19
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
いきなりすとんとその内容が胸に落ちてきて、ざわっと伊理穂の胸が波立った。
狂おしいくらいの焦燥感が全身を駆け巡って、伊理穂の身のうちを焦がしていく。
(洋平が……誰かのものになっちゃう……?)
恐怖なのかなんなのかよくわからない感情が伊理穂を支配して、呼吸が乱れそうになった。
すんでのところで伊理穂は理性を取り戻して、なんとかそれを押さえつける。
花道の前で、なにより洋平の前で、取り乱すわけにはいかない。
荒くなる息を必死にいつものタイミングで吐き出して、呼吸を調整する。
吐き出せない息がどんどん伊理穂の胸にたまっていって、それが余計に伊理穂を苦しくさせた。
『なに言ってるの花道』。このセリフを笑って言えばいいだけなのに、呼吸を抑えるので精一杯で声がでなかった。
(どうしよう……!)
伊理穂の胸に焼けつくような焦りが募る。
と、その時。
「おい、やめろよ花道」
洋平がりんと響く声で言った。
なにかを決意したような洋平の声色だった。
ぎくりと伊理穂の心臓が鼓動をやめる。
今この状態で、洋平のどんな言葉も聞きたくなかった。
これ以上自分たちの関係が悪化することはきっともうない。そのはずなのに、伊理穂の胸に嫌な予感が渦巻く。
何も聞きたくない。なのに、無情にも洋平の口から紡がれていく言葉。一語一句漏らさず、伊理穂の耳にするすると入ってくる。
「伊理穂は流川が好きで好きでしょうがねぇんだよ。変なこと言ってふたりの仲を引き裂こうとすんな」
「ぬ。洋平……だけど」
「だけどもなにもねえって。それに……オレ、この前伊理穂にだいっ嫌いって言われたんだよ。な、伊理穂」
「は!?」
「――え?」
洋平の言葉に、伊理穂は驚いて洋平の顔を見た。
洋平の暗い瞳が、伊理穂を冷たく見つめてくる。
『そうだ』と言えと。目顔で訴えかけてくる。
「あ……」
心臓が震えた。
脳が、心が、唇が、全身の機能が、そんなことを言うのは嫌だと拒否反応を起こしているのに、洋平の瞳が伊理穂にそれを許さなかった。
これを言えば、自分たちの関係はもう二度と修復できなくなってしまう。
この先、必要最低限の言葉さえ、交わすことが困難になってしまう。
きっと、いつか伊理穂がひとり立ちをしたとしても、前みたいに洋平と話せる日が来る可能性を潰してしまう。
そこまで考えて、伊理穂はハッとした。
(そうだ……)
いまさらながら、愕然と気づく。
(いつか前みたいに話せる日が来たらと望んでるのは、わたしだけ……)
ずきりと伊理穂の胸が悲鳴をあげた。
そうだ。
大事なことを忘れていた。
その望みは伊理穂だけのもの。
伊理穂だけが、祈るように願っていたもの。
洋平の望みは。
(わたしと、もう二度と関わらないこと……)
それならもう、選択の余地はなかった。
スッと伊理穂のからだが冷えていく。
あまりの痛みに感覚神経が麻痺してしまったのか、全身を支配していた身を切るような痛みももうほとんど感じなくなっていた。
狂おしいくらいの焦燥感が全身を駆け巡って、伊理穂の身のうちを焦がしていく。
(洋平が……誰かのものになっちゃう……?)
恐怖なのかなんなのかよくわからない感情が伊理穂を支配して、呼吸が乱れそうになった。
すんでのところで伊理穂は理性を取り戻して、なんとかそれを押さえつける。
花道の前で、なにより洋平の前で、取り乱すわけにはいかない。
荒くなる息を必死にいつものタイミングで吐き出して、呼吸を調整する。
吐き出せない息がどんどん伊理穂の胸にたまっていって、それが余計に伊理穂を苦しくさせた。
『なに言ってるの花道』。このセリフを笑って言えばいいだけなのに、呼吸を抑えるので精一杯で声がでなかった。
(どうしよう……!)
伊理穂の胸に焼けつくような焦りが募る。
と、その時。
「おい、やめろよ花道」
洋平がりんと響く声で言った。
なにかを決意したような洋平の声色だった。
ぎくりと伊理穂の心臓が鼓動をやめる。
今この状態で、洋平のどんな言葉も聞きたくなかった。
これ以上自分たちの関係が悪化することはきっともうない。そのはずなのに、伊理穂の胸に嫌な予感が渦巻く。
何も聞きたくない。なのに、無情にも洋平の口から紡がれていく言葉。一語一句漏らさず、伊理穂の耳にするすると入ってくる。
「伊理穂は流川が好きで好きでしょうがねぇんだよ。変なこと言ってふたりの仲を引き裂こうとすんな」
「ぬ。洋平……だけど」
「だけどもなにもねえって。それに……オレ、この前伊理穂にだいっ嫌いって言われたんだよ。な、伊理穂」
「は!?」
「――え?」
洋平の言葉に、伊理穂は驚いて洋平の顔を見た。
洋平の暗い瞳が、伊理穂を冷たく見つめてくる。
『そうだ』と言えと。目顔で訴えかけてくる。
「あ……」
心臓が震えた。
脳が、心が、唇が、全身の機能が、そんなことを言うのは嫌だと拒否反応を起こしているのに、洋平の瞳が伊理穂にそれを許さなかった。
これを言えば、自分たちの関係はもう二度と修復できなくなってしまう。
この先、必要最低限の言葉さえ、交わすことが困難になってしまう。
きっと、いつか伊理穂がひとり立ちをしたとしても、前みたいに洋平と話せる日が来る可能性を潰してしまう。
そこまで考えて、伊理穂はハッとした。
(そうだ……)
いまさらながら、愕然と気づく。
(いつか前みたいに話せる日が来たらと望んでるのは、わたしだけ……)
ずきりと伊理穂の胸が悲鳴をあげた。
そうだ。
大事なことを忘れていた。
その望みは伊理穂だけのもの。
伊理穂だけが、祈るように願っていたもの。
洋平の望みは。
(わたしと、もう二度と関わらないこと……)
それならもう、選択の余地はなかった。
スッと伊理穂のからだが冷えていく。
あまりの痛みに感覚神経が麻痺してしまったのか、全身を支配していた身を切るような痛みももうほとんど感じなくなっていた。