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結子がうずくまる伊理穂に覆いかぶさるようにして、強く伊理穂のからだを抱きしめてきた。
伊理穂はそのぬくもりを感じながら、ひたすら嗚咽を漏らす。
「もうだめ。もうすべておしまいにする。……楓くんのことも、嘘じゃなかった。わたし、ほんとうに彼のことが好きだった。きっとこのままだったら、洋平より好きになれるかもしれなかった。でももうだめ。思い出してしまった。もう自分に嘘はつけない。わたし、洋平が好き。好きなの……っ!」
「伊理穂……っ!」
結子がからだを離したかと思うと、ふいに肩をつかまれた。
そのまま伊理穂は、からだを起こされる。
それまで黙って伊理穂の話を聞いてくれていた結子が、綺麗な顔を涙で濡らしながら言った。
「伊理穂、何言ってるのよバカ! よく考えて見なさいよ! 水戸くんがアンタのこと嫌いなんて、そんなことあるわけないでしょう!? 水戸くんはアンタのこと好きよ! 多分……アンタと同じくらい……ううん、それ以上に、水戸くんはアンタのことが好きなのよ。だから、流川とのことを思って水戸くんは……」
「違うっ!」
伊理穂は結子の言葉を遮って声を滑り込ませた。
「違う違う違う! そんなことない! わたしには、わかる……」
伊理穂の脳裏に、昨日の洋平の冷たい眼差しがひらめく。
耳元で洋平の氷のような声音がよみがえる。
「洋平は、わたしのこと、ほんとうに心から……!」
嫌っている。
もうその言葉を口に出来なかった。
それから先何も言うことができなくなった伊理穂の肩を掴んで、結子が言う。
「違うわよ、伊理穂。水戸くんはほんとうに伊理穂のことが好きなのよ! こうなったら、わたしが水戸くんに文句を言ってやるんだから!」
「それはだめ!」
結子のその言葉に、伊理穂は悲鳴のような声をあげた。
必死に結子にすがりついて懇願する。
「それはだめ! それだけはだめ! お願い結ちゃん、そんなことしないで! 洋平にはなにもしないで! お願い! もうこれ以上、洋平をわたしのことで煩わせたくない……! 洋平は、生まれてから昨日までずっと、わたしのことを大切にしてくれた。ずっとずっと、大切に守ってきてくれた。だから、もういいの。わたしは充分幸せだったから。だからいいの。洋平はなにも悪くない。お願い、結ちゃん、わたしは大丈夫だから」
「だけど……!」
「ほんとうに大丈夫。だから、お願い。もうやめて、結ちゃん……」
弱々しく、伊理穂は呟いた。
その声に、ハッと結子が身を硬くする。
「伊理穂……」
「ありがとう、結ちゃん。元気づけようとして言ってくれる結ちゃんの気持ち、すごく嬉しい。だけど、つらいの。洋平がわたしのことを好きだなんて、そんなこと一生起こり得ないこと、わたし自身が一番よく知ってる。だからお願い……結ちゃん。もうやめて……。言われるたびに、苦しいの。身も心も、引き裂かれそうになるの……!」
「伊理穂……」
黙り込んだ結子の胸を借りて、伊理穂はしばらくの間泣き続けた。
結子は伊理穂の家を後にすると、帰り着いた自室でひとり重いため息を吐いた。
あの後しばらくして泣き止んだ伊理穂と交わした会話を思い出す。
『ねえ、伊理穂。水戸くんのことはわかったけど……。アンタ、流川のことはどうするの?』
『……別れる』
『どうして? 水戸くんとはもう二度と関わらないで生きていくんでしょう? それだったら、別れなくってもいいじゃない。流川を好きな気持ちも嘘じゃなかったんでしょう? だったら、そのまま付き合い続けてもいいんじゃないの。ねえ、伊理穂。流川……アイツ、すごくアンタのこと好きよ。アイツの今までからは信じられないくらい、アイツ、アンタのこと大切にしてる。きっと流川ならアンタのことこれからもうんと大事にして、水戸くんのことだって忘れさせてくれると思うわよ?』
