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片手に昼間買い出ししたものを持って、反対の手ではっきりしない頭をおさえて、伊理穂は少し前の道路を見つめながら俯きがちに歩いていた。
家について門を開けようとしたとき、ふと人の気配を感じた。
何の気なしに顔をあげて、伊理穂の心臓が大きく飛び跳ねた。
隣りの水戸家の門の前に、ちょうどバイトから帰ってきたのだろう洋平が立っていた。
洋平も伊理穂に気づいて、驚いたように目を瞠っている。
伊理穂の心臓が途端にばくばくと激しく脈打った。
緊張で指先が冷たくなる。
何か言ったほうがいいのか、どうすればいいのか。
ひどく焦って喉が勝手にひくりと動いた。
必死で朦朧とする頭を働かせようとしていると、同じく固まっていた洋平が、ふいに伊理穂から視線をそらした。
そのまま何事もなかったように門をあけて、玄関へと歩いていく。
「あ……」
ぽつりと、伊理穂の口から小さな音が漏れた。
洋平はそれに振り返ることもせずに、ジーンズの後ろポケットから鍵を探り出して玄関を開けると、そのまま中へと消えていった。
ばたんと、やけに大きく洋平の家の玄関が閉まる音が響く。
当然だ。
ぼんやりとした頭で、伊理穂は考える。
そうだ。洋平と会ったからって、もう言葉を交わせるような間柄ではないのに。
いったい自分はなにをしようとしていたんだろう。
思って、伊理穂の口もとに自嘲が浮かんだ。
バカみたい。
強く、心の中でくりかえす。
バカみたい。
伊理穂はなんとか無意識につめていた息を吐き出すと、のろのろと視線を手元にうつした。
ふわふわと足元が頼りない。
なんだが視界が妙に狭くて、ときどき景色がぐにゃりとゆがんだ。
からだが鉛のように重い。
全身に力が入らない。
伊理穂は渾身の力をこめてなんとか門を開けると、一歩前へ足を踏み出した……つもりだった。
だけど、足から地面を踏みしめた感触はおとずれなくて、かわりにガンと物凄い音が頭の中で響いた。
頬に、固い地面の感触がする。
なんでだろう、世界の景色がおかしい。
木が、横から生えている。
「……?」
そう思ったのを最後に、伊理穂の視界は暗闇に包まれた。
洋平は家に入ると、そのまま一直線に自室へと向かった。
ドアを閉めて、そのままずるずるとしゃがみ込む。
心臓がまだばくばくと激しく脈打っていた。
驚いた。
まさか伊理穂と鉢合わせるなんて。
洋平は部屋の時計を確認する。
午後十時。
こんな時間まで伊理穂は何をしていたんだろう。
(流川とデートでもしてたのか……?)
そういえば、手になにか持っていた気がする。
もしかしたらインターハイの買い出しかなにかなのかもしれない。
流川と仲良くやってるんだなと思って、洋平は微かに口元をほころばせた。
いろいろと要りようのものがあるからと、洋平も今日は花道の買い物につき合わされていた。
「…………」
思い出して、洋平はため息をつく。
花道には、結局まだ伊理穂とのことは言えていなかった。
家について門を開けようとしたとき、ふと人の気配を感じた。
何の気なしに顔をあげて、伊理穂の心臓が大きく飛び跳ねた。
隣りの水戸家の門の前に、ちょうどバイトから帰ってきたのだろう洋平が立っていた。
洋平も伊理穂に気づいて、驚いたように目を瞠っている。
伊理穂の心臓が途端にばくばくと激しく脈打った。
緊張で指先が冷たくなる。
何か言ったほうがいいのか、どうすればいいのか。
ひどく焦って喉が勝手にひくりと動いた。
必死で朦朧とする頭を働かせようとしていると、同じく固まっていた洋平が、ふいに伊理穂から視線をそらした。
そのまま何事もなかったように門をあけて、玄関へと歩いていく。
「あ……」
ぽつりと、伊理穂の口から小さな音が漏れた。
洋平はそれに振り返ることもせずに、ジーンズの後ろポケットから鍵を探り出して玄関を開けると、そのまま中へと消えていった。
ばたんと、やけに大きく洋平の家の玄関が閉まる音が響く。
当然だ。
ぼんやりとした頭で、伊理穂は考える。
そうだ。洋平と会ったからって、もう言葉を交わせるような間柄ではないのに。
いったい自分はなにをしようとしていたんだろう。
思って、伊理穂の口もとに自嘲が浮かんだ。
バカみたい。
強く、心の中でくりかえす。
バカみたい。
伊理穂はなんとか無意識につめていた息を吐き出すと、のろのろと視線を手元にうつした。
ふわふわと足元が頼りない。
なんだが視界が妙に狭くて、ときどき景色がぐにゃりとゆがんだ。
からだが鉛のように重い。
全身に力が入らない。
伊理穂は渾身の力をこめてなんとか門を開けると、一歩前へ足を踏み出した……つもりだった。
だけど、足から地面を踏みしめた感触はおとずれなくて、かわりにガンと物凄い音が頭の中で響いた。
頬に、固い地面の感触がする。
なんでだろう、世界の景色がおかしい。
木が、横から生えている。
「……?」
そう思ったのを最後に、伊理穂の視界は暗闇に包まれた。
洋平は家に入ると、そのまま一直線に自室へと向かった。
ドアを閉めて、そのままずるずるとしゃがみ込む。
心臓がまだばくばくと激しく脈打っていた。
驚いた。
まさか伊理穂と鉢合わせるなんて。
洋平は部屋の時計を確認する。
午後十時。
こんな時間まで伊理穂は何をしていたんだろう。
(流川とデートでもしてたのか……?)
そういえば、手になにか持っていた気がする。
もしかしたらインターハイの買い出しかなにかなのかもしれない。
流川と仲良くやってるんだなと思って、洋平は微かに口元をほころばせた。
いろいろと要りようのものがあるからと、洋平も今日は花道の買い物につき合わされていた。
「…………」
思い出して、洋平はため息をつく。
花道には、結局まだ伊理穂とのことは言えていなかった。