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夢小説設定
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慌てる千鶴をサポートしながら、洋平は手早く秀一に電話をかけた。
数回のコールの後秀一は電話に出た。
秀一はもうすぐそこまで来ていたらしく、洋平から事情を聞くと10分と経たないうちに家に帰ってきた。
秀一は伊理穂の具合を確認すると、ふうと安堵の息をついた。
「頭にコブはできているが、おそらく出血とかはないだろう。多分大丈夫だ」
秀一のその言葉に、洋平と千鶴が同時に胸を撫で下ろす。
「が、頭は心配だからな。とりあえず、念のために今から病院に連れて行くぞ」
そう言って伊理穂を抱きかかえた秀一に、洋平は重い唇を持ち上げた。
「じゃあ、オレは帰ります」
「一緒に病院へ行かないのか?」
微かに瞠目して言う秀一の言葉に、洋平は口元に自嘲を浮かべて首を振る。
「伊理穂のことは……心配ですけど。伊理穂に会わせる顔なんてないですから……」
「しかし、洋平……」
「秀一さん」
言い募る秀一を、洋平は遮るように言う。
「伊理穂には、今日オレがいたことは絶対に言わないでください。お願いします」
「……わかった。だが洋平。ほんとうにいいのか?」
はかるように見つめてくる秀一に、洋平は薄く微笑んで言う。
「はい。――じゃあ、オレはこれで」
それだけ言うと、まだなにか言いたそうな二人に背を向けて洋平は月瀬家を後にした。
(伊理穂……)
心配で胸が張り裂けそうで、できることなら病院で伊理穂の目が覚めるまで、ずっとそばについていたかった。
だけど、目覚めて自分がいたら、きっと伊理穂には後々酷なことになる。
そう悲鳴をあげる心に無理矢理言い聞かせて、洋平は拳を握り締めた。
爪が肉に食いこんで、洋平の手の平に薄く血が滲む。
秀一がいれば、伊理穂は大丈夫だろう。
(伊理穂……)
洋平は夜空を見上げて、星に伊理穂の無事を祈るように願掛けた。
夢を見ていた。
流川と別れたときの夢。
苦渋に歪む、流川の顔。
胸が苦しくなる。
「かえで……くん……」
伊理穂に背を向けて、何かを堪えるように去っていくその流川の背中に、伊理穂は小さく囁いた。
「かえ……で……くん」
二回目に名前を呼んだ拍子に、伊理穂の瞳から一筋の涙が零れ落ちる。
「かえでくん……。ごめ……んね」
流川の背中が去ると、今度は洋平の顔が伊理穂の脳裏に浮かんだ。
洋平に、すごく会いたかった。
「洋平……」
伊理穂は愛しいその名を呼ぶと、瞳からさらに涙を零した。
To be continued…