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「え、湿布?」
「はい。今、部の救急箱静岡に持って行っちゃってて……! 今日は保健室も閉まってるし、湿布と包帯とそのほか必要なもの、近くの薬局で買ってきます。わたしが言うのも……おかしいですけど……。洋平のこと、よろしくお願いします。洋平、わたしのせいでほんとうにごめんね。すぐ買ってくるから、だから待っててね」
最後のせりふを洋平に向けて言うと、伊理穂は部室に駆け込んだ。
自分のロッカーから財布を引っ掴むと、結子を伴って伊理穂は薬局へとむかった。
なんだかんだで、洋平たちはそのまま昼休憩へとなだれ込んだ。
夏子の見立てで、そんなに打撲がひどくないだろうということがわかると、花道たちは洋平と夏子を体育館に置いてご飯を食べに行った。
湿布を買いに行った伊理穂と結子はまだもどらない。
その到着を待って、洋平と夏子は手当てが済んでからご飯を食べに行けとのことだった。
洋平と夏子はのんびり体育館のフロアーに腰を降ろしてふたりの帰りを待った。
心臓の拍動にあわせて、傷がずきんずきんと痛む。
だいぶやわらいではきたものの、その痛みに、洋平は小さく息をはいた。
「傷、痛む?」
「まあ、多少は」
やせ我慢して返すと、夏子に苦笑された。
「つよがんなくていいっていったでしょ!」
言いながらばしんと洋平の背中を叩いてくる。
しゃれにならないその行動に激痛がはしり、洋平は低く呻いた。
「ちょ、夏子さん……!」
「それにしてもほんっと、よくやるわよねえ……。今日まで一緒に過ごして骨身に染みてわかったんだけど、洋平、伊理穂ちゃんのことほんとに好きで好きで大切で大切でしょうがないのね。なのにあんな態度ばっかりとって、あれが全部演技なんだから俳優だったらアカデミー賞もんだわよ」
夏子の言葉に洋平は苦笑する。
「真逆をやるのは、かえって楽だぜ。それでオレが伊理穂に徹底的に嫌われれば、なお良いだろ?」
「ふうん……。でも、それじゃあ洋平がつらいじゃない。あんた、このままだと近いうちに絶対内臓壊すわよ。吐き出せない感情は心だけじゃなくて体にも飛び火して蝕んでいくんだから」
「はは。それは恐ろしいな」
「笑い事じゃないってば……。――ねえ。なぐさめてあげよっか?」
「――あ?」
ふと自分に影が差して、洋平は顔をあげた。
隣りに座っていたはずの夏子が、洋平の上に覆いかぶさるようにからだを移動させてきた。
夏子の手があやしく洋平の頬に触れる。
夏子がこれまでとちがって、ねっとりと絡みつくような色香を漂わせて言う。
「ねえ、洋平。恋じゃなくても、ぬくもりでさびしさがうまることってあるのよ。わたしがあの子のこと忘れさせてあげる。――ううん。せめて、洋平のその寂しさ……癒してあげる」
言いながら、瞳に挑戦的な色を浮かべて、夏子がゆっくりと洋平に顔を近づけてきた。
やめさせようと伸ばした洋平の手が、ぴたりと動きを止める。
「…………」
ぐらりと脳が迷いに揺れた。
このまま甘えてしまうのもいいかもしれない。
伊理穂を想い続けるのももう疲れた。
限界なんてとっくの昔に超えている。
これ以上こんなことを続けていたら、きっと自分が壊れてしまうだろう。
身を滅ぼすほどのこの想いを忘れることができるのならば、忘れさせてほしかった。
どうせ伊理穂との間に未来なんてない。
ならばいっそ……。
「はい。今、部の救急箱静岡に持って行っちゃってて……! 今日は保健室も閉まってるし、湿布と包帯とそのほか必要なもの、近くの薬局で買ってきます。わたしが言うのも……おかしいですけど……。洋平のこと、よろしくお願いします。洋平、わたしのせいでほんとうにごめんね。すぐ買ってくるから、だから待っててね」
最後のせりふを洋平に向けて言うと、伊理穂は部室に駆け込んだ。
自分のロッカーから財布を引っ掴むと、結子を伴って伊理穂は薬局へとむかった。
なんだかんだで、洋平たちはそのまま昼休憩へとなだれ込んだ。
夏子の見立てで、そんなに打撲がひどくないだろうということがわかると、花道たちは洋平と夏子を体育館に置いてご飯を食べに行った。
湿布を買いに行った伊理穂と結子はまだもどらない。
その到着を待って、洋平と夏子は手当てが済んでからご飯を食べに行けとのことだった。
洋平と夏子はのんびり体育館のフロアーに腰を降ろしてふたりの帰りを待った。
心臓の拍動にあわせて、傷がずきんずきんと痛む。
だいぶやわらいではきたものの、その痛みに、洋平は小さく息をはいた。
「傷、痛む?」
「まあ、多少は」
やせ我慢して返すと、夏子に苦笑された。
「つよがんなくていいっていったでしょ!」
言いながらばしんと洋平の背中を叩いてくる。
しゃれにならないその行動に激痛がはしり、洋平は低く呻いた。
「ちょ、夏子さん……!」
「それにしてもほんっと、よくやるわよねえ……。今日まで一緒に過ごして骨身に染みてわかったんだけど、洋平、伊理穂ちゃんのことほんとに好きで好きで大切で大切でしょうがないのね。なのにあんな態度ばっかりとって、あれが全部演技なんだから俳優だったらアカデミー賞もんだわよ」
夏子の言葉に洋平は苦笑する。
「真逆をやるのは、かえって楽だぜ。それでオレが伊理穂に徹底的に嫌われれば、なお良いだろ?」
「ふうん……。でも、それじゃあ洋平がつらいじゃない。あんた、このままだと近いうちに絶対内臓壊すわよ。吐き出せない感情は心だけじゃなくて体にも飛び火して蝕んでいくんだから」
「はは。それは恐ろしいな」
「笑い事じゃないってば……。――ねえ。なぐさめてあげよっか?」
「――あ?」
ふと自分に影が差して、洋平は顔をあげた。
隣りに座っていたはずの夏子が、洋平の上に覆いかぶさるようにからだを移動させてきた。
夏子の手があやしく洋平の頬に触れる。
夏子がこれまでとちがって、ねっとりと絡みつくような色香を漂わせて言う。
「ねえ、洋平。恋じゃなくても、ぬくもりでさびしさがうまることってあるのよ。わたしがあの子のこと忘れさせてあげる。――ううん。せめて、洋平のその寂しさ……癒してあげる」
言いながら、瞳に挑戦的な色を浮かべて、夏子がゆっくりと洋平に顔を近づけてきた。
やめさせようと伸ばした洋平の手が、ぴたりと動きを止める。
「…………」
ぐらりと脳が迷いに揺れた。
このまま甘えてしまうのもいいかもしれない。
伊理穂を想い続けるのももう疲れた。
限界なんてとっくの昔に超えている。
これ以上こんなことを続けていたら、きっと自分が壊れてしまうだろう。
身を滅ぼすほどのこの想いを忘れることができるのならば、忘れさせてほしかった。
どうせ伊理穂との間に未来なんてない。
ならばいっそ……。