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「オレの見立てだと、アイツ相当伊理穂ちゃんに惚れこんでるぜ? だからそんな心配する必要ねーと思うけどな」
「……あはは。でも、それでも……ね。また誰かに頼りきって、苦しめるなんてこともう二度としたくないの。だから、大丈夫だよ、大楠くん。だめになったら助けてって言うから、少しひとりでがんばってみたい」
「そっか。まあ、そういうことならしかたねーよな。でも無理だけは絶っ対すんなよ?」
「うん、ありがとう。大楠くん」
大楠の優しさに感謝しながら、伊理穂は心を込めてお礼を言った。
体育館が近づいてきたとき、中が急にわっと盛り上がった。
「?」
伊理穂と大楠は顔を見合わせると、なんだろうと小走りで体育館に入った。
中では花道が洋平にヘッドロックをかけている。
一体何事だろう。
伊理穂は微かに眉を寄せる。
「よー、どうしたんだよ?」
大楠の声に、花道がこちらに気づいてハッと顔をあげた。
花道は声をかけた大楠ではなく、その隣りに立っていた伊理穂に駆け寄ると、がしっと強くその両肩を掴んで顔を覗き込んできた。
「わっ!? な、なに!? どうしたの花道!」
花道のあまりにも真剣な表情に、伊理穂の心をつるりと不安が撫でる。
もしかして、洋平とのことが花道にバレたのだろうか?
だけどそれにしては、さっきの歓声のような盛り上がりは場違いなような気もするけれど……。
一瞬の間でそこまで考えていると、花道が焦ったように口を開いた。
「大変だ、伊理穂!」
「え? なに?」
「洋平、いま働いているバイト仲間に言い寄られてるらしいぞ!」
「――え?」
花道の口から出た言葉は伊理穂の想像とまったく違ったけれど、それ以上の威力を持った言葉だった。
ガンと伊理穂の頭が、なにか固い金属で殴られたような衝撃が走って、世界と自分が、一瞬で切り離されたような感覚に陥る。
目の前の花道は確かに自分を掴んで、目の前で大きな声で喋っているのに、伊理穂には薄いフィルムを通した先の、どこか遠い出来事のように思えた。
なのに、頭はひどく混乱して今聞いた事を否定しようと躍起になるし、心臓はどくどくと激しく鼓動する。
まるでちぐはぐな感覚に、気持ち悪くて吐きそうだ。
「伊理穂! ルカワなんかと付き合ってる場合じゃねーぞ! 洋平がその女に取られちまったらどうすんだよっ!!」
「ひゃあっ」
言いながら、花道が思いっきりがくがくと体を揺さぶってきた。
悲鳴をあげた伊理穂に、大楠が慌てて助けに入る。
「おい、花道やめろよ! ほら、お前があんまり強く揺さぶるから、伊理穂ちゃん顔色真っ青になっちまってるじゃねーか!」
「ぬ? わ、ワルイ伊理穂……。でも、悪いことは言わねえ。伊理穂、今すぐルカワと別れろ。な? あんな性悪ギツネと付き合っててもいいことねえぞ! そんで洋平と付き合え。な?」
「え? えっと、あの……」
突然のことにどうしていいかわらず、伊理穂はへどもどした。
頭がうまく働かない。
思考が定まらない。
洋平が? バイト先のひとに? 言い寄られてる?
(――!)
「……あはは。でも、それでも……ね。また誰かに頼りきって、苦しめるなんてこともう二度としたくないの。だから、大丈夫だよ、大楠くん。だめになったら助けてって言うから、少しひとりでがんばってみたい」
「そっか。まあ、そういうことならしかたねーよな。でも無理だけは絶っ対すんなよ?」
「うん、ありがとう。大楠くん」
大楠の優しさに感謝しながら、伊理穂は心を込めてお礼を言った。
体育館が近づいてきたとき、中が急にわっと盛り上がった。
「?」
伊理穂と大楠は顔を見合わせると、なんだろうと小走りで体育館に入った。
中では花道が洋平にヘッドロックをかけている。
一体何事だろう。
伊理穂は微かに眉を寄せる。
「よー、どうしたんだよ?」
大楠の声に、花道がこちらに気づいてハッと顔をあげた。
花道は声をかけた大楠ではなく、その隣りに立っていた伊理穂に駆け寄ると、がしっと強くその両肩を掴んで顔を覗き込んできた。
「わっ!? な、なに!? どうしたの花道!」
花道のあまりにも真剣な表情に、伊理穂の心をつるりと不安が撫でる。
もしかして、洋平とのことが花道にバレたのだろうか?
だけどそれにしては、さっきの歓声のような盛り上がりは場違いなような気もするけれど……。
一瞬の間でそこまで考えていると、花道が焦ったように口を開いた。
「大変だ、伊理穂!」
「え? なに?」
「洋平、いま働いているバイト仲間に言い寄られてるらしいぞ!」
「――え?」
花道の口から出た言葉は伊理穂の想像とまったく違ったけれど、それ以上の威力を持った言葉だった。
ガンと伊理穂の頭が、なにか固い金属で殴られたような衝撃が走って、世界と自分が、一瞬で切り離されたような感覚に陥る。
目の前の花道は確かに自分を掴んで、目の前で大きな声で喋っているのに、伊理穂には薄いフィルムを通した先の、どこか遠い出来事のように思えた。
なのに、頭はひどく混乱して今聞いた事を否定しようと躍起になるし、心臓はどくどくと激しく鼓動する。
まるでちぐはぐな感覚に、気持ち悪くて吐きそうだ。
「伊理穂! ルカワなんかと付き合ってる場合じゃねーぞ! 洋平がその女に取られちまったらどうすんだよっ!!」
「ひゃあっ」
言いながら、花道が思いっきりがくがくと体を揺さぶってきた。
悲鳴をあげた伊理穂に、大楠が慌てて助けに入る。
「おい、花道やめろよ! ほら、お前があんまり強く揺さぶるから、伊理穂ちゃん顔色真っ青になっちまってるじゃねーか!」
「ぬ? わ、ワルイ伊理穂……。でも、悪いことは言わねえ。伊理穂、今すぐルカワと別れろ。な? あんな性悪ギツネと付き合っててもいいことねえぞ! そんで洋平と付き合え。な?」
「え? えっと、あの……」
突然のことにどうしていいかわらず、伊理穂はへどもどした。
頭がうまく働かない。
思考が定まらない。
洋平が? バイト先のひとに? 言い寄られてる?
(――!)