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それまでとはがらりと変わった、真剣な声音で言う。
「ね、洋平。あれが……『伊理穂ちゃん』?」
「…………」
瞳を伏せて黙る洋平に、夏子が苦笑する。
「――やっぱり。めろきゅんだねえ、あれは。洋平じゃなくっても骨抜きになるわ。ね、あれって整形じゃないんでしょ?」
「当たり前だろ。何言ってんだよ」
「そうよね。はー、天然であんなかわいい子がいるのね。人形がそのまんま動き出してるみたい」
かわいいかわいいと感心したように言う夏子に、洋平は眉を寄せて嘆息した。
一体この人をどうしたものか。軽い頭痛とともにそんなことを考えていると、ハッと我に返った花道が慌てたように口を挟んできた。
「洋平! これはどういうことだよ? え、え、と……夏子さん……でしたか?」
花道の言葉に、夏子がはぁいと手を挙げる。
花道はそれに薄く赤面して、ごほんと咳払いをすると洋平に向きなおる。
「会いたかったとか大切だとかどうのこうの!」
「あー……」
思い出して洋平はがしがしと頭を掻く。
正直言うと、自分でもなんであんな行動をとったのかよくわからなかった。
ただ伊理穂の驚いたような瞳と視線が交わったとき、なかば反射的に夏子を抱き寄せて、無意識に会いたかったなどと口走っていたのだ。
(自分でもよくわかんねえのに、花道に説明なんてできるわけねえよな……)
考えあぐねていると、ふいに夏子が口を開いた。
「その質問にはわたしが答えてしんぜよう」
「は!?」
洋平がぎょっと驚いて夏子を見ると、夏子は任せなさいとでも言うように唇を三日月型にして、花道に向き直った。
謎解きをする探偵のように人差し指をぴっとたてて、重々しい雰囲気で言う。
「実はわたし、洋平に頼まれてたの。なんでも今回の合宿メンバーに手ひどく失恋した子がいるから、合宿期間中だけ恋人のフリしてて欲しいって。ほんとうは明日洋平が迎えに来てくれるはずだったんだけど、痺れを切らして会いにきちゃった。ね、洋平?」
夏子が顔を覗き込んで、肯定しろと目で訴えてくる。
洋平はそれにこくこくと首を縦に振った。
「あー……、あ、そう。そうなんだよ花道。やっぱりさ、伊理穂と同じ空間でずっといるのってつらいだろ? 伊理穂も、俺に他に女がいるってわかったほうが流川と付き合いやすいだろうしさ。だから急遽夏子さんに頼んだんだ。ったく、夏子さんもちゃんと打ち合わせしたとおり、俺が迎えに行くまで待ってろよな。突然来るからびっくりしただろ?」
言いながらわざとらしく夏子のおでこを小突く。
「あはは。だあって、洋平に会いたかったんだもーん」
夏子がきゃるんとした調子で、かわいらしく片足を上げた。
そのしぐさに、思わず洋平はうげっと嫌そうな顔をする。
「うわっ、なんだそれ。全然あんたのキャラじゃないだろ、ぶりっ子は」
「いや、洋平が額を小突いてくるから、小突かれた乙女の正解はこれかと……」
「ははっ、なんだそれ! まあ、とにかくそういうことだからよ、花道。オレ、ちょっと夏子さんと二人で話してくるわ。部室借りるな」
言うが早いか、洋平は花道の返事を待たずに、夏子の腕を掴んで部室へと入った。
背中から花道の声が追いかけてくるが、洋平はそれに苦笑を返してドアを閉める。
外の声が遮断されて、部室の中は一気に静かになった。
洋平はふうと息を吐くと、掴んでいた腕を離して、夏子に向き直る。
「まあ、座ってよ夏子さん。オレたちいまここで寝泊りしてっから、ちょっとちらかってっけどさ」
言って、洋平は部室にある机のイスを引いた。
「ね、洋平。あれが……『伊理穂ちゃん』?」
「…………」
瞳を伏せて黙る洋平に、夏子が苦笑する。
「――やっぱり。めろきゅんだねえ、あれは。洋平じゃなくっても骨抜きになるわ。ね、あれって整形じゃないんでしょ?」
「当たり前だろ。何言ってんだよ」
「そうよね。はー、天然であんなかわいい子がいるのね。人形がそのまんま動き出してるみたい」
かわいいかわいいと感心したように言う夏子に、洋平は眉を寄せて嘆息した。
一体この人をどうしたものか。軽い頭痛とともにそんなことを考えていると、ハッと我に返った花道が慌てたように口を挟んできた。
「洋平! これはどういうことだよ? え、え、と……夏子さん……でしたか?」
花道の言葉に、夏子がはぁいと手を挙げる。
花道はそれに薄く赤面して、ごほんと咳払いをすると洋平に向きなおる。
「会いたかったとか大切だとかどうのこうの!」
「あー……」
思い出して洋平はがしがしと頭を掻く。
正直言うと、自分でもなんであんな行動をとったのかよくわからなかった。
ただ伊理穂の驚いたような瞳と視線が交わったとき、なかば反射的に夏子を抱き寄せて、無意識に会いたかったなどと口走っていたのだ。
(自分でもよくわかんねえのに、花道に説明なんてできるわけねえよな……)
考えあぐねていると、ふいに夏子が口を開いた。
「その質問にはわたしが答えてしんぜよう」
「は!?」
洋平がぎょっと驚いて夏子を見ると、夏子は任せなさいとでも言うように唇を三日月型にして、花道に向き直った。
謎解きをする探偵のように人差し指をぴっとたてて、重々しい雰囲気で言う。
「実はわたし、洋平に頼まれてたの。なんでも今回の合宿メンバーに手ひどく失恋した子がいるから、合宿期間中だけ恋人のフリしてて欲しいって。ほんとうは明日洋平が迎えに来てくれるはずだったんだけど、痺れを切らして会いにきちゃった。ね、洋平?」
夏子が顔を覗き込んで、肯定しろと目で訴えてくる。
洋平はそれにこくこくと首を縦に振った。
「あー……、あ、そう。そうなんだよ花道。やっぱりさ、伊理穂と同じ空間でずっといるのってつらいだろ? 伊理穂も、俺に他に女がいるってわかったほうが流川と付き合いやすいだろうしさ。だから急遽夏子さんに頼んだんだ。ったく、夏子さんもちゃんと打ち合わせしたとおり、俺が迎えに行くまで待ってろよな。突然来るからびっくりしただろ?」
言いながらわざとらしく夏子のおでこを小突く。
「あはは。だあって、洋平に会いたかったんだもーん」
夏子がきゃるんとした調子で、かわいらしく片足を上げた。
そのしぐさに、思わず洋平はうげっと嫌そうな顔をする。
「うわっ、なんだそれ。全然あんたのキャラじゃないだろ、ぶりっ子は」
「いや、洋平が額を小突いてくるから、小突かれた乙女の正解はこれかと……」
「ははっ、なんだそれ! まあ、とにかくそういうことだからよ、花道。オレ、ちょっと夏子さんと二人で話してくるわ。部室借りるな」
言うが早いか、洋平は花道の返事を待たずに、夏子の腕を掴んで部室へと入った。
背中から花道の声が追いかけてくるが、洋平はそれに苦笑を返してドアを閉める。
外の声が遮断されて、部室の中は一気に静かになった。
洋平はふうと息を吐くと、掴んでいた腕を離して、夏子に向き直る。
「まあ、座ってよ夏子さん。オレたちいまここで寝泊りしてっから、ちょっとちらかってっけどさ」
言って、洋平は部室にある机のイスを引いた。