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ばしりと乾いた音が響いて、じんじんとした痛みがそこに広がった。
投げられたのは、湿布や包帯など、伊理穂と結子が買い出しにでたものだった。
洋平はそれを投げた結子に視線を向ける。
「なにすんだよ久遠さん」
「なにすんだよ、じゃないわよ! このすっとこどっこい!」
「すっ……!?」
あまりの表現に洋平が絶句した。
間髪いれずに結子が言葉を挟んでくる。
「よくも、よくも伊理穂にあんなひどいことが言えたわね! お前もして欲しいのかですって!? 流川がいないから!? バカ言ってんじゃないわよ! 伊理穂の気持ちなんてなんにも知らないくせに!」
「なんにも……? どういうことだよ。伊理穂の気持ちなら、オレが一番よくわかってる。久遠さんにとやかく言われる筋合いなんてねえ。あんたこそオレの気持ちのなにがわかるんだ」
思わず声が鋭くなった。
結子はそれにも怯まずにさらに声を張り上げる。
「あんたの気持ちなんてわかるもんですか! わかりたくもないわよ! さらに言わせてもらえば、伊理穂の気持ちだって、今ならわたしのほうがずっとあんたよりよくわかってる! 今のあんたは、伊理穂のこと真正面からなんて一度も見てないじゃないの! そんなあんたが伊理穂のなにをわかるっていうのよ!!」
「――!」
言われた言葉に愕然とした。
確かに、その通りだ。
伊理穂と距離を置いてから、自分は伊理穂をまっすぐ見つめたことがない。
伊理穂の瞳にうつる感情を知りたくなくて、瞳を見つめてはいても、心の中でずっと目をそらしていた。
「ずっとずっと口止めされてたけど、もう我慢の限界だわ! 堪忍袋の緒が切れたわよ! 馬鹿なあんたに教えてあげる! いーい、よく聞きなさい水戸洋平! 伊理穂はね、もう流川と付き合ってなんていないの。あの二人は、とっくのとうに別れてんのよ!!」
「――は!?」
がつんと、金属で頭を殴られたような気がした。
あまりの衝撃に、目の前で星がちかちかする。
なんだって?
今、結子はなんと言ったのだ?
(伊理穂と、流川が……別れた?)
そんなバカな。
にわかには信じることができなくて、洋平は震える唇を無理矢理押し開いた。
「ちょ、ま、待って久遠さん。うそだろ……? 別れたって、なんで……?」
「そんなの自分で考えなさいよ! 伊理穂、ひとりでずっとずっと健気に頑張ってて……それなのに! それなのに、どうしてあんたは……!」
突然言葉に詰まったかと思うと、結子の目からも涙があふれた。
洋平はハッと息を呑む。
「あんたなんか……あんたなんか一生その夏子さんとやらといちゃいちゃしてれば!? 今世紀最大の大バカ者!!」
ほとんど叫ぶようにして結子はそう言うと、素早く身をひるがえして伊理穂の後を追いかけていった。
洋平は、呆然と口元に手をあてる。
頭の中に嵐が吹き荒れて、うまく情報をまとめることができない。
そんなバカなことがあるわけがない。
だって伊理穂は幸せそうに微笑んでて。流川だって伊理穂のことすごく大切そうにしてて。
だから自分は二人の幸せを祈って距離を置いたのに。
それなのに。
「伊理穂が……流川と別れた……?」
どうして。
頭の中がぐちゃぐちゃして、なにもかもわからなかった。
To be continued…
投げられたのは、湿布や包帯など、伊理穂と結子が買い出しにでたものだった。
洋平はそれを投げた結子に視線を向ける。
「なにすんだよ久遠さん」
「なにすんだよ、じゃないわよ! このすっとこどっこい!」
「すっ……!?」
あまりの表現に洋平が絶句した。
間髪いれずに結子が言葉を挟んでくる。
「よくも、よくも伊理穂にあんなひどいことが言えたわね! お前もして欲しいのかですって!? 流川がいないから!? バカ言ってんじゃないわよ! 伊理穂の気持ちなんてなんにも知らないくせに!」
「なんにも……? どういうことだよ。伊理穂の気持ちなら、オレが一番よくわかってる。久遠さんにとやかく言われる筋合いなんてねえ。あんたこそオレの気持ちのなにがわかるんだ」
思わず声が鋭くなった。
結子はそれにも怯まずにさらに声を張り上げる。
「あんたの気持ちなんてわかるもんですか! わかりたくもないわよ! さらに言わせてもらえば、伊理穂の気持ちだって、今ならわたしのほうがずっとあんたよりよくわかってる! 今のあんたは、伊理穂のこと真正面からなんて一度も見てないじゃないの! そんなあんたが伊理穂のなにをわかるっていうのよ!!」
「――!」
言われた言葉に愕然とした。
確かに、その通りだ。
伊理穂と距離を置いてから、自分は伊理穂をまっすぐ見つめたことがない。
伊理穂の瞳にうつる感情を知りたくなくて、瞳を見つめてはいても、心の中でずっと目をそらしていた。
「ずっとずっと口止めされてたけど、もう我慢の限界だわ! 堪忍袋の緒が切れたわよ! 馬鹿なあんたに教えてあげる! いーい、よく聞きなさい水戸洋平! 伊理穂はね、もう流川と付き合ってなんていないの。あの二人は、とっくのとうに別れてんのよ!!」
「――は!?」
がつんと、金属で頭を殴られたような気がした。
あまりの衝撃に、目の前で星がちかちかする。
なんだって?
今、結子はなんと言ったのだ?
(伊理穂と、流川が……別れた?)
そんなバカな。
にわかには信じることができなくて、洋平は震える唇を無理矢理押し開いた。
「ちょ、ま、待って久遠さん。うそだろ……? 別れたって、なんで……?」
「そんなの自分で考えなさいよ! 伊理穂、ひとりでずっとずっと健気に頑張ってて……それなのに! それなのに、どうしてあんたは……!」
突然言葉に詰まったかと思うと、結子の目からも涙があふれた。
洋平はハッと息を呑む。
「あんたなんか……あんたなんか一生その夏子さんとやらといちゃいちゃしてれば!? 今世紀最大の大バカ者!!」
ほとんど叫ぶようにして結子はそう言うと、素早く身をひるがえして伊理穂の後を追いかけていった。
洋平は、呆然と口元に手をあてる。
頭の中に嵐が吹き荒れて、うまく情報をまとめることができない。
そんなバカなことがあるわけがない。
だって伊理穂は幸せそうに微笑んでて。流川だって伊理穂のことすごく大切そうにしてて。
だから自分は二人の幸せを祈って距離を置いたのに。
それなのに。
「伊理穂が……流川と別れた……?」
どうして。
頭の中がぐちゃぐちゃして、なにもかもわからなかった。
To be continued…