終
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呼びかけると、花道があぁ!? と不機嫌そうにこちらを見てくる。
流川はそれには取り合わずに、疑問を口にする。
「水戸。やっと来たのか?」
「――!」
その言葉だけで花道には意味がわかったのか、大きく瞳を見開いた。
花道と洋平は仲がいい。
さっきの電話でか、流川が洋平と話をしたすぐ後でか、洋平に事情を聞いたんだろう。
花道はいやそうに顔をしかめると、気を取り直すように一度咳払いをした。
頼まれたから言っているんだという、いやいやオーラを全面に出しながら、しぶしぶと口を開く。
「……洋平が、おめーに礼言いたいって言ってたぞ。背中押してもらったって」
「伊理穂のためだ。あいつのためじゃねー」
だから礼を言われる筋合いなんてねー。そう言うと、花道の眉が凶悪に跳ね上がった。
「フン! あいっかわらず根性のひねくれたキツネだぜ!」
吐き捨てるように言った後、
「――あいつら、うまくいくよな」
自信なさげにぽつりと呟いてきた。
流川はちらりとそんな花道を一瞥すると、ふうと嘆息する。
「たりめーだろ」
(うまくいかなかったら、ゆるさねー)
思って、伊理穂の去った先を見つめた。
今日、新幹線の中で、儚く微笑んでいた伊理穂の姿が流川の脳裏に浮かぶ。
きっと、戻ってくる頃には、あんな泣きそうな笑顔じゃなくて、心からの笑顔が見られるはずだ。
それを想像するだけで、体の奥のほうがじんわりと温かくなった。
まだ少し胸は痛むけれど、でも伊理穂が幸せになれるなら、それでいい。
(よかったな、伊理穂……)
これでやっと、自分もバスケに専念できる。
(……三井先輩にも教えてやるか)
思って流川は席を立った。
後ろで花道がぎゃんぎゃんとつっかかってきたけれど、もう取り合う気などなかった。
勝手にひとりで騒いでいればいい。
流川は花道の言葉を背中で受け流しながら、三井の部屋へと足を向けた。
洋平は、ひとり公園で伊理穂を待っていた。
公園はとても静かだった。自分の息遣いの他は、なにも聞こえない。
「…………」
洋平は波立つ気持ちを落ち着けるように、そっと空を見上げた。
神奈川にくらべて空気が綺麗なのか、星がいつもより多く、輝いて見えた。
『洋平、あれが夏の大三角形だよ! 綺麗だね!!』
いつかの伊理穂の声が耳の奥でこだまする。
(伊理穂……)
いきなり呼び出したりして、伊理穂ははたして来てくれるだろうか。
流川と別れていたのを知らなかったとはいえ、ずいぶんひどく傷つけるようなことを言ってしまった。洋平のほうこそもう伊理穂に嫌われているかもしれない。
考えただけで、心臓がきゅっと縮んだ。
自分は伊理穂にそれ以上の思いをさせてきておいて、傷つく権利なんてないはずなのに。
わかっていても痛む胸をどうすることもできなかった。
流川はそれには取り合わずに、疑問を口にする。
「水戸。やっと来たのか?」
「――!」
その言葉だけで花道には意味がわかったのか、大きく瞳を見開いた。
花道と洋平は仲がいい。
さっきの電話でか、流川が洋平と話をしたすぐ後でか、洋平に事情を聞いたんだろう。
花道はいやそうに顔をしかめると、気を取り直すように一度咳払いをした。
頼まれたから言っているんだという、いやいやオーラを全面に出しながら、しぶしぶと口を開く。
「……洋平が、おめーに礼言いたいって言ってたぞ。背中押してもらったって」
「伊理穂のためだ。あいつのためじゃねー」
だから礼を言われる筋合いなんてねー。そう言うと、花道の眉が凶悪に跳ね上がった。
「フン! あいっかわらず根性のひねくれたキツネだぜ!」
吐き捨てるように言った後、
「――あいつら、うまくいくよな」
自信なさげにぽつりと呟いてきた。
流川はちらりとそんな花道を一瞥すると、ふうと嘆息する。
「たりめーだろ」
(うまくいかなかったら、ゆるさねー)
思って、伊理穂の去った先を見つめた。
今日、新幹線の中で、儚く微笑んでいた伊理穂の姿が流川の脳裏に浮かぶ。
きっと、戻ってくる頃には、あんな泣きそうな笑顔じゃなくて、心からの笑顔が見られるはずだ。
それを想像するだけで、体の奥のほうがじんわりと温かくなった。
まだ少し胸は痛むけれど、でも伊理穂が幸せになれるなら、それでいい。
(よかったな、伊理穂……)
これでやっと、自分もバスケに専念できる。
(……三井先輩にも教えてやるか)
思って流川は席を立った。
後ろで花道がぎゃんぎゃんとつっかかってきたけれど、もう取り合う気などなかった。
勝手にひとりで騒いでいればいい。
流川は花道の言葉を背中で受け流しながら、三井の部屋へと足を向けた。
洋平は、ひとり公園で伊理穂を待っていた。
公園はとても静かだった。自分の息遣いの他は、なにも聞こえない。
「…………」
洋平は波立つ気持ちを落ち着けるように、そっと空を見上げた。
神奈川にくらべて空気が綺麗なのか、星がいつもより多く、輝いて見えた。
『洋平、あれが夏の大三角形だよ! 綺麗だね!!』
いつかの伊理穂の声が耳の奥でこだまする。
(伊理穂……)
いきなり呼び出したりして、伊理穂ははたして来てくれるだろうか。
流川と別れていたのを知らなかったとはいえ、ずいぶんひどく傷つけるようなことを言ってしまった。洋平のほうこそもう伊理穂に嫌われているかもしれない。
考えただけで、心臓がきゅっと縮んだ。
自分は伊理穂にそれ以上の思いをさせてきておいて、傷つく権利なんてないはずなのに。
わかっていても痛む胸をどうすることもできなかった。