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洋平は小さく息を吐いて、伊理穂がこの前倒れた事を話した。
焦る大楠に、洋平が安心させるように首を横に振る。
「大丈夫だ、大楠。睡眠不足と食欲不振が祟っただけだって、あいつの親父さんに聞いてるから」
「それだって、お前が原因だろ!? ……とはいっても、まあ、お前の気持ちも考えると、呑気に仲直りしろよとばかりも……言えねーけどよ……」
珍しく言葉を濁す大楠に、洋平は苦笑した。
「はは。珍しいな。お前がそんな風に言ってくれるなんて」
「また泣かれたらたまんねーからな」
「お? この前は泣かせてくれるみたいなこと言ってたじゃねぇか」
「バッカ、状況ってもんがあんだろ!?」
「冗談だよ」
さらりと言うと、大楠に再び殴られた。
気のせいか、さっきよりも力が強い気がする。
「笑えない冗談言ってんじゃねーよ」
「だよな。……悪い」
神妙な顔で声を低くして言う大楠に、洋平も真剣に謝った。
脳裏によみがえる、伊理穂が倒れた日のこと。
腕に残る、ひやりとするくらい軽かった伊理穂のからだ。
そして、涙を流しながら呟かれた、流川の名前……。
思い出すと、胸が激しく締め付けられた。
痛みを追いやるように洋平はきつく瞳を閉じると、細く長く息を吐き出した。
結子とじゃれあう伊理穂を見て、口元に微かに笑みを浮かべる。
「伊理穂……。元気になったみたいだな」
言うと、大楠も伊理穂たちを見た。
元気に笑う伊理穂を見て、洋平と同じようにホッとした表情で笑う。
「ああ。そうみたいだな。伊理穂ちゃんの笑顔……なんか久しぶりに見た気がするぜ」
「……伊理穂はもう大丈夫だな。オレのことはもう乗り越えた。このまま緩やかに、きっとオレのことなんか忘れていくよ」
「洋平……」
「あとは、オレ……か」
洋平は瞳を細めて伊理穂を見つめた。
伊理穂の笑顔が、今は胸に突き刺さる。
伊理穂があの可愛らしい声で自分の名前を呼んで、まるで子犬が尻尾を振るみたいに嬉しそうに笑ってくれる姿を目にすることは、きっともう二度とないだろう。
そう仕向けたのは自分のはずなのに、伊理穂と口を利かなくなってからもう何日も経っているはずなのに、それなのに胸の痛みは増すばかりでちっとも癒えることがなかった。
伊理穂の笑う姿が見れるのはこの上なく嬉しい事のはずなのに、なのに胸が痛んでしょうがなかった。
苦しくて苦しくてしょうがなかった。
伊理穂の笑顔を見るたびに、思い知らされる。
所詮伊理穂にとって自分の存在など、いなければいないでどうってことのないものだったのだと、全身を切り刻まれるような痛みとともに気づかされる。
わかっていたはずなのに、なのに毎回耐えられないほどの痛みを伴ってしか伊理穂の大好きな笑顔を見れなくなってしまったことに、洋平は胸が締め付けられた。
(伊理穂……)
それでも、伊理穂の笑顔を見たくて。
元気に笑っている姿を見たくて。
あのかわいい声が聞きたくて。
気づくと伊理穂の姿を探してしまう。
伊理穂に背を向けていても、伊理穂の気配に全身を集中させている自分がいる。
伊理穂が近づいてくれば冷たくあしらって離れるくせに、それなのに自分は伊理穂を常に視界にいれて見つめていたいと思うなんて。
(ほんと……情けねぇ……よな)
と、ふいに、強引に大楠に下を向かせられた。
「うおっ!? なにすんだよ、大楠」
文句を言うと、大楠が低く抑えた声で言う。
焦る大楠に、洋平が安心させるように首を横に振る。
「大丈夫だ、大楠。睡眠不足と食欲不振が祟っただけだって、あいつの親父さんに聞いてるから」
「それだって、お前が原因だろ!? ……とはいっても、まあ、お前の気持ちも考えると、呑気に仲直りしろよとばかりも……言えねーけどよ……」
珍しく言葉を濁す大楠に、洋平は苦笑した。
「はは。珍しいな。お前がそんな風に言ってくれるなんて」
「また泣かれたらたまんねーからな」
「お? この前は泣かせてくれるみたいなこと言ってたじゃねぇか」
「バッカ、状況ってもんがあんだろ!?」
「冗談だよ」
さらりと言うと、大楠に再び殴られた。
気のせいか、さっきよりも力が強い気がする。
「笑えない冗談言ってんじゃねーよ」
「だよな。……悪い」
神妙な顔で声を低くして言う大楠に、洋平も真剣に謝った。
脳裏によみがえる、伊理穂が倒れた日のこと。
腕に残る、ひやりとするくらい軽かった伊理穂のからだ。
そして、涙を流しながら呟かれた、流川の名前……。
思い出すと、胸が激しく締め付けられた。
痛みを追いやるように洋平はきつく瞳を閉じると、細く長く息を吐き出した。
結子とじゃれあう伊理穂を見て、口元に微かに笑みを浮かべる。
「伊理穂……。元気になったみたいだな」
言うと、大楠も伊理穂たちを見た。
元気に笑う伊理穂を見て、洋平と同じようにホッとした表情で笑う。
「ああ。そうみたいだな。伊理穂ちゃんの笑顔……なんか久しぶりに見た気がするぜ」
「……伊理穂はもう大丈夫だな。オレのことはもう乗り越えた。このまま緩やかに、きっとオレのことなんか忘れていくよ」
「洋平……」
「あとは、オレ……か」
洋平は瞳を細めて伊理穂を見つめた。
伊理穂の笑顔が、今は胸に突き刺さる。
伊理穂があの可愛らしい声で自分の名前を呼んで、まるで子犬が尻尾を振るみたいに嬉しそうに笑ってくれる姿を目にすることは、きっともう二度とないだろう。
そう仕向けたのは自分のはずなのに、伊理穂と口を利かなくなってからもう何日も経っているはずなのに、それなのに胸の痛みは増すばかりでちっとも癒えることがなかった。
伊理穂の笑う姿が見れるのはこの上なく嬉しい事のはずなのに、なのに胸が痛んでしょうがなかった。
苦しくて苦しくてしょうがなかった。
伊理穂の笑顔を見るたびに、思い知らされる。
所詮伊理穂にとって自分の存在など、いなければいないでどうってことのないものだったのだと、全身を切り刻まれるような痛みとともに気づかされる。
わかっていたはずなのに、なのに毎回耐えられないほどの痛みを伴ってしか伊理穂の大好きな笑顔を見れなくなってしまったことに、洋平は胸が締め付けられた。
(伊理穂……)
それでも、伊理穂の笑顔を見たくて。
元気に笑っている姿を見たくて。
あのかわいい声が聞きたくて。
気づくと伊理穂の姿を探してしまう。
伊理穂に背を向けていても、伊理穂の気配に全身を集中させている自分がいる。
伊理穂が近づいてくれば冷たくあしらって離れるくせに、それなのに自分は伊理穂を常に視界にいれて見つめていたいと思うなんて。
(ほんと……情けねぇ……よな)
と、ふいに、強引に大楠に下を向かせられた。
「うおっ!? なにすんだよ、大楠」
文句を言うと、大楠が低く抑えた声で言う。