終
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洋平は小さく息を吐くと、自分の手の平をじっと見つめた。
そこが、緊張で小さく震えていた。
胸の奥が、言いようのない不安に強く揺さぶられる。
その時、洋平の耳に慌てたようにこちらに駆けてくる足音が聞こえた。
伊理穂だった。
途端に洋平の心臓が緊張と不安でばくばくと早鐘を打ち始める。
なんて切り出そう。
戸惑う洋平をよそに、伊理穂は洋平の前まで来ると、勢いよく体を折り曲げた。
「ご、ごめんなさい!」
「――え?」
呆気に取られる洋平には気づかずに、伊理穂が肩を震わせながら激しく謝罪の言葉を繰り返す。
「ごめんなさいごめんなさい! 洋平、わざわざ忘れ物届けに来てくれたんでしょう!?」
顔をあげた伊理穂の瞳から、ぼろぼろと大粒の涙が流れ落ちる。
「ごめんなさい。わたし……ちゃんと、確認したのに……! もしも忘れ物したら、洋平が届けに使わされるかもしれないと思って、だから何度も何度も確認したのに……! なのに、どうして……!?」
伊理穂が涙の止まらない顔を、両手で隠すように覆った。
きつく噛み締めた唇の間から、苦しげな声を絞り出す。
「どうして、わたし、たったそれだけの簡単なこともできないの……!?」
そう言ったところで伊理穂の中の何かが堪えきれずに破裂したのか、突然伊理穂がうわあああんと子どものような声をあげて泣き出した。
「伊理穂」
驚いて声を掛けても届かないようで、伊理穂は激しく首を横に振る。
「もういや! どうして……!? どうしてわたし、いつもいつも洋平に迷惑かけてばっかりなの……! 早く忘れさせてあげたいのに……っ。わたしの……ことなんか……っ、もう思い出さなくてすむように……夏子さんと幸せに過ごせるように……してあげたいのに……っ! どうして……!? 洋平ごめんなさい! ほんとうにほんとうにごめんなさい!!」
「伊理穂!」
苦しげに泣き叫ぶ伊理穂を見てられなくて、気づいたら洋平は伊理穂を抱きしめていた。
腕の中で伊理穂がハッと驚いたように身じろぐ。
伊理穂が洋平の胸を押して腕から抜け出そうとしているのに気づいて、洋平は腕の力を強めた。
伊理穂を離したくなかった。
今までのことを考えたら、伊理穂だって少しは洋平を責めたっていいはずなのに、いつだって伊理穂はそうすることをしなかった。
いつだって、そんなふうになるまで洋平を追い詰めてしまったと伊理穂自身のことを責めてばかりだった。
どうして伊理穂はこんなに優しいんだろう。
どうして。
「好きだ……」
その想いで洋平の中がいっぱいになって、洋平の口から気持ちが溢れ出た。
「え……?」
伊理穂が驚いたように表情を止める。
一度想いを口にしたら、今まで堪えていた分の気持ちがどっと溢れてきてたまらなくなった。
伊理穂の細い体。
頬に触れるやわらかな栗色の髪。
鼻腔をくすぐる甘い香り。
すべてが愛しくて、切なくて、洋平の胸を苦しくさせる。
「好きだ……伊理穂。愛してる」
「よう……へい? 突然、なに……言ってるの? 好きだなんて……そんな、うそ……」
「うそじゃねぇよ」
抵抗をやめた伊理穂の体を、洋平はさらに強く抱きしめる。
そこが、緊張で小さく震えていた。
胸の奥が、言いようのない不安に強く揺さぶられる。
その時、洋平の耳に慌てたようにこちらに駆けてくる足音が聞こえた。
伊理穂だった。
途端に洋平の心臓が緊張と不安でばくばくと早鐘を打ち始める。
なんて切り出そう。
戸惑う洋平をよそに、伊理穂は洋平の前まで来ると、勢いよく体を折り曲げた。
「ご、ごめんなさい!」
「――え?」
呆気に取られる洋平には気づかずに、伊理穂が肩を震わせながら激しく謝罪の言葉を繰り返す。
「ごめんなさいごめんなさい! 洋平、わざわざ忘れ物届けに来てくれたんでしょう!?」
顔をあげた伊理穂の瞳から、ぼろぼろと大粒の涙が流れ落ちる。
「ごめんなさい。わたし……ちゃんと、確認したのに……! もしも忘れ物したら、洋平が届けに使わされるかもしれないと思って、だから何度も何度も確認したのに……! なのに、どうして……!?」
伊理穂が涙の止まらない顔を、両手で隠すように覆った。
きつく噛み締めた唇の間から、苦しげな声を絞り出す。
「どうして、わたし、たったそれだけの簡単なこともできないの……!?」
そう言ったところで伊理穂の中の何かが堪えきれずに破裂したのか、突然伊理穂がうわあああんと子どものような声をあげて泣き出した。
「伊理穂」
驚いて声を掛けても届かないようで、伊理穂は激しく首を横に振る。
「もういや! どうして……!? どうしてわたし、いつもいつも洋平に迷惑かけてばっかりなの……! 早く忘れさせてあげたいのに……っ。わたしの……ことなんか……っ、もう思い出さなくてすむように……夏子さんと幸せに過ごせるように……してあげたいのに……っ! どうして……!? 洋平ごめんなさい! ほんとうにほんとうにごめんなさい!!」
「伊理穂!」
苦しげに泣き叫ぶ伊理穂を見てられなくて、気づいたら洋平は伊理穂を抱きしめていた。
腕の中で伊理穂がハッと驚いたように身じろぐ。
伊理穂が洋平の胸を押して腕から抜け出そうとしているのに気づいて、洋平は腕の力を強めた。
伊理穂を離したくなかった。
今までのことを考えたら、伊理穂だって少しは洋平を責めたっていいはずなのに、いつだって伊理穂はそうすることをしなかった。
いつだって、そんなふうになるまで洋平を追い詰めてしまったと伊理穂自身のことを責めてばかりだった。
どうして伊理穂はこんなに優しいんだろう。
どうして。
「好きだ……」
その想いで洋平の中がいっぱいになって、洋平の口から気持ちが溢れ出た。
「え……?」
伊理穂が驚いたように表情を止める。
一度想いを口にしたら、今まで堪えていた分の気持ちがどっと溢れてきてたまらなくなった。
伊理穂の細い体。
頬に触れるやわらかな栗色の髪。
鼻腔をくすぐる甘い香り。
すべてが愛しくて、切なくて、洋平の胸を苦しくさせる。
「好きだ……伊理穂。愛してる」
「よう……へい? 突然、なに……言ってるの? 好きだなんて……そんな、うそ……」
「うそじゃねぇよ」
抵抗をやめた伊理穂の体を、洋平はさらに強く抱きしめる。