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そして同時に、伊理穂の自分への依存心の深さを思い知った。
このままではだめだと思った。
このままでは遠からず、自分の存在が伊理穂の幸せを壊す原因になってしまう。
そう気付いたらもう選択肢はひとつしかなかった。
「伊理穂……!!」
洋平は伊理穂の名前を呼んだ。
胸に浮かぶ伊理穂の笑顔。耳によみがえる、さっきの伊理穂の言葉。
『いままでほんとうにありがとう』
どうして。どうしてこんなことになってしまったんだろう。
洋平の喉の奥から、堪えきれない嗚咽が漏れた。
伊理穂を失ってしまった。
もう二度と取り戻せない。
伊理穂の笑顔が、自分に向けられることはこの先一生ない。
笑顔だけじゃない。伊理穂のすべてを、自分は失ってしまった。
自らの手で、伊理穂を断ち切ってしまった。
「どうして……!」
唇から、嗚咽と共に呟きが漏れる。
そばにいたかっただけなのに。
たとえ恋人にはなれなくても、伊理穂の笑顔を守る存在としてずっと生きていきたかっただけなのに。
(どうして……それさえも許されないんだ……!)
洋平はだんと強く拳を床に打ち付けた。
骨を直に打ちつけて、拳から腕にじんわりとした痺れが走る。
がん……がん……と洋平は何度も何度も拳を床に打ち付けた。
気づけばいつのまにかそこから血が流れていて、クリーム色のじゅうたんを赤く染め上げていた。
こんなものかと思う。
打ち付けた拳はぶるぶる震えて、力が入らない。
骨にひびでもはいっているかもしれなかった。
だけど、こんなの、悲鳴をあげる心にくらべれば、痛くも痒くもなかった。
どうして心はこんなに痛いのに、苦しいのに、血の一滴も流れないんだろう。
洋平は思う。
それはきっと、からだが負う傷よりも、心が負う傷の方が深くひどいものだからだ。
もしも心が傷ついて、それでそこから血が流れるようなことになれば、人はきっと出血多量ですぐに死んでしまう。
だから、心は血を流さないのだ。
だけど、こんなのもっとひどい。
傷が出来て血が流れれば、そこにさまざまなものが集まって、傷を修復して、やがて元通りにしてくれる。
だけど心にはそれがない。傷ついたら傷ついたまんまで、下手すれば傷ついたことにも気づけない。
そうやって長い年月をかけて、ゆっくりとその傷が風化していくのを待つしか手段がない。
(生き地獄だ……!)
伊理穂を忘れられるわけがない。
伊理穂は洋平のすべてだった。生きる価値そのものだった。
それなのに、自分のこの先の人生にはもうそれがない。
「伊理穂……!」
耐えられる自信がなかった。
耳によみがえる伊理穂の涙声。
(泣かせたくなんてなかったのに。オレが、一生守ってやりたかったのに……!)
伊理穂に無理矢理キスをしたときの、伊理穂のあの怯えた瞳が忘れられない。
ほんとうはあんなことしたくなかった。
だけど、ああやって恐怖を植えつければ、きっと伊理穂はもう二度と自分から近寄っては来ないと思った。
嫌いだといっただけでは、三年前のあの時みたいにまた懲りずにそばに居続けようとするかもしれない。
それじゃあダメだった。意味がない。
(だから、ああするしかなかったんだ……! 伊理穂……!!)
このままではだめだと思った。
このままでは遠からず、自分の存在が伊理穂の幸せを壊す原因になってしまう。
そう気付いたらもう選択肢はひとつしかなかった。
「伊理穂……!!」
洋平は伊理穂の名前を呼んだ。
胸に浮かぶ伊理穂の笑顔。耳によみがえる、さっきの伊理穂の言葉。
『いままでほんとうにありがとう』
どうして。どうしてこんなことになってしまったんだろう。
洋平の喉の奥から、堪えきれない嗚咽が漏れた。
伊理穂を失ってしまった。
もう二度と取り戻せない。
伊理穂の笑顔が、自分に向けられることはこの先一生ない。
笑顔だけじゃない。伊理穂のすべてを、自分は失ってしまった。
自らの手で、伊理穂を断ち切ってしまった。
「どうして……!」
唇から、嗚咽と共に呟きが漏れる。
そばにいたかっただけなのに。
たとえ恋人にはなれなくても、伊理穂の笑顔を守る存在としてずっと生きていきたかっただけなのに。
(どうして……それさえも許されないんだ……!)
洋平はだんと強く拳を床に打ち付けた。
骨を直に打ちつけて、拳から腕にじんわりとした痺れが走る。
がん……がん……と洋平は何度も何度も拳を床に打ち付けた。
気づけばいつのまにかそこから血が流れていて、クリーム色のじゅうたんを赤く染め上げていた。
こんなものかと思う。
打ち付けた拳はぶるぶる震えて、力が入らない。
骨にひびでもはいっているかもしれなかった。
だけど、こんなの、悲鳴をあげる心にくらべれば、痛くも痒くもなかった。
どうして心はこんなに痛いのに、苦しいのに、血の一滴も流れないんだろう。
洋平は思う。
それはきっと、からだが負う傷よりも、心が負う傷の方が深くひどいものだからだ。
もしも心が傷ついて、それでそこから血が流れるようなことになれば、人はきっと出血多量ですぐに死んでしまう。
だから、心は血を流さないのだ。
だけど、こんなのもっとひどい。
傷が出来て血が流れれば、そこにさまざまなものが集まって、傷を修復して、やがて元通りにしてくれる。
だけど心にはそれがない。傷ついたら傷ついたまんまで、下手すれば傷ついたことにも気づけない。
そうやって長い年月をかけて、ゆっくりとその傷が風化していくのを待つしか手段がない。
(生き地獄だ……!)
伊理穂を忘れられるわけがない。
伊理穂は洋平のすべてだった。生きる価値そのものだった。
それなのに、自分のこの先の人生にはもうそれがない。
「伊理穂……!」
耐えられる自信がなかった。
耳によみがえる伊理穂の涙声。
(泣かせたくなんてなかったのに。オレが、一生守ってやりたかったのに……!)
伊理穂に無理矢理キスをしたときの、伊理穂のあの怯えた瞳が忘れられない。
ほんとうはあんなことしたくなかった。
だけど、ああやって恐怖を植えつければ、きっと伊理穂はもう二度と自分から近寄っては来ないと思った。
嫌いだといっただけでは、三年前のあの時みたいにまた懲りずにそばに居続けようとするかもしれない。
それじゃあダメだった。意味がない。
(だから、ああするしかなかったんだ……! 伊理穂……!!)