終
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「…………」
きっぱり言い放つと、流川が難しい顔で黙り込んだ。
伊理穂は瞳を細めてそんな流川を見つめる。
淋しさで溢れかえっていた伊理穂の胸に、ろうそくの炎のように微かだけれども、確かなぬくもりが生まれていた。
「ありがとう、楓くん」
気持ちを込めて言葉にする。
「楓くんに、変なこと言わせちゃってごめんね。……でも、気にかけてくれて嬉しかった。それに、楓くんが言うと妙な説得力があるよね。正直言うと、ずっと洋平のこと諦めなくちゃってことで頭がいっぱいで、ぐちゃぐちゃだったんだけど……少し、楽になった。元気でたよ。ほんとうに、ありがとう」
「どあほう。別れても、お前は大切な仲間だって言ったろ? ……今だけは、オレが水戸のかわりをしてやる。だから、無理すんな、伊理穂」
「あはは、洋平のかわり? やだなあ、楓くん。それじゃあ今だけじゃ済まなくなっちゃうよ?」
「言ったろ、オレを信じろって。ダイジョーブだ。今に本物の水戸がお前のそばに戻る」
「……うん。ありがとう」
そんなことは二度と起こりえない。わかっているのに、なぜか流川が言うと少しだけ心が軽くなった。
伊理穂の素直な返事に流川は満足そうに小さく笑うと、そのまま伊理穂の肩に頭を預けてきた。
どきんと伊理穂の心臓が跳ねる。
「か、楓くん?」
「寝る。肩貸せ」
「え? あ……」
答えるよりも早く、流川の頭からすうすうと穏やかな寝息が聞こえてきた。
その寝つきのよさに、伊理穂は目を丸くする。
「……おやすみ三秒だ」
いや、もっと早いかな。そんなことを考えながら、伊理穂も少し眠ろうと目を閉じた。
ここのところよく眠れない日々が続いていたけれど、肩からじんわりと伝わってくる流川のぬくもりが優しくて、なんとなく安心して眠れるような気がした。
インターハイ予選の開会式を終え、旅館に着いたのは、夏の長い日も沈みかけた19時頃だった。
明日の試合についての軽いミーティングを終え、現在部員たちは各々自由に時間を過ごしている。
伊理穂も談話室で、流川と雑談して過ごしていた。
ここからは、旅館の電話で晴子と話している花道の声も聞こえてくる。
「あはは。花道、嬉しそうだなー」
でれんとだらしなく鼻の下を伸ばして、頬を薄く染めながら受話器にかじりつくようにしている花道を見て、伊理穂も顔をほころばせた。
(早く、晴子ちゃんに気持ちが通じたらいいね、花道)
花道はまっすぐな男だ。
きっと付き合ったら大事にしてくれるだろう。
そんなことを思いながらにこにこ花道を見ていると、ひと段落ついたのか、花道が受話器を下ろした。
そのタイミングを見計らっていたかのように、再び電話が鳴り出す。
と、旅館あてに掛かってきたはずのその電話に、花道がなんの躊躇いもなく出た。
「あ!」
きっぱり言い放つと、流川が難しい顔で黙り込んだ。
伊理穂は瞳を細めてそんな流川を見つめる。
淋しさで溢れかえっていた伊理穂の胸に、ろうそくの炎のように微かだけれども、確かなぬくもりが生まれていた。
「ありがとう、楓くん」
気持ちを込めて言葉にする。
「楓くんに、変なこと言わせちゃってごめんね。……でも、気にかけてくれて嬉しかった。それに、楓くんが言うと妙な説得力があるよね。正直言うと、ずっと洋平のこと諦めなくちゃってことで頭がいっぱいで、ぐちゃぐちゃだったんだけど……少し、楽になった。元気でたよ。ほんとうに、ありがとう」
「どあほう。別れても、お前は大切な仲間だって言ったろ? ……今だけは、オレが水戸のかわりをしてやる。だから、無理すんな、伊理穂」
「あはは、洋平のかわり? やだなあ、楓くん。それじゃあ今だけじゃ済まなくなっちゃうよ?」
「言ったろ、オレを信じろって。ダイジョーブだ。今に本物の水戸がお前のそばに戻る」
「……うん。ありがとう」
そんなことは二度と起こりえない。わかっているのに、なぜか流川が言うと少しだけ心が軽くなった。
伊理穂の素直な返事に流川は満足そうに小さく笑うと、そのまま伊理穂の肩に頭を預けてきた。
どきんと伊理穂の心臓が跳ねる。
「か、楓くん?」
「寝る。肩貸せ」
「え? あ……」
答えるよりも早く、流川の頭からすうすうと穏やかな寝息が聞こえてきた。
その寝つきのよさに、伊理穂は目を丸くする。
「……おやすみ三秒だ」
いや、もっと早いかな。そんなことを考えながら、伊理穂も少し眠ろうと目を閉じた。
ここのところよく眠れない日々が続いていたけれど、肩からじんわりと伝わってくる流川のぬくもりが優しくて、なんとなく安心して眠れるような気がした。
インターハイ予選の開会式を終え、旅館に着いたのは、夏の長い日も沈みかけた19時頃だった。
明日の試合についての軽いミーティングを終え、現在部員たちは各々自由に時間を過ごしている。
伊理穂も談話室で、流川と雑談して過ごしていた。
ここからは、旅館の電話で晴子と話している花道の声も聞こえてくる。
「あはは。花道、嬉しそうだなー」
でれんとだらしなく鼻の下を伸ばして、頬を薄く染めながら受話器にかじりつくようにしている花道を見て、伊理穂も顔をほころばせた。
(早く、晴子ちゃんに気持ちが通じたらいいね、花道)
花道はまっすぐな男だ。
きっと付き合ったら大事にしてくれるだろう。
そんなことを思いながらにこにこ花道を見ていると、ひと段落ついたのか、花道が受話器を下ろした。
そのタイミングを見計らっていたかのように、再び電話が鳴り出す。
と、旅館あてに掛かってきたはずのその電話に、花道がなんの躊躇いもなく出た。
「あ!」