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言ったところで、伊理穂の表情が強張った。
それに気づいた三井は、がしがしと伊理穂の頭を撫でて、安心させるように伊理穂の瞳を覗きこむ。
「オレはそこんとこの事情も知ってるから言っとくが、グレたのはちげぇぞ。グレ経験仲間として自信を持って言えるけど、絶対だ。絶対違う。お前が原因じゃねえ。だいたいお前が原因でグレたんなら、持ち直してから今までお前のそばにいるわけねーだろ。オレはグレてる間いろんなやつと知り合ったけど、だからこそ水戸がグレたのはお前が原因じゃねえって言いきれる。むしろ逆だよ」
「逆?」
おそるおそる聞いてくる伊理穂に、三井は笑顔を向ける。
「ああ。逆だ。お前がいたから、水戸は持ち直せた。元気になれた」
「…………」
「あのな、伊理穂。なんかの本で読んだんだけどよ。人間ってやつは、大好きで泣かせたくない人が最低でもひとりは必要なんだってよ。そういう人がいれば、人間は立ち直れる」
自分自身のためだけに生きることは、簡単なようでいて難しい。
自分という存在は、確固たるもののようであって、その実実態がなくておぼろげだ。
だからこそ、自分への自信が揺らいだとき、ほかに大切なもののないひとは、どんどんと堕ちるところまで堕ちてしまう。歯止めがきかなくなってしまう。
自分自身への信頼は、一度失うとひとりでは取り戻すのが非常に困難なものだからだ。
だけど、大切なひとがいる場合は違う。
その人が自分のせいで涙を流すのを見たとき。その人を自分のせいで傷つけてしまったとき。
その事実を受け入れられるようになったとき、人は立ち直ることができる。
このままではいけないと、これ以上泣かせたくはないと、前を向くことができるようになる。
自分を大切に思ってくれる誰かがいるということが、自分を取り戻すきっかけになる。
「水戸にとっての大好きで泣かせたくない人ってのが、お前だよ、伊理穂。水戸は、お前がいたから立ち直れた。だから大丈夫だ、伊理穂。また、水戸と前みたいに話せる日が来るよ」
「三井先輩……」
伊理穂が泣くのを堪えるような表情でじっと三井を見つめてきた。
「わたし、三井先輩が言ってくれたように、洋平にとって自分がそんな存在だなんてとても思えません。でも、だけど……」
しばらくののち、伊理穂がふわりと微笑む。
「ありがとうございます」
その笑顔があまりに綺麗で、今度は三井が泣きたい気持ちになった。
胸に込み上げてくる熱いものを必死で堪えながら、三井はこれ以上自分の顔を見られないように伊理穂の頭に手を伸ばすと、その頭を乱暴に撫でて、強引に下を向かせた。
わっと小さく叫ぶ伊理穂の声を無視して、そのままわしわしと頭を撫で続ける。
「おう。だけどよ、どうしてもダメなときは、今度は倒れる前にオレらを頼れよ?」
「ふふ、はい」
笑いを含んだ声で明るく返事をする伊理穂に、三井は満足げに微笑んだ。
部屋に帰ろうという伊理穂に、もう少し風に当たっていくと答え庭にひとりになると、三井はふうと大きく息を吐いて三和土に腰掛けた。
そこに、いつから庭にいたのか、流川がのんびりと現れた。
三井を無表情で一瞥すると、その隣りに腰掛けてくる。
なんだよ、と三井が言うより早く、流川がぽつりと小さく言った。
「――告白、するかと思った」
「!! おまえ、聞いてたのかよ!」
その言葉の意味するところに気づいて、三井は思わずすわと腰を持ち上げた。
睨みつける三井に、流川がふるふると首を振る。
それに気づいた三井は、がしがしと伊理穂の頭を撫でて、安心させるように伊理穂の瞳を覗きこむ。
「オレはそこんとこの事情も知ってるから言っとくが、グレたのはちげぇぞ。グレ経験仲間として自信を持って言えるけど、絶対だ。絶対違う。お前が原因じゃねえ。だいたいお前が原因でグレたんなら、持ち直してから今までお前のそばにいるわけねーだろ。オレはグレてる間いろんなやつと知り合ったけど、だからこそ水戸がグレたのはお前が原因じゃねえって言いきれる。むしろ逆だよ」
「逆?」
おそるおそる聞いてくる伊理穂に、三井は笑顔を向ける。
「ああ。逆だ。お前がいたから、水戸は持ち直せた。元気になれた」
「…………」
「あのな、伊理穂。なんかの本で読んだんだけどよ。人間ってやつは、大好きで泣かせたくない人が最低でもひとりは必要なんだってよ。そういう人がいれば、人間は立ち直れる」
自分自身のためだけに生きることは、簡単なようでいて難しい。
自分という存在は、確固たるもののようであって、その実実態がなくておぼろげだ。
だからこそ、自分への自信が揺らいだとき、ほかに大切なもののないひとは、どんどんと堕ちるところまで堕ちてしまう。歯止めがきかなくなってしまう。
自分自身への信頼は、一度失うとひとりでは取り戻すのが非常に困難なものだからだ。
だけど、大切なひとがいる場合は違う。
その人が自分のせいで涙を流すのを見たとき。その人を自分のせいで傷つけてしまったとき。
その事実を受け入れられるようになったとき、人は立ち直ることができる。
このままではいけないと、これ以上泣かせたくはないと、前を向くことができるようになる。
自分を大切に思ってくれる誰かがいるということが、自分を取り戻すきっかけになる。
「水戸にとっての大好きで泣かせたくない人ってのが、お前だよ、伊理穂。水戸は、お前がいたから立ち直れた。だから大丈夫だ、伊理穂。また、水戸と前みたいに話せる日が来るよ」
「三井先輩……」
伊理穂が泣くのを堪えるような表情でじっと三井を見つめてきた。
「わたし、三井先輩が言ってくれたように、洋平にとって自分がそんな存在だなんてとても思えません。でも、だけど……」
しばらくののち、伊理穂がふわりと微笑む。
「ありがとうございます」
その笑顔があまりに綺麗で、今度は三井が泣きたい気持ちになった。
胸に込み上げてくる熱いものを必死で堪えながら、三井はこれ以上自分の顔を見られないように伊理穂の頭に手を伸ばすと、その頭を乱暴に撫でて、強引に下を向かせた。
わっと小さく叫ぶ伊理穂の声を無視して、そのままわしわしと頭を撫で続ける。
「おう。だけどよ、どうしてもダメなときは、今度は倒れる前にオレらを頼れよ?」
「ふふ、はい」
笑いを含んだ声で明るく返事をする伊理穂に、三井は満足げに微笑んだ。
部屋に帰ろうという伊理穂に、もう少し風に当たっていくと答え庭にひとりになると、三井はふうと大きく息を吐いて三和土に腰掛けた。
そこに、いつから庭にいたのか、流川がのんびりと現れた。
三井を無表情で一瞥すると、その隣りに腰掛けてくる。
なんだよ、と三井が言うより早く、流川がぽつりと小さく言った。
「――告白、するかと思った」
「!! おまえ、聞いてたのかよ!」
その言葉の意味するところに気づいて、三井は思わずすわと腰を持ち上げた。
睨みつける三井に、流川がふるふると首を振る。