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流川はだって伊理穂のことを好きでいてくれて、今も大切にしてくれていて、本当なら別れたくなんてなかったはずだ。
そんなの、考えなくても容易に想像がつく。
きっと、伊理穂とのことを言われるたびに胸が軋んで痛いだろうに、それでも大丈夫と言ってくれる流川に、伊理穂の胸がぎゅっと縮んだ。
「うん、ありがとう」
もう一度心から感謝を伝えると、流川が優しく微笑んでくれた。
伊理穂の胸が泣きそうに震える。
と、流川がふいにマジメな顔つきに戻って言った。
「伊理穂。そんなことより、赤点……ほんとうにわりー」
その言葉に、伊理穂は慌てて首を振る。
胸の痛みを底の方にしまいこんで、なんとか元気をとり戻して言う。
「あ、ううん。そんなの気にしなくっていいよ、全然。それに今回のテスト、むずかしかったもんね」
ふうとため息を吐けば、流川が小さく頷いた。
「伊理穂のノートがなければ、もっとやばかった」
「お。てことは楓くん、ちゃんと勉強してくれたんだ?」
「たりめーだ。でも古文と現代文ができなかった」
「楓くんは文系科目が苦手なんだね」
言うと、流川がこくりと頷く。
「そっかそっか。じゃあ今度から、文系のノートは特にわかりやすく書くように心がけるね。わたし文系のほうが得意だから」
「サンキュ」
微かに微笑んで言う流川に、伊理穂も微笑み返した。
勉強がひと段落すると、伊理穂はひとり赤木宅の庭に下りた。
リビングに面した窓から降りることのできるそこはちょっとした広さがある。庭自体にもきちんと手入れが施されていた。
庭の隅には金木犀の木も植えられている。きっと秋にはいい香りをご近所に運ぶんだろう。
そんなことを思いながら、伊理穂は夜空を見上げた。
満月までもう少しだろうか。皓々と光る月を隠すように雲がときどきかぶって、あたりに薄い暗闇が落ちる。
伊理穂はそんな雲の動きを眺めながら、瞬く星に向かって手を伸ばしてぐぅっと伸びをした。
「ん~、つかれたぁ~」
言いながら、軽くストレッチをする。
勉強でかたくなった体をほぐしていると、後ろのほうで誰かが庭に降り立つ気配がして伊理穂は振り返った。
三井だった。
三和土に置いてあったサンダルのひとつを乱暴につっかけて、伊理穂の隣りに歩いてくる。
「三井先輩」
「よお、伊理穂」
「どうですか、お勉強の調子は」
明日はなんとかなりそうですか? そう訊くと、三井がきゅっと眉間に皺を寄せ、難しい顔で頷いた。
「多分……」
その自信のなさそうな答えに、伊理穂は思わず破顔する。
「あはは、多分ですか。じゃあよかったです」
言いながらくすくす笑っていると、ふいに頬に三井の指が触れた。
そんなの、考えなくても容易に想像がつく。
きっと、伊理穂とのことを言われるたびに胸が軋んで痛いだろうに、それでも大丈夫と言ってくれる流川に、伊理穂の胸がぎゅっと縮んだ。
「うん、ありがとう」
もう一度心から感謝を伝えると、流川が優しく微笑んでくれた。
伊理穂の胸が泣きそうに震える。
と、流川がふいにマジメな顔つきに戻って言った。
「伊理穂。そんなことより、赤点……ほんとうにわりー」
その言葉に、伊理穂は慌てて首を振る。
胸の痛みを底の方にしまいこんで、なんとか元気をとり戻して言う。
「あ、ううん。そんなの気にしなくっていいよ、全然。それに今回のテスト、むずかしかったもんね」
ふうとため息を吐けば、流川が小さく頷いた。
「伊理穂のノートがなければ、もっとやばかった」
「お。てことは楓くん、ちゃんと勉強してくれたんだ?」
「たりめーだ。でも古文と現代文ができなかった」
「楓くんは文系科目が苦手なんだね」
言うと、流川がこくりと頷く。
「そっかそっか。じゃあ今度から、文系のノートは特にわかりやすく書くように心がけるね。わたし文系のほうが得意だから」
「サンキュ」
微かに微笑んで言う流川に、伊理穂も微笑み返した。
勉強がひと段落すると、伊理穂はひとり赤木宅の庭に下りた。
リビングに面した窓から降りることのできるそこはちょっとした広さがある。庭自体にもきちんと手入れが施されていた。
庭の隅には金木犀の木も植えられている。きっと秋にはいい香りをご近所に運ぶんだろう。
そんなことを思いながら、伊理穂は夜空を見上げた。
満月までもう少しだろうか。皓々と光る月を隠すように雲がときどきかぶって、あたりに薄い暗闇が落ちる。
伊理穂はそんな雲の動きを眺めながら、瞬く星に向かって手を伸ばしてぐぅっと伸びをした。
「ん~、つかれたぁ~」
言いながら、軽くストレッチをする。
勉強でかたくなった体をほぐしていると、後ろのほうで誰かが庭に降り立つ気配がして伊理穂は振り返った。
三井だった。
三和土に置いてあったサンダルのひとつを乱暴につっかけて、伊理穂の隣りに歩いてくる。
「三井先輩」
「よお、伊理穂」
「どうですか、お勉強の調子は」
明日はなんとかなりそうですか? そう訊くと、三井がきゅっと眉間に皺を寄せ、難しい顔で頷いた。
「多分……」
その自信のなさそうな答えに、伊理穂は思わず破顔する。
「あはは、多分ですか。じゃあよかったです」
言いながらくすくす笑っていると、ふいに頬に三井の指が触れた。