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伊理穂の大きな瞳の下にはうっすらとクマが出来ていて、それがさらに洋平の胸を締めつけた。
「伊理穂……!」
そっと伊理穂の髪を撫でる。
「伊理穂、しっかりしろよ。こんな……こんなんだったら、流川が心配すんだろ? あんまりあいつに心配かけんなよ、なあ、伊理穂……。オレなんかがいなくなったくらいで、こんなんなること……ないだろ……!? 伊理穂……っ!」
洋平の瞳から、堪えきれず涙が零れた。
頭が真っ白になって何も考えられなかった。
伊理穂がこんなになるくらいなら、自分の苦しみなんていくらでも耐えて、流川にもきちんと事情を理解してもらって、いますぐにでも伊理穂のそばに戻りたかった。
だけど今更そんなことをできるわけがない。
洋平は、なにかに操られたように伊理穂の手を取った。
心臓がぎくりとするくらい冷たいそれ。洋平は、その指にそっと唇を寄せた。
指に口づけて、手の甲に口づけて、それから伊理穂に覆いかぶさるように身を乗り出すと、伊理穂の額にキスをした。
ぽたりと伊理穂の頬に洋平の涙が落ちる。
それを拭うように、洋平は伊理穂の頬に唇を寄せた。
唇からも以前触れたそことは違う感触が返ってきて、洋平の胸がつまった。
「伊理穂……!」
囁くと、洋平は伊理穂の唇に顔を近づけた。
触れるまであと数センチ。
そこで、伊理穂の口が動いた。
「かえで……くん」
伊理穂の口から漏れた名前。
それに、洋平はハッと我に返った。
もう一度ゆっくり伊理穂の唇が動いて、
「かえ……で……くん」
伊理穂が苦しそうに流川の名前を呼んだ。
すっと一筋、伊理穂の閉じられた目から涙が滑り落ちる。
「――!」
洋平は突然その場にいることに耐えられなくなって、急いでそこを出た。
さきほどの自分の行為に、激しい背徳感が押し寄せる。
後ろ手に伊理穂の部屋のドアを閉めると、あえぐような呼吸を繰り返した。
と、その時、ちょうど玄関が開いて千鶴が帰ってきた。
そのタイミングのよさに、洋平はほっと息をつく。
洋平は急いで頬を濡らす涙を拭うと、小さく鼻歌を歌いながら玄関で靴を脱いでいる千鶴に声をかけた。
「千鶴さん」
「わ、洋平!?」
洋平が呼びかけると、千鶴が驚いたように目を見開いた。
「どうしたの洋平。珍しいわね、うちにいるなんて。あ、もしかして伊理穂ちゃんと仲直りしたの?」
表情を明るくして聞いてくる千鶴に、洋平は階段を下りながらゆるゆると首を振る。
「いや、違うんです。千鶴さん、伊理穂が……」
洋平は、千鶴に伊理穂が玄関先で倒れていたことを話した。
千鶴が驚愕して声をあげる。
「ええ、伊理穂ちゃんが……!? ああ、最近夜もよく眠れてないみたいだし、ご飯もあんまり食べてないようだし、いつかこんなことになるんじゃないかと心配していたのよ……! あ、ど、どうしよう、頭を強く打ちつけたのなら、とりあえず病院に……!」
「あ、じゃあオレいったん秀一さんのケータイに電話します。千鶴さんは伊理穂についててやってください」
「ありがとう、洋平」
「伊理穂……!」
そっと伊理穂の髪を撫でる。
「伊理穂、しっかりしろよ。こんな……こんなんだったら、流川が心配すんだろ? あんまりあいつに心配かけんなよ、なあ、伊理穂……。オレなんかがいなくなったくらいで、こんなんなること……ないだろ……!? 伊理穂……っ!」
洋平の瞳から、堪えきれず涙が零れた。
頭が真っ白になって何も考えられなかった。
伊理穂がこんなになるくらいなら、自分の苦しみなんていくらでも耐えて、流川にもきちんと事情を理解してもらって、いますぐにでも伊理穂のそばに戻りたかった。
だけど今更そんなことをできるわけがない。
洋平は、なにかに操られたように伊理穂の手を取った。
心臓がぎくりとするくらい冷たいそれ。洋平は、その指にそっと唇を寄せた。
指に口づけて、手の甲に口づけて、それから伊理穂に覆いかぶさるように身を乗り出すと、伊理穂の額にキスをした。
ぽたりと伊理穂の頬に洋平の涙が落ちる。
それを拭うように、洋平は伊理穂の頬に唇を寄せた。
唇からも以前触れたそことは違う感触が返ってきて、洋平の胸がつまった。
「伊理穂……!」
囁くと、洋平は伊理穂の唇に顔を近づけた。
触れるまであと数センチ。
そこで、伊理穂の口が動いた。
「かえで……くん」
伊理穂の口から漏れた名前。
それに、洋平はハッと我に返った。
もう一度ゆっくり伊理穂の唇が動いて、
「かえ……で……くん」
伊理穂が苦しそうに流川の名前を呼んだ。
すっと一筋、伊理穂の閉じられた目から涙が滑り落ちる。
「――!」
洋平は突然その場にいることに耐えられなくなって、急いでそこを出た。
さきほどの自分の行為に、激しい背徳感が押し寄せる。
後ろ手に伊理穂の部屋のドアを閉めると、あえぐような呼吸を繰り返した。
と、その時、ちょうど玄関が開いて千鶴が帰ってきた。
そのタイミングのよさに、洋平はほっと息をつく。
洋平は急いで頬を濡らす涙を拭うと、小さく鼻歌を歌いながら玄関で靴を脱いでいる千鶴に声をかけた。
「千鶴さん」
「わ、洋平!?」
洋平が呼びかけると、千鶴が驚いたように目を見開いた。
「どうしたの洋平。珍しいわね、うちにいるなんて。あ、もしかして伊理穂ちゃんと仲直りしたの?」
表情を明るくして聞いてくる千鶴に、洋平は階段を下りながらゆるゆると首を振る。
「いや、違うんです。千鶴さん、伊理穂が……」
洋平は、千鶴に伊理穂が玄関先で倒れていたことを話した。
千鶴が驚愕して声をあげる。
「ええ、伊理穂ちゃんが……!? ああ、最近夜もよく眠れてないみたいだし、ご飯もあんまり食べてないようだし、いつかこんなことになるんじゃないかと心配していたのよ……! あ、ど、どうしよう、頭を強く打ちつけたのなら、とりあえず病院に……!」
「あ、じゃあオレいったん秀一さんのケータイに電話します。千鶴さんは伊理穂についててやってください」
「ありがとう、洋平」