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インターハイの大会の近い花道に、余計な心配をかけたくなかった。
もちろんいつまでも黙ったままでいるわけにはいかないし、いつか話さなくてはいけないのだけれど、洋平はなかなかそのきっかけをつかむことが出来ずにいた。
と、その時。
なにか重いものが勢いよく崩れ落ちるような音が外から響いてきた。
「!?」
(なんだ、今の音……?)
洋平は不審に思って窓から外を見渡した。
(誰か事故ったのか?)
そんなことを考えながら伊理穂の家のほうをみた瞬間、洋平の目に玄関先で倒れこんでいる伊理穂の姿が矢のように飛び込んできた。
「――伊理穂!」
頭でなにか考えるより早く、洋平のからだは弾かれたように部屋を飛び出していた。
伊理穂の家には誰もいないようだった。
洋平は玄関先でぐったりと倒れこんでいる伊理穂を抱きかかえると、玄関の鍵を開け、まっすぐ伊理穂の部屋へと向かった。
意識を失った人間のからだは重いはずなのに、腕の中の伊理穂は不自然なほど軽くて、洋平の心臓がぎくりと嫌な風に脈うった。
三井が荒れて体育館に乗り込んできたときも意識を失った伊理穂を抱えて家まで帰ったけれど、あの時はこんなに軽くはなかった。それに気づいた瞬間、洋平の胃の腑が焦げつきそうになる。
真っ白な顔で力なく目を閉じている伊理穂をベッドに横たえて、洋平は愕然と息を呑んだ。
久しぶりに間近で見た伊理穂は、顔色も悪く、ひどく痩せていて、まるで別人のようだった。
洋平は震える手をそっと伊理穂の頬に伸ばす。
いつもは弾力のあるそこは、今では肉がすっかりそげ落ちて、すぐに硬い骨の感触を伝えてきた。
ひんやりと温度のない伊理穂の頬。
洋平の目頭が熱くしびれていく。
「伊理穂……!」
洋平は、伊理穂の顔を覗き込んだ。
言葉を返さない、伊理穂の儚い姿。
胸に苦しみが迫る。
「伊理穂……! お前、どうしちまったんだよ……!」
洋平の脳裏に、先日夕飯を作りに来てくれた千鶴の言葉が思い浮かんだ。
『洋平。伊理穂ちゃん、最近あんまりご飯食べてないみたいなのよ。お弁当とかはいつも空にしてくるんだけど……でもそれにしてはなんだかちょっとおかしくて……。こんなこと、洋平に頼むのは酷だってわかってるんだけど……さりげなくでいいから、学校で伊理穂ちゃんのこと、見ててくれる? え、と、流川くん? だっけ? 伊理穂ちゃんの……彼氏。その子に伝えるのでも構わないから……』
言われてからしばらく伊理穂の様子を見ていたけれど、遠くで見ている分には、少し顔色が悪いなくらいにしか気づかなかった。
確かに少し痩せたかもしれないとは思っていたけれど、まさかここまでとは。
それと同時に、毎夜毎夜伊理穂の部屋から聞こえてくるうなされた声も思い出した。
洋平の胸がきりきりと痛む。
自分が離れていけば、ある程度伊理穂が落ち込むだろうということは洋平も予想していた。
それくらいには伊理穂が自分に依存していることは自覚できていた。
だけどどうして。
洋平は苦しみを堪えるように唇を噛み締める。
今は、伊理穂には流川がいるのに。伊理穂にとってかけがえのない存在が、一番近くにいてくれているのに。
(どうして……こんな……っ!)
洋平はもう一度伊理穂の頬を撫でた。
あたたかくて柔らかかったはずのそこは、何度触ってもひんやり冷たくて硬い。
もちろんいつまでも黙ったままでいるわけにはいかないし、いつか話さなくてはいけないのだけれど、洋平はなかなかそのきっかけをつかむことが出来ずにいた。
と、その時。
なにか重いものが勢いよく崩れ落ちるような音が外から響いてきた。
「!?」
(なんだ、今の音……?)
洋平は不審に思って窓から外を見渡した。
(誰か事故ったのか?)
そんなことを考えながら伊理穂の家のほうをみた瞬間、洋平の目に玄関先で倒れこんでいる伊理穂の姿が矢のように飛び込んできた。
「――伊理穂!」
頭でなにか考えるより早く、洋平のからだは弾かれたように部屋を飛び出していた。
伊理穂の家には誰もいないようだった。
洋平は玄関先でぐったりと倒れこんでいる伊理穂を抱きかかえると、玄関の鍵を開け、まっすぐ伊理穂の部屋へと向かった。
意識を失った人間のからだは重いはずなのに、腕の中の伊理穂は不自然なほど軽くて、洋平の心臓がぎくりと嫌な風に脈うった。
三井が荒れて体育館に乗り込んできたときも意識を失った伊理穂を抱えて家まで帰ったけれど、あの時はこんなに軽くはなかった。それに気づいた瞬間、洋平の胃の腑が焦げつきそうになる。
真っ白な顔で力なく目を閉じている伊理穂をベッドに横たえて、洋平は愕然と息を呑んだ。
久しぶりに間近で見た伊理穂は、顔色も悪く、ひどく痩せていて、まるで別人のようだった。
洋平は震える手をそっと伊理穂の頬に伸ばす。
いつもは弾力のあるそこは、今では肉がすっかりそげ落ちて、すぐに硬い骨の感触を伝えてきた。
ひんやりと温度のない伊理穂の頬。
洋平の目頭が熱くしびれていく。
「伊理穂……!」
洋平は、伊理穂の顔を覗き込んだ。
言葉を返さない、伊理穂の儚い姿。
胸に苦しみが迫る。
「伊理穂……! お前、どうしちまったんだよ……!」
洋平の脳裏に、先日夕飯を作りに来てくれた千鶴の言葉が思い浮かんだ。
『洋平。伊理穂ちゃん、最近あんまりご飯食べてないみたいなのよ。お弁当とかはいつも空にしてくるんだけど……でもそれにしてはなんだかちょっとおかしくて……。こんなこと、洋平に頼むのは酷だってわかってるんだけど……さりげなくでいいから、学校で伊理穂ちゃんのこと、見ててくれる? え、と、流川くん? だっけ? 伊理穂ちゃんの……彼氏。その子に伝えるのでも構わないから……』
言われてからしばらく伊理穂の様子を見ていたけれど、遠くで見ている分には、少し顔色が悪いなくらいにしか気づかなかった。
確かに少し痩せたかもしれないとは思っていたけれど、まさかここまでとは。
それと同時に、毎夜毎夜伊理穂の部屋から聞こえてくるうなされた声も思い出した。
洋平の胸がきりきりと痛む。
自分が離れていけば、ある程度伊理穂が落ち込むだろうということは洋平も予想していた。
それくらいには伊理穂が自分に依存していることは自覚できていた。
だけどどうして。
洋平は苦しみを堪えるように唇を噛み締める。
今は、伊理穂には流川がいるのに。伊理穂にとってかけがえのない存在が、一番近くにいてくれているのに。
(どうして……こんな……っ!)
洋平はもう一度伊理穂の頬を撫でた。
あたたかくて柔らかかったはずのそこは、何度触ってもひんやり冷たくて硬い。