18
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「!」
突然のその感触に、伊理穂の心臓がばくんと大きく拍動した。
驚いて三井を振り返ると、どこか痛みを堪えるような表情をした三井と視線がぶつかって、さらに伊理穂の胸が忙しくなる。
「三井……先輩?」
どうしたんだろうか。
戸惑うように名前を呼ぶと、三井が切なそうに瞳を細めた。
ゆっくりとその唇を持ち上げる
「お前……ずいぶん痩せたな」
「あ……えと、えへへ、実はその、ダイエット……してまして」
「嘘つくなよ」
ぎくりと強張る表情をごまかすように伊理穂が笑いながら言うと、三井が鋭い声でぴしゃりとそれをはねのけた。
驚いて息を呑むと、今度は三井が気まずそうに頭をがりがりと掻く。
「あ……いや……」
三井はしばらく庭に視線をさまよわせると、何かを決意したように大きく息を吐き出して伊理穂を見た。
射抜くような視線にまっすぐ見つめられて、伊理穂のからだが自然緊張する。
「悪い。……ほんとうは、全部知ってるんだ」
「え?」
「流川と、別れたことも……、今、水戸と……あー……厄介な、ことに? なってることも。だから、隠さねぇでいい」
「え? あ、どう……して?」
気まずそうに紡がれる言葉に伊理穂が困惑していると、三井が小さく言った。
「結子から聞いて」
「あ、結ちゃんが……」
呆然と呟くと、三井が慌てたように口を開いた。
「あ、いや、違うぞ伊理穂! 結子が軽々しく言いふらしたとかそんなんじゃなくてな!? あいつ、ほんとうにお前のこと……っ」
その慌てぶりがあまりに必死で、伊理穂は思わず小さく吹き出した。
三井がそれに怪訝そうに眉をひそめて、なんだよ、と不機嫌そうに呟く。
伊理穂はそれに首を横に振ると、三井に笑顔を向けた。
「いいえ、ごめんなさい。三井先輩の慌てぶりがあんまりかわいかったのでつい……」
「おまっ! かわいいってな……」
仮にも先輩だぞ! とぶつぶつ文句を言う三井に、伊理穂は表情をやわらかくする。
「ふふ。大丈夫ですよ、三井先輩。わかってます。結ちゃん、わたしのこと心配してくれてるんですよね? ――ほんと、色んな人に心配かけちゃってるなあ……」
言いながら、伊理穂は空を見上げた。
微かな月の光を受けた雲が、緩やかに空を移動していた。
その動きをじっと見つめながら、伊理穂は口を開く。
「実はわたし、一昨日……倒れちゃって……」
「え!?」
焦ったように声を上ずらせる三井を振り返って、伊理穂は勢いよく体の前で手を振って弁解する。
「あ、でも全然たいしたことないんですよ!? 頭打ったらしいんですけど、ちゃんと検査もしてもらいましたし、なんていうか……ここのところの食欲不振と睡眠不足がたたってしまったといいますか……。だからほんとうに大丈夫なんですけど……」
「けど?」
言いよどむ伊理穂に、三井が先を促した。
伊理穂はそんな三井に、苦笑を向ける。