終
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洋平は、じっと自分を見つめてくる伊理穂の瞳を見つめ返した。
伊理穂がまさか自分のことをそんな風に見ててくれてたなんて、ちっとも気づかなかった。
喜びに震える感情を必死で抑えつけながら、洋平は伊理穂を安心させるように力強く抱きしめる。
「違ぇよ、伊理穂。オレは、ずっと伊理穂に救われてた。グレたのだって、オレが弱かったからだ。それだけだ。お前のせいじゃない。そんな風に、自分を追い詰めたりするなよ。オレは、お前がいてくれたから立ち直ることができた。お前がいてくれたから、オレはオレでいることができたんだ。お前はオレの人生をめちゃくちゃにしたんじゃねぇよ。お前が、オレを救ってくれたんだ。だいたい、オレたちの人生、まだまだこれからだろ? 何も終わってねぇし、何もまだ始まってねえ。そうだろ、伊理穂」
「うん……」
「好きなんだ、伊理穂。愛してる。お前も、ほんとうにオレを好いてくれてるって、信じていいんだよな……?」
「うん。好き。洋平のことが好き。愛してる」
「伊理穂――」
喜びや愛しさや、いろいろな感情が洋平のからだの中を溢れてどうしようもなくなって、洋平は目の前の伊理穂の唇に噛み付くようにキスをした。
「んっ」
微かに体を震わせて、伊理穂が可愛らしい声をあげる。
伊理穂のことが愛しくて、それ以外なにも考えられない。
胸の奥底からわきあがってくる喜びに体が溶けて、脳が麻痺してしまいそうだ。
「伊理穂……」
唇を離して名前を呼ぶと、伊理穂が閉じていた目を開ける。
伊理穂の熱に潤んだ瞳。
この視線の先に自分がいるなんて、夢みたいだった。
「伊理穂、もう一度だけ聞くけど、ちゃんとわかってる……よな? オレは……お前のこと、幼馴染みとしてじゃなくて、ひとりの女として好きなんだぜ……?」
「うん」
「今までみたいじゃなくて、こんな風にキスしたり……お前のことが欲しくなったり……それでも……」
「うん」
言いかけた言葉を、伊理穂が優しく微笑んで遮る。
「わかってる。わたしも、ひとりの男の人として、洋平が好きだよ。愛してる。わたし、洋平の幼馴染みじゃなくて、洋平の恋人になりたい」
「伊理穂……」
「洋平……」
震える声で名前を呼び合うと、二人はどちらからともなく、引き寄せられるようにキスをした。
長いすれ違いでできた傷を癒しあうように、優しく、時に激しく、何度も何度も唇を触れ合わせる。
「伊理穂……。大切にする。もう二度と、お前を手放したり、傷つけたりなんてしねぇ。オレが、一生大切にお前のこと守るよ」
「ありがとう。でもわたしも、洋平のこと守るよ。洋平……大好き!」
洋平の脳裏に、いつかの遠い記憶がよみがえる。
『美女と野獣』。
幼い日に、その話に例えられたときの、伊理穂の言葉。
『あ、でもようへい君。『美女』と『野獣』はずぅっと一緒に幸せに暮らすんだよ。伊理穂たちもそうってことだよね?』
洋平は懐かしむように微笑むと、伊理穂の目尻に口付けた。
はにかむように笑う伊理穂の頬をそっと撫でて、誓うように言う。
「伊理穂。ずっと一緒に、幸せに暮らそうな」
「ええ? なあに、それ?」
脈絡のない洋平の言葉がおかしかったのか、伊理穂が小さく笑い声をあげた。
そんな伊理穂と額をくっつけて、洋平は悪戯に笑う。
「オレたち、『美女と野獣』なんだろ?」
「!」
言うと、伊理穂の瞳が見開かれた。
すぐに嬉しそうにふわっと笑う。
「懐かしい。洋平、それ、覚えてたんだ」
「当たり前だろ? お前との思い出、忘れねぇよ」
「うん……」
「で、返事は?」
「え?」
「ずっと一緒に、幸せに暮らそうなって」
「ああ、うん。幸せにするね」
「ばーか。オレがお前を幸せにすんだよ」
言って洋平は伊理穂に口づけた。
こうして月瀬伊理穂と水戸洋平は、いつまでもいつまでも、幸せに暮らしました……とさ。
Fin……