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隣りで結子が怒ったように花道たちに文句を言っている。
どこか遠くでそれを感じながら、伊理穂は目の前の洋平に取りすがった。
「洋平!」
悲鳴のような声が喉から出た。
どうして、洋平が自分を庇ったりするんだろう。
わからなくて、でも洋平にケガをさせてしまったことの恐怖で、全身が粟立つ。
「洋平! 洋平! しっかりして! 大丈夫!?」
「ボーっとしてんじゃねぇよ。ほんっと、お前といるとろくなことねえ……」
ずきんと胸が悲鳴をあげる。
ほんとうにその通りだ。
伊理穂がちゃんと動けていれば、洋平がケガをすることもなかったのに。
「ごめんねごめんね! ど、どうしよう、とりあえずケガを見せ……」
「さわんな」
言いながら伸ばした伊理穂の手は、洋平に冷たく弾かれた。
洋平はそのまま伊理穂から夏子に視線を移動させて言う。
「夏子さん、ケガみてよ……ってあれ? なんでお尻なんてさすってんだ?」
「あのね、洋平。あんたこのわたしを突き飛ばして伊理穂ちゃんのところへ行ったのをお忘れ?」
「あー……。わりい。つい条件反射で。オレ、こいつに関しては悪い教育されてっから」
洋平が親指で伊理穂を指してきた。
伊理穂の心臓が、ひやりと冷える。
(悪い、教育……)
「なによ、悪い教育って」
夏子の質問に、伊理穂は耳を塞ぎたくなった。
洋平の唇が、スローモーションのように動いて、それに答える。
「こいつのことはオレが守ってやりましょう by オレの両親。もうその役目からは解放されたってのに、まだそれが抜けねぇんだよな」
はははと苦笑しながら洋平が言う。
その言葉が、伊理穂の胸に鋭く突き刺さった。
これじゃあまるでパブロフの犬だ。
『伊理穂を見たら守りましょう』
そんな条件付け、洋平にとってはなによりも最悪だ。
(やっぱり、わたしは洋平の近くにはいないほうがいい……)
視界にうつるケースが多ければ、また条件反射を引き起こすことがあるかもしれない。
それを消失させるには、長い空白が必要だ。
また自分のせいで洋平にケガをさせるなんて絶対に嫌だ。
洋平がよっと気合の声を入れて立ち上がった。
ケガに響いたのか、その表情が少しだけ苦しそうに歪む。
「とにかく、ケガみてよ。当たったのが背中で、ちょうど見えねぇんだよな」
「はいはい。どこ打ったの?」
夏子がすたすたと近づいてくる。
伊理穂はせめて自分に出来ることだけでもしようと、救急箱を取りに行こうとして、ハッと気づいた。
(そうだ、救急箱は彩子さんが静岡に持ってちゃってないんだ……!)
洋平のケガはきっと打撲だ。
それなら湿布がいる。
「あの、夏子さん」
「ん?」
伊理穂の声に、夏子が振り返る。
「あの、わたし湿布を買ってきます!」
どこか遠くでそれを感じながら、伊理穂は目の前の洋平に取りすがった。
「洋平!」
悲鳴のような声が喉から出た。
どうして、洋平が自分を庇ったりするんだろう。
わからなくて、でも洋平にケガをさせてしまったことの恐怖で、全身が粟立つ。
「洋平! 洋平! しっかりして! 大丈夫!?」
「ボーっとしてんじゃねぇよ。ほんっと、お前といるとろくなことねえ……」
ずきんと胸が悲鳴をあげる。
ほんとうにその通りだ。
伊理穂がちゃんと動けていれば、洋平がケガをすることもなかったのに。
「ごめんねごめんね! ど、どうしよう、とりあえずケガを見せ……」
「さわんな」
言いながら伸ばした伊理穂の手は、洋平に冷たく弾かれた。
洋平はそのまま伊理穂から夏子に視線を移動させて言う。
「夏子さん、ケガみてよ……ってあれ? なんでお尻なんてさすってんだ?」
「あのね、洋平。あんたこのわたしを突き飛ばして伊理穂ちゃんのところへ行ったのをお忘れ?」
「あー……。わりい。つい条件反射で。オレ、こいつに関しては悪い教育されてっから」
洋平が親指で伊理穂を指してきた。
伊理穂の心臓が、ひやりと冷える。
(悪い、教育……)
「なによ、悪い教育って」
夏子の質問に、伊理穂は耳を塞ぎたくなった。
洋平の唇が、スローモーションのように動いて、それに答える。
「こいつのことはオレが守ってやりましょう by オレの両親。もうその役目からは解放されたってのに、まだそれが抜けねぇんだよな」
はははと苦笑しながら洋平が言う。
その言葉が、伊理穂の胸に鋭く突き刺さった。
これじゃあまるでパブロフの犬だ。
『伊理穂を見たら守りましょう』
そんな条件付け、洋平にとってはなによりも最悪だ。
(やっぱり、わたしは洋平の近くにはいないほうがいい……)
視界にうつるケースが多ければ、また条件反射を引き起こすことがあるかもしれない。
それを消失させるには、長い空白が必要だ。
また自分のせいで洋平にケガをさせるなんて絶対に嫌だ。
洋平がよっと気合の声を入れて立ち上がった。
ケガに響いたのか、その表情が少しだけ苦しそうに歪む。
「とにかく、ケガみてよ。当たったのが背中で、ちょうど見えねぇんだよな」
「はいはい。どこ打ったの?」
夏子がすたすたと近づいてくる。
伊理穂はせめて自分に出来ることだけでもしようと、救急箱を取りに行こうとして、ハッと気づいた。
(そうだ、救急箱は彩子さんが静岡に持ってちゃってないんだ……!)
洋平のケガはきっと打撲だ。
それなら湿布がいる。
「あの、夏子さん」
「ん?」
伊理穂の声に、夏子が振り返る。
「あの、わたし湿布を買ってきます!」