終
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「お前のこと、ほんとうはずっとずっとガキの頃から好きだった。今も、愛してるんだ、伊理穂」
「――うそ!」
突然、洋平は伊理穂に強い力で体を突き飛ばされた。
驚いて伊理穂を見ると、伊理穂が怯えたように洋平を見つめていた。
「伊理穂……?」
ただならぬその様子に、洋平は伊理穂を落ち着かせようと慌てて手を伸ばす。
と、伊理穂がその手を乱暴に弾いた。
「いやっ! 違う……違うの……」
「伊理穂」
「違う、洋平、ごめんなさい。大丈夫、大丈夫だから」
「え?」
自分の告白を拒否するのとも違う、まるで独白のような伊理穂のそれに、洋平は眉根を寄せた。
伊理穂が何か恐ろしいものから自分を守ってでもいるかのように、震える腕で自分自身を抱きしめる。
「洋平、だめだよ。それじゃあまた繰り返しになっちゃう」
「繰り返し?」
なんの。
伊理穂がいったいなんのことを言っているのか、洋平にはわからなかった。
伊理穂がぶるぶると首を横に振る。
「三年前もわたしがこんな風に取り乱したから、だから洋平、自分の感情押し殺さなくちゃいけなくなったのに、わたし、またそれを忘れて繰り返しちゃうとこだった……」
「なっ。伊理穂、違う! それは……っ!」
「違わない! 違わないよ……。だって洋平はわたしのこと嫌いなのに!」
伊理穂が激しくかぶりを振る。
「夏子さんと……付き合ってるのに。わたしを好きだなんて……そんなうそ……言わせちゃうなんて……ほんとうにごめんなさい、洋平。大丈夫。わたしは大丈夫。だから、だからもう繰り返さないで。わたしのために人生を無駄にしないで。わたしは平気。大丈夫。洋平、もうわたしを守らなくちゃなんてそんなこと、気にしなくっていいんだよ。わたしはちゃんと、一人でやれる。だから……っ」
溢れそうになる涙を必死で我慢して、なんとか笑顔を貼り付けてそう言う伊理穂に、洋平の胸が潰されたようになった。
激しく押し寄せる感情の波を必死に押し返すように、洋平は歯を食いしばる。
(伊理穂……)
思わず目頭が熱くなった。
三年前と今回とで、伊理穂の心には取り返しのつかないくらい、大きな傷ができているのを悟った。
(もう……だめなのか? 遅かったのか……? このまま……一生離れて生きていくしか、ないのか……?)
もうなにを言っても、自分の言葉が、伊理穂に届くことはないのかもしれない。
だけど、このまま伊理穂を諦めるなんてしたくなかった。
だってこんなにも伊理穂のことが好きで、自分はこんなにも伊理穂のそばにいたいと願ってる。
それにまだ、自分は一度も伊理穂にまっすぐぶつかったことがない。
「伊理穂……!」
洋平は伊理穂の腕を乱暴に掴むと、そのまま力強く引き寄せた。
「きゃっ!? ようへ……っ。――!」
離れようとする伊理穂の体を強引に押さえつけて、洋平は伊理穂に口づける。
「ん……っ」
「伊理穂……」
少しだけ唇を離して、洋平はそこを掠めるように名前を囁くと、もう一度柔らかく伊理穂の口を塞いだ。