伊理穂はそのぬくもりを感じながら、ひたすら嗚咽を漏らす。
「もうだめ。もうすべておしまいにする。……楓くんのことも、嘘じゃなかった。わたし、ほんとうに彼のことが好きだった。きっとこのままだったら、洋平より好きになれるかもしれなかった。でももうだめ。思い出してしまった。もう自分に嘘はつけない。わたし、洋平が好き。好きなの……っ!」
「伊理穂……っ!」
結子がからだを離したかと思うと、ふいに肩をつかまれた。
そのまま伊理穂は、からだを起こされる。
それまで黙って伊理穂の話を聞いてくれていた結子が、綺麗な顔を涙で濡らしながら言った。
「伊理穂、何言ってるのよバカ! よく考えて見なさいよ! 水戸くんがアンタのこと嫌いなんて、そんなことあるわけないでしょう!? 水戸くんはアンタのこと好きよ! 多分……アンタと同じくらい……ううん、それ以上に、水戸くんはアンタのことが好きなのよ。だから、流川とのことを思って水戸くんは……」
「違うっ!」
伊理穂は結子の言葉を遮って声を滑り込ませた。
「違う違う違う! そんなことない! わたしには、わかる……」
伊理穂の脳裏に、昨日の洋平の冷たい眼差しがひらめく。
耳元で洋平の氷のような声音がよみがえる。
「洋平は、わたしのこと、ほんとうに心から……!」
嫌っている。
もうその言葉を口に出来なかった。
それから先何も言うことができなくなった伊理穂の肩を掴んで、結子が言う。
「違うわよ、伊理穂。水戸くんはほんとうに伊理穂のことが好きなのよ! こうなったら、わたしが水戸くんに文句を言ってやるんだから!」
「それはだめ!」
結子のその言葉に、伊理穂は悲鳴のような声をあげた。
必死に結子にすがりついて懇願する。
「それはだめ! それだけはだめ! お願い結ちゃん、そんなことしないで! 洋平にはなにもしないで! お願い! もうこれ以上、洋平をわたしのことで煩わせたくない……! 洋平は、生まれてから昨日までずっと、わたしのことを大切にしてくれた。ずっとずっと、大切に守ってきてくれた。だから、もういいの。わたしは充分幸せだったから。だからいいの。洋平はなにも悪くない。お願い、結ちゃん、わたしは大丈夫だから」
「だけど……!」
「ほんとうに大丈夫。だから、お願い。もうやめて、結ちゃん……」
弱々しく、伊理穂は呟いた。
その声に、ハッと結子が身を硬くする。
「伊理穂……」
「ありがとう、結ちゃん。元気づけようとして言ってくれる結ちゃんの気持ち、すごく嬉しい。だけど、つらいの。洋平がわたしのことを好きだなんて、そんなこと一生起こり得ないこと、わたし自身が一番よく知ってる。だからお願い……結ちゃん。もうやめて……。言われるたびに、苦しいの。身も心も、引き裂かれそうになるの……!」
「伊理穂……」
黙り込んだ結子の胸を借りて、伊理穂はしばらくの間泣き続けた。
結子は伊理穂の家を後にすると、帰り着いた自室でひとり重いため息を吐いた。
あの後しばらくして泣き止んだ伊理穂と交わした会話を思い出す。
『ねえ、伊理穂。水戸くんのことはわかったけど……。アンタ、流川のことはどうするの?』
『……別れる』
『どうして? 水戸くんとはもう二度と関わらないで生きていくんでしょう? それだったら、別れなくってもいいじゃない。流川を好きな気持ちも嘘じゃなかったんでしょう? だったら、そのまま付き合い続けてもいいんじゃないの。ねえ、伊理穂。流川……アイツ、すごくアンタのこと好きよ。アイツの今までからは信じられないくらい、アイツ、アンタのこと大切にしてる。きっと流川ならアンタのことこれからもうんと大事にして、水戸くんのことだって忘れさせてくれると思うわよ?』