、洋平……!)
絶望で視界が真っ暗になって、伊理穂は足を止めた。
と、そのとき。