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夢小説設定
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「…………」
洋平はふうとため息を着くと、家の門を開けた。そのまま鍵を差してドアノブをひねる。
「ただいま……っと」
習慣で放った言葉は、しんと静まりかえった廊下に吸い込まれていった。
看護士の仕事をしている母・弥生は今日は夜勤だと言っていた。
家には誰もいない。
洋平は玄関でくつを脱ぐと、そのまま階段を上って自分の部屋へと向かった。
憂鬱な気持ちを抱えたまま階段を上りきると、正面に見える自分の部屋から明かりが漏れていた。
(伊理穂か……?)
歩調を速めてドアを開けると、案の定、中には伊理穂がいた。
なぜか洋平のベッドに体を投げ出して、のんきにすやすやと眠っている。
「…………」
布団もかけずに仰向けに寝転んで眠る無防備なその姿に、洋平はため息をついた。
こういうところがいつまでも子供のままで、本当に参ってしまう。
(伊理穂はオレが男だってわかってんのか……?)
鞄を床に下ろして、そのまま伊理穂の横たわるベッドに近づく。
「伊理穂」
呼びかけても返ってくるのは規則正しい寝息だけで、返事がなかった。
「伊理穂、寝てるのか?」
再び呼びかけた声にも、沈黙だけが返る。
「…………」
洋平は伊理穂の寝顔をしばらく見つめた後、ベッドに手をかけた。
軋むスプリングの音が静寂に包まれた部屋に響く。
「伊理穂……」
洋平は伊理穂に顔を寄せると、そっとその唇にキスをした。
ふわりと柔らかい感触に、胸がはちきれそうに苦しくなる。
「…………」
洋平はゆっくり唇を離すと、ベッドの脇に腰を落とした。
伊理穂の顔を覗き込むようにして、先ほど自分の唇を押し当てたそこに、今度は人差し指を当てる。
(寝込みを襲うなんて最低だな……)
伊理穂の唇をそっと指で撫でながら、洋平は自嘲するように口許を歪めた。
これまでも伊理穂が洋平のベッドで寝てることはよくあったが、一度として手を出したことはなかったのに。
(ちょっと焦ってんのか……?)
きっとそう遠くない未来に、伊理穂が自分の腕からいなくなる日が来る。
その日のことを思うと、胸が焼け付くように苦しくてどうにかなってしまいそうだった。
「伊理穂……」
洋平は溢れる気持ちを託すように名前を呼ぶと、顔にかかる髪をそっとよけてやった。
そのまま優しく頭を撫でてやる。
「う……ん?」
しばらく撫で続けていると、伊理穂がうっすらと目を開けた。