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曾祖父が起業した会社が成功し、それを受け継いだ祖父が固い地盤を築き、そして父の代でさらに新規開拓をして事業は拡大し、今も成長を続けている。いわゆるお金持ち。
家は100坪近くにも及び、広い庭に高級車、使用人も5名ほど雇っていた。
訪れた三井は、『久遠家』のことは知っていただろうけれど、結子がその『久遠家』と結びつかなかったのか、巨大な門を前にぽかんと大口を開けていた。
リビングで三井の到着を待っていた結子は、門に備え付けのカメラと直結しているモニターで三井の姿を確認すると、慌てて使用人に門を開けさせた。
それから使用人を下がらせて、庭を通り抜けて玄関にたどり着いた三井を結子は出迎えると、自分の部屋へと通した。
まだ驚きの覚めやらぬ三井が、呆然とした様子で「すげえな……」とぽつりと呟いている。
「三井先輩……!」
部屋で二人きりになると、途端にさまざまな想いが込み上げてきて、結子は思わず呆然と部屋を見渡している三井の腰に抱きついた。
自分でもどうしてだかわからないけど、三井の姿を見たらなぜだが妙に安心して、結子の瞳から涙が溢れてきた。
驚いて引き剥がそうとしていた三井も、結子の肩が小さく震えていることに気づいたのか、小さく嘆息すると離すのを諦めてぽんぽんと優しく頭を撫でてくれた。
「三井……先輩……!」
「大丈夫か? 結子」
結子は小さく首を横に振る。
「そうか……」
三井は言うと、優しい声で訊いて来た。
「何があったんだよ」
「実は……っ」
結子は三井に伊理穂から聞いたことを話して聞かせた。
伊理穂と洋平の家のことも、二人のこれまでの関係も、伊理穂から聞いた昨日の出来事も、伊理穂の気持ちも、全部全部。
「そういえばあの子、ことあるごとに水戸くんに嫌いになった? 迷惑だった? って心配そうに聞いてたんです。一度なんてちょっとそっけない態度を取った水戸くんに、嫌わないでって教室で泣き出しちゃったこともあって……っ! あれは全部、伊理穂の心の奥にあった、『水戸くんに嫌われている』という感情がそうさせてたことだったんだわ。だけどわたし、それに全然気付かなかった。それどころか、なんて水戸くんは大変なんだろうって、半ば彼に同情したりなんかもしちゃって……っ」
「それは……しょうがねえだろう。その場にいた誰もがお前と同じこと思ったよ、多分。伊理穂があの笑顔の裏で水戸に対してそんな気持ちを持ってたなんて、オレだって今お前の口から聞くまでわかんなかったんだからよ」
「でも、わたし……っ、自分が無力で……っ! 伊理穂の力になんにもなれないんだと思ったら悔しくて……っ」
「んなことねえだろ。お前は充分伊理穂の力になってるよ。じゃなきゃ、あいつがこんな大事なことお前に話すわけねぇだろ?」
「だけど……っ! 伊理穂は、あんなに傷ついてるのに……っ!」
悔しかった。
片鱗はあったのにそれに気付いてもやれないで、あげく話を聞いてあげるだけで、なにも出来ない。
力になりたいのに、今となっては全部見えてるのに、自分はほんとうになんて無力なんだろう。
(おまけに、三井先輩に泣きついちゃうなんて……)
これには結子自身驚いた。
自分はもっと強いつもりだった。これまでだって、なにに頼ることもなくだいたいのことは全部ひとりで解決して生きてきたのに、三井の声を聞いたら、三井の姿を見たら、守られているような安心感が胸に押し寄せて、込み上げてくる涙を押し留めることが出来なかった。
(三井先輩は伊理穂が好きなのに)
思うけれど、感情を止められなかった。
自分自身、伊理穂の力になれていないことがこれほどまでのダメージだったのだと改めて気づかされたほどだ。
三井は涙も止まってだいぶ落ち着いた結子をそっとからだから離すと、チッと忌々しそうに舌打ちをした。
