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「まあ! やっぱり秀ちゃん冷たい! そんな状態の伊理穂ちゃんほったらかしちゃうなんて! やっぱりここは母親のわたしが……」
言って伊理穂の部屋へ行こうとする千鶴の首根っこを、秀一は苦笑を浮かべながらつかんで止めた。
「待て千鶴。お前には無理だ」
「……どうして」
むっつりと不機嫌に千鶴が言う。
「お前はせいぜい伊理穂に話を聞いて一緒に泣くのが関の山だろう? そうなったら俺の手間が増える。こういうのは適材適所だ。頼むから大人しくしていろ」
「~~~~っ! ひどい、秀ちゃんっ! ……でも、悔しいけど、秀ちゃんの言うとおり……よね。わかりました」
どこか淋しそうに言う千鶴の頭を、秀一は優しく撫でた。
口元に微笑を浮かべ、やわらかく言う。
「まあ、そう拗ねるな千鶴。お前はいつもみたくあたたかく笑っていればそれでいい。伊理穂のことは俺がお前にもちゃんと教えてやるから、くれぐれも自分だけ蚊帳の外とは思うなよ。今お前がすべきなのは、伊理穂にいつもどおりの日常を与えてやることだ。他にお前が必要だと思ったら、いつでも言う」
「秀ちゃん……。ありがとう」
「ああ」
秀一はふうと息をつくと、昔のことがふいに頭に浮かんで、小さく笑った。
それを聞きとがめた千鶴が、不思議そうに聞いてくる。
「どうしたの?」
「いや……。似ているな、と思って」
「似ている?」
「洋平だよ。征樹にそっくりだと思ってな」
「征樹くん?」
千鶴が目をぱちくりと瞬かせた。
水戸征樹。
いまから四年前に亡くなった、洋平の父親であり、二人の古くからの友人でもあったひと。
征樹は若かりし頃、秀一の旗上げした暴走族『死神』で特攻隊長を務めていた。
短気で短絡で単純で血の気が多くて、だけど人一倍情にもろくて仲間思いだった征樹。
千鶴がその征樹を思い出すように上を見上げながら、ゆっくりと首を傾げた。
「そうかしら。征樹くんって洋平と違って、もっとうおおおおっていう情熱的な愛すべきおバカさんだったと思うんだけど。洋平は冷静で頭もいいし、どちらかといえば秀ちゃんに似ている気がするわ……」
「はは。まあ、おおよその性格は俺かもしれないな。でも、そっくりだよ」
「?」
「……好きな女の想い方が、あいつらは本当にそっくりだ」
「――! そういえば、そうね……。ふふ、やっぱり征樹くんの息子なのね、洋平は」
「妬けるくらいにな。しかしあれだな。女の想い方こそ俺に似れば、洋平もこんなに苦しまなくてもよかったのにな」
「どうして?」
きょとんと首を傾げる千鶴に、秀一はにやりと悪戯に口の端を持ち上げてみせた。
「俺は好きになった女は、多少強引な手を使ってでも手に入れるからな」
「……確かに、秀ちゃんは結構強引だったかも」
懐かしむように笑いながら千鶴が言う。
「でも、あれでわたしがなびかなかったらどうするつもりだったの?」
「愚問だな。お前は俺を好きになると思ったし、あの時お前に他に想う男がいたとしても、すぐに俺に夢中にさせる自信があった。お前みたいなド天然、俺以外に面倒を見れるわけがないだろう? お前には俺しかいないし、俺にはお前しかいない。……それまで、自分以外は全て敵だと思ってきた俺が、一目見てお前に惚れたんだ。これが運命じゃなくて、なんだという」
「ふふ。相変わらず俺様ねえ、秀ちゃんは。……あの子達も、運命だといいんだけどね」
「たとえ運命だとしても、それを切り開かなければ手にはできないさ。それがわからないようなら、二人はこれまでだな」
「冷たいわね」
「仕方ないさ。俺たちの介入できる問題じゃない。ともあれ、今はこのまま見守るしかないだろう。――うまく、まとまればいいんだがな」
