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伊理穂と別れた次の日。流川はひとり、学校の屋上で惰眠を貪っていた。
ちなみにノートはきちんと伊理穂に頼んできた。その辺はぬかりはない。
誰にも邪魔をされたくなかったので、屋上に続く扉の屋根の上、給水タンクのあるそこに流川は寝そべっていた。
からだも心も、バスケと伊理穂のことで疲弊しきっていた。
横向きに倒していた体をあお向けて、流川は空を見上げる。
夏の日差しがぎらぎらと容赦なく目に突き刺さった。
流川はそれに不機嫌に顔をしかめて、目の上に腕をのせた。
まぶたの裏に、伊理穂の笑顔が浮かぶ。
「…………」
流川は嘆息した。
二、三日前から伊理穂の様子がおかしいことには気づいていた。
だから近いうちにこうなることはずっと覚悟していた。
この前屋上で三井と結子と話したことで、その覚悟もさらに強まっていた。
だけど実際に失うとなると、やっぱり胸は痛むし心は苦しかった。
(伊理穂……)
伊理穂は今日の朝流川と会うと、一瞬だけ頬を緊張したように強張らせたけれど、それを無理矢理引っ張ってなんとか笑顔を向けてくれた。
最初は無理な笑顔でも、このままずっと話しかけていけば、いつかまた付き合う前のように自然な笑顔を向けてくれるようになるだろう。
それでよかった。
と、その時、からだの下にある扉が開く気配がした。
それとともに、ひどく耳なじみのある声が聞こえてくる。
三井と結子だった。
「…………」
なんとなく気にかかって、流川は二人の会話に耳を澄ます。
「伊理穂、どうやら昨日流川と別れたみたいです」
「そうか」
「……一応言っときますけど、三井先輩。これで伊理穂がフリーだラッキーなんてくれぐれも思わないでくださいね」
「バッ! 思わねぇよ! おい、結子。お前、オレのことどんな目で見てんだよ!」
「いや、だって三井先輩って、なんかこう空気読めず勝手にチャンスと踏んで伊理穂にアタック開始しそうな気がして……」
「するかバカ! 言ってんだろ、オレは伊理穂には水戸と幸せになって欲しいんだって」
「…………」
「なんで、んな目で見てくんだよ! いーから続き話せよ!」
ったく、あの日はしおらしく泣いてかわいかったのによ。なっ、あの日のことは忘れてください。いーや、オレの記憶にしっかり刻まれてるね。ぎゃー、消去して消去ー! なんていうにぎやかなやり取りがその後しばらく続いて、流川は二人に気付かれないようにそっと嘆息した。
相変わらず騒々しい二人だ。
そんな二人もお互いの行動に飽きたのか、急に真面目な口調に戻って話を元に戻した。
「とりあえず。こうなったら、水戸くんの方にも行動していいんじゃないかと思うんです」
「もうか? さすがに流川と別れてすぐはちょっと早すぎねえか? お前、オレと話した日からまだ三日しか経ってねえぞ?」
「それはわかってますけど、でも、伊理穂がもう限界のような気がして……」
結子は一旦言葉を切ると、そのさきをほとんど独白のように続けた。
「あの子、今はもうほとんど気力だけで立ってるようなものだわ。これまでは流川が支えてくれてたけど、今のあの子にはもう何もない。もともと無邪気なようでいて、さりげなく遠慮深い子だもの。きっとわたしにも素直に頼れないはず。唯一、あの子が素直に甘えて頼ることができたのは水戸くんだけなんだもの。だから……」
「よけーなことすんな」
ちなみにノートはきちんと伊理穂に頼んできた。その辺はぬかりはない。
誰にも邪魔をされたくなかったので、屋上に続く扉の屋根の上、給水タンクのあるそこに流川は寝そべっていた。
からだも心も、バスケと伊理穂のことで疲弊しきっていた。
横向きに倒していた体をあお向けて、流川は空を見上げる。
夏の日差しがぎらぎらと容赦なく目に突き刺さった。
流川はそれに不機嫌に顔をしかめて、目の上に腕をのせた。
まぶたの裏に、伊理穂の笑顔が浮かぶ。
「…………」
流川は嘆息した。
二、三日前から伊理穂の様子がおかしいことには気づいていた。
だから近いうちにこうなることはずっと覚悟していた。
この前屋上で三井と結子と話したことで、その覚悟もさらに強まっていた。
だけど実際に失うとなると、やっぱり胸は痛むし心は苦しかった。
(伊理穂……)
伊理穂は今日の朝流川と会うと、一瞬だけ頬を緊張したように強張らせたけれど、それを無理矢理引っ張ってなんとか笑顔を向けてくれた。
最初は無理な笑顔でも、このままずっと話しかけていけば、いつかまた付き合う前のように自然な笑顔を向けてくれるようになるだろう。
それでよかった。
と、その時、からだの下にある扉が開く気配がした。
それとともに、ひどく耳なじみのある声が聞こえてくる。
三井と結子だった。
「…………」
なんとなく気にかかって、流川は二人の会話に耳を澄ます。
「伊理穂、どうやら昨日流川と別れたみたいです」
「そうか」
「……一応言っときますけど、三井先輩。これで伊理穂がフリーだラッキーなんてくれぐれも思わないでくださいね」
「バッ! 思わねぇよ! おい、結子。お前、オレのことどんな目で見てんだよ!」
「いや、だって三井先輩って、なんかこう空気読めず勝手にチャンスと踏んで伊理穂にアタック開始しそうな気がして……」
「するかバカ! 言ってんだろ、オレは伊理穂には水戸と幸せになって欲しいんだって」
「…………」
「なんで、んな目で見てくんだよ! いーから続き話せよ!」
ったく、あの日はしおらしく泣いてかわいかったのによ。なっ、あの日のことは忘れてください。いーや、オレの記憶にしっかり刻まれてるね。ぎゃー、消去して消去ー! なんていうにぎやかなやり取りがその後しばらく続いて、流川は二人に気付かれないようにそっと嘆息した。
相変わらず騒々しい二人だ。
そんな二人もお互いの行動に飽きたのか、急に真面目な口調に戻って話を元に戻した。
「とりあえず。こうなったら、水戸くんの方にも行動していいんじゃないかと思うんです」
「もうか? さすがに流川と別れてすぐはちょっと早すぎねえか? お前、オレと話した日からまだ三日しか経ってねえぞ?」
「それはわかってますけど、でも、伊理穂がもう限界のような気がして……」
結子は一旦言葉を切ると、そのさきをほとんど独白のように続けた。
「あの子、今はもうほとんど気力だけで立ってるようなものだわ。これまでは流川が支えてくれてたけど、今のあの子にはもう何もない。もともと無邪気なようでいて、さりげなく遠慮深い子だもの。きっとわたしにも素直に頼れないはず。唯一、あの子が素直に甘えて頼ることができたのは水戸くんだけなんだもの。だから……」
「よけーなことすんな」