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インターハイ出場が決まって最初の日曜日。
結子は伊理穂を買い物に連れ出した。
インターハイは広島で行われる。
負けたら即帰宅のトーナメント戦だが、勝ち続けたら最大で一週間は滞在しなければならない。
着替えや日用品などもろもろが当然必要になってくる。
インターハイまではまだ日があったけれど、それを見越して結子が誘えば、誘われた伊理穂は、ちょうど買い物に行きたかったんだと無邪気に喜んでくれた。
他愛無いことを話しながら、結子は隣りを歩く伊理穂をじっと見つめた。
伊理穂の顔色は、よくなるどころかどんどん悪くなっているように思えた。
あまり眠れないのか目の下には薄くクマができている。食事もろくにとっていないようで、ふくふくしていた頬の肉はすっかり落ちてしまい、からだも一回り小さくなってしまった。
だけど、表情だけはいつもどおりの笑顔を浮かべていて、それが逆にひどく痛々しかった。
「うーん。洋服も下着も洗顔、トラベル用化粧水もろもろも買ったし、これくらいで終わりかなあ」
伊理穂が手元のメモを見ながら呟いた。
結子はハッと我に返ると、伊理穂の手元のメモを覗きこんで、そうねと同意する。
「とりあえず、今のところはこれぐらいでいいんじゃない? また足りないようだったら一緒に買い物に行きましょうよ」
「わあ、また付き合ってくれるの?」
「もちろん! 広島まではさすがに一緒に応援行けないかもしれないけど……それまでのお手伝いならするわよ」
「ありがとう、結ちゃん! 大好き!」
満面の笑みを浮かべて、伊理穂が結子の腰に抱きついてくる。
その頬が少し緊張で強張っているのに気づいて、結子は眉尻を下げて微笑んだ。
いつもならうるさいわね恥ずかしいでしょと一喝するその言葉にも、ありがとうと結子は微笑み返す。
「わたしも大好きよ、伊理穂」
結子が言うと、伊理穂は頬の強張りをといて嬉しそうに微笑んだ。
自分なんかのこんな言葉で喜んでくれるのであれば、いくらでも言ってやりたかった。
見ていてわかる。
洋平に嫌われているという事実は、その事実以外にも伊理穂の心にかなり暗い影を落としていた。
洋平とあんなことがあって以来、他のみんなも自分のことがほんとうは嫌いなんじゃないかと、伊理穂が心の奥底で怯えているのが伝わってきた。
言葉なんかじゃいくら言っても満たされないだろうとは思ったけれど、それでも少しでも不安を払拭できるのであれば、いくらでも言ってやるつもりだった。
それと、もうひとつ。
結子は緊張に震える喉に無理矢理つばを飲み込んで、伊理穂に言った。
「ね、伊理穂。まだ16時だし……よければこの後、うちに来ない?」
勇気を出して、伊理穂を家へ招待した。
「ふああ! 結ちゃんちって、すごいお金持ちだったんだね!」
じゃあ結ちゃんはお嬢様なのか~と、伊理穂が紅茶を啜りながら言った。
結子はその姿を、幾分緊張した様子で見守る。
ごくりとつばを飲み込んで、そろそろと口をひらいた。
「……引いた?」
「え? 引く?」
問いかけると、伊理穂がきょとんと結子を見つめてきた。
伊理穂は持っていたカップをソーサーに戻すと、小さく首を傾げる。
「引くってどうして? むしろ、結ちゃんがお嬢様ってイメージにぴったり! 結ちゃんて綺麗で大和撫子って見かけだし、深窓の令嬢って雰囲気あるもんね! あ、もちろん中身は全然違うんだけど」
伊理穂の最後の言葉に、結子は眉を寄せた。
「それって、褒められてるの? 貶されてるの?」
結子は伊理穂を買い物に連れ出した。
インターハイは広島で行われる。
負けたら即帰宅のトーナメント戦だが、勝ち続けたら最大で一週間は滞在しなければならない。
着替えや日用品などもろもろが当然必要になってくる。
インターハイまではまだ日があったけれど、それを見越して結子が誘えば、誘われた伊理穂は、ちょうど買い物に行きたかったんだと無邪気に喜んでくれた。
他愛無いことを話しながら、結子は隣りを歩く伊理穂をじっと見つめた。
伊理穂の顔色は、よくなるどころかどんどん悪くなっているように思えた。
あまり眠れないのか目の下には薄くクマができている。食事もろくにとっていないようで、ふくふくしていた頬の肉はすっかり落ちてしまい、からだも一回り小さくなってしまった。
だけど、表情だけはいつもどおりの笑顔を浮かべていて、それが逆にひどく痛々しかった。
「うーん。洋服も下着も洗顔、トラベル用化粧水もろもろも買ったし、これくらいで終わりかなあ」
伊理穂が手元のメモを見ながら呟いた。
結子はハッと我に返ると、伊理穂の手元のメモを覗きこんで、そうねと同意する。
「とりあえず、今のところはこれぐらいでいいんじゃない? また足りないようだったら一緒に買い物に行きましょうよ」
「わあ、また付き合ってくれるの?」
「もちろん! 広島まではさすがに一緒に応援行けないかもしれないけど……それまでのお手伝いならするわよ」
「ありがとう、結ちゃん! 大好き!」
満面の笑みを浮かべて、伊理穂が結子の腰に抱きついてくる。
その頬が少し緊張で強張っているのに気づいて、結子は眉尻を下げて微笑んだ。
いつもならうるさいわね恥ずかしいでしょと一喝するその言葉にも、ありがとうと結子は微笑み返す。
「わたしも大好きよ、伊理穂」
結子が言うと、伊理穂は頬の強張りをといて嬉しそうに微笑んだ。
自分なんかのこんな言葉で喜んでくれるのであれば、いくらでも言ってやりたかった。
見ていてわかる。
洋平に嫌われているという事実は、その事実以外にも伊理穂の心にかなり暗い影を落としていた。
洋平とあんなことがあって以来、他のみんなも自分のことがほんとうは嫌いなんじゃないかと、伊理穂が心の奥底で怯えているのが伝わってきた。
言葉なんかじゃいくら言っても満たされないだろうとは思ったけれど、それでも少しでも不安を払拭できるのであれば、いくらでも言ってやるつもりだった。
それと、もうひとつ。
結子は緊張に震える喉に無理矢理つばを飲み込んで、伊理穂に言った。
「ね、伊理穂。まだ16時だし……よければこの後、うちに来ない?」
勇気を出して、伊理穂を家へ招待した。
「ふああ! 結ちゃんちって、すごいお金持ちだったんだね!」
じゃあ結ちゃんはお嬢様なのか~と、伊理穂が紅茶を啜りながら言った。
結子はその姿を、幾分緊張した様子で見守る。
ごくりとつばを飲み込んで、そろそろと口をひらいた。
「……引いた?」
「え? 引く?」
問いかけると、伊理穂がきょとんと結子を見つめてきた。
伊理穂は持っていたカップをソーサーに戻すと、小さく首を傾げる。
「引くってどうして? むしろ、結ちゃんがお嬢様ってイメージにぴったり! 結ちゃんて綺麗で大和撫子って見かけだし、深窓の令嬢って雰囲気あるもんね! あ、もちろん中身は全然違うんだけど」
伊理穂の最後の言葉に、結子は眉を寄せた。
「それって、褒められてるの? 貶されてるの?」