「にしても、問題は水戸だよな。あのやろう、なんだって伊理穂にそんなこと言いやがったんだ」
家は100坪近くにも及び、広い庭に高級車、使用人も5名ほど雇っていた。
訪れた三井は、『久遠家』のことは知っていただろうけれど、結子がその『久遠家』と結びつかなかったのか、巨大な門を前にぽかんと大口を開けていた。
リビングで三井の到着を待っていた結子は、門に備え付けのカメラと直結しているモニターで三井の姿を確認すると、慌てて使用人に門を開けさせた。
それから使用人を下がらせて、庭を通り抜けて玄関にたどり着いた三井を結子は出迎えると、自分の部屋へと通した。
まだ驚きの覚めやらぬ三井が、呆然とした様子で「すげえな……」とぽつりと呟いている。
「三井先輩……!」
部屋で二人きりになると、途端にさまざまな想いが込み上げてきて、結子は思わず呆然と部屋を見渡している三井の腰に抱きついた。
自分でもどうしてだかわからないけど、三井の姿を見たらなぜだが妙に安心して、結子の瞳から涙が溢れてきた。
驚いて引き剥がそうとしていた三井も、結子の肩が小さく震えていることに気づいたのか、小さく嘆息すると離すのを諦めてぽんぽんと優しく頭を撫でてくれた。
「三井……先輩……!」
「大丈夫か? 結子」
結子は小さく首を横に振る。
「そうか……」
三井は言うと、優しい声で訊いて来た。
「何があったんだよ」
「実は……っ」
結子は三井に伊理穂から聞いたことを話して聞かせた。
伊理穂と洋平の家のことも、二人のこれまでの関係も、伊理穂から聞いた昨日の出来事も、伊理穂の気持ちも、全部全部。
「そういえばあの子、ことあるごとに水戸くんに嫌いになった? 迷惑だった? って心配そうに聞いてたんです。一度なんてちょっとそっけない態度を取った水戸くんに、嫌わないでって教室で泣き出しちゃったこともあって……っ! あれは全部、伊理穂の心の奥にあった、『水戸くんに嫌われている』という感情がそうさせてたことだったんだわ。だけどわたし、それに全然気付かなかった。それどころか、なんて水戸くんは大変なんだろうって、半ば彼に同情したりなんかもしちゃって……っ」
「それは……しょうがねえだろう。その場にいた誰もがお前と同じこと思ったよ、多分。伊理穂があの笑顔の裏で水戸に対してそんな気持ちを持ってたなんて、オレだって今お前の口から聞くまでわかんなかったんだからよ」
「でも、わたし……っ、自分が無力で……っ! 伊理穂の力になんにもなれないんだと思ったら悔しくて……っ」
「んなことねえだろ。お前は充分伊理穂の力になってるよ。じゃなきゃ、あいつがこんな大事なことお前に話すわけねぇだろ?」
「だけど……っ! 伊理穂は、あんなに傷ついてるのに……っ!」
悔しかった。
片鱗はあったのにそれに気付いてもやれないで、あげく話を聞いてあげるだけで、なにも出来ない。
力になりたいのに、今となっては全部見えてるのに、自分はほんとうになんて無力なんだろう。
(おまけに、三井先輩に泣きついちゃうなんて……)
これには結子自身驚いた。
自分はもっと強いつもりだった。これまでだって、なにに頼ることもなくだいたいのことは全部ひとりで解決して生きてきたのに、三井の声を聞いたら、三井の姿を見たら、守られているような安心感が胸に押し寄せて、込み上げてくる涙を押し留めることが出来なかった。
(三井先輩は伊理穂が好きなのに)
思うけれど、感情を止められなかった。
自分自身、伊理穂の力になれていないことがこれほどまでのダメージだったのだと改めて気づかされたほどだ。
三井は涙も止まってだいぶ落ち着いた結子をそっとからだから離すと、チッと忌々しそうに舌打ちをした。
「にしても、問題は水戸だよな。あのやろう、なんだって伊理穂にそんなこと言いやがったんだ」