「――そうね」
二人は心配げに顔を見合わせて、憂いを含んだ笑みを浮かべた。
言って伊理穂の部屋へ行こうとする千鶴の首根っこを、秀一は苦笑を浮かべながらつかんで止めた。
「待て千鶴。お前には無理だ」
「……どうして」
むっつりと不機嫌に千鶴が言う。
「お前はせいぜい伊理穂に話を聞いて一緒に泣くのが関の山だろう? そうなったら俺の手間が増える。こういうのは適材適所だ。頼むから大人しくしていろ」
「~~~~っ! ひどい、秀ちゃんっ! ……でも、悔しいけど、秀ちゃんの言うとおり……よね。わかりました」
どこか淋しそうに言う千鶴の頭を、秀一は優しく撫でた。
口元に微笑を浮かべ、やわらかく言う。
「まあ、そう拗ねるな千鶴。お前はいつもみたくあたたかく笑っていればそれでいい。伊理穂のことは俺がお前にもちゃんと教えてやるから、くれぐれも自分だけ蚊帳の外とは思うなよ。今お前がすべきなのは、伊理穂にいつもどおりの日常を与えてやることだ。他にお前が必要だと思ったら、いつでも言う」
「秀ちゃん……。ありがとう」
「ああ」
秀一はふうと息をつくと、昔のことがふいに頭に浮かんで、小さく笑った。
それを聞きとがめた千鶴が、不思議そうに聞いてくる。
「どうしたの?」
「いや……。似ているな、と思って」
「似ている?」
「洋平だよ。征樹にそっくりだと思ってな」
「征樹くん?」
千鶴が目をぱちくりと瞬かせた。
水戸征樹。
いまから四年前に亡くなった、洋平の父親であり、二人の古くからの友人でもあったひと。
征樹は若かりし頃、秀一の旗上げした暴走族『死神』で特攻隊長を務めていた。
短気で短絡で単純で血の気が多くて、だけど人一倍情にもろくて仲間思いだった征樹。
千鶴がその征樹を思い出すように上を見上げながら、ゆっくりと首を傾げた。
「そうかしら。征樹くんって洋平と違って、もっとうおおおおっていう情熱的な愛すべきおバカさんだったと思うんだけど。洋平は冷静で頭もいいし、どちらかといえば秀ちゃんに似ている気がするわ……」
「はは。まあ、おおよその性格は俺かもしれないな。でも、そっくりだよ」
「?」
「……好きな女の想い方が、あいつらは本当にそっくりだ」
「――! そういえば、そうね……。ふふ、やっぱり征樹くんの息子なのね、洋平は」
「妬けるくらいにな。しかしあれだな。女の想い方こそ俺に似れば、洋平もこんなに苦しまなくてもよかったのにな」
「どうして?」
きょとんと首を傾げる千鶴に、秀一はにやりと悪戯に口の端を持ち上げてみせた。
「俺は好きになった女は、多少強引な手を使ってでも手に入れるからな」
「……確かに、秀ちゃんは結構強引だったかも」
懐かしむように笑いながら千鶴が言う。
「でも、あれでわたしがなびかなかったらどうするつもりだったの?」
「愚問だな。お前は俺を好きになると思ったし、あの時お前に他に想う男がいたとしても、すぐに俺に夢中にさせる自信があった。お前みたいなド天然、俺以外に面倒を見れるわけがないだろう? お前には俺しかいないし、俺にはお前しかいない。……それまで、自分以外は全て敵だと思ってきた俺が、一目見てお前に惚れたんだ。これが運命じゃなくて、なんだという」
「ふふ。相変わらず俺様ねえ、秀ちゃんは。……あの子達も、運命だといいんだけどね」
「たとえ運命だとしても、それを切り開かなければ手にはできないさ。それがわからないようなら、二人はこれまでだな」
「冷たいわね」
「仕方ないさ。俺たちの介入できる問題じゃない。ともあれ、今はこのまま見守るしかないだろう。――うまく、まとまればいいんだがな」
「――そうね」
二人は心配げに顔を見合わせて、憂いを含んだ笑みを浮かべた。