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夢小説設定
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洋平の冷酷な言葉が、容赦なく伊理穂の耳に滑り込んでくる。
「お前さ。オレが苦しいのはお前がそばにいるからだって、なんでわかんねぇんだよ」
「!」
段々荒くなる洋平の語調。
「お前の存在がオレを苦しめるんだ。なあ、頼むからオレの目の前から消えてくれよ、伊理穂。お前、流川と付き合ってんだろ? これでやっとオレはお役目ごめんだってホッとしたのに、それなのに、なんでお前はまだオレにつきまとってくるんだ、伊理穂? なあ!」
ほとんど怒鳴り声に近くなった最後の言葉とともに、洋平が伊理穂の後頭部から離した手を、勢いよく伊理穂の顔の横についた。
ごんと激しい音を立てる壁。その振動がそこに触れている背を通して伊理穂のからだにも伝わった。
「よ……へ……」
あまりのショックにほとんど気を失いそうになりながら、伊理穂は必死に声を出す。
「ど……して?」
「あ?」
「だって……よ……へ、いつも……そばにいて……くれたの……に!」
「そんなの、お前の両親に世話になってるからに決まってんだろ? お前が好きだからじゃない。お前の両親への、恩返しなんだよ。ただそれだけだ」
「――!」
雷が落ちたような音を響かせて、心の中の箱が砕け散った。
隠していたものが、目をふさいできたものが、そこから次々とあふれ出していく。
「……っ」
伊理穂は喉を震わせて、酸素を取り込もうとした。
収まる場所を失った箱の中の感情は、あっという間に伊理穂の心を、からだをすべて支配した。
洋平は、やっぱり伊理穂のことが嫌いだった。伊理穂の存在自体が迷惑だった。
苦しくて息が吸えない。
からだの機能が全部停止してしまったみたいだ。
両の瞳からとめどなく涙を溢れさせながら、時折思い出したように息を吸い込む伊理穂から、洋平がからだを離した。
伊理穂に背を向ける。その背中に向けて、伊理穂は言った。
「よ……へ……。ひとつ、聞いても……いい?」
「……なんだよ」
「ほんとうはずっと、邪魔……だった? 中学のあの時も、洋平……同じこと、言ってた……もん……ね? ほんとうは、あの時からずっと……わたしのこと……嫌いで……迷惑だ……った?」
「――そうだよ」
呻くように、洋平が言った。
「あん時からじゃねえ。ずっとずっと最初から、出会ったときからお前のことが嫌いだった。迷惑だった。……お前のせいで、オレの人生めちゃくちゃだ。――わかったら、もう解放してくれよ。頼むから、もうオレと二度と関わらないでくれ」
「わか……った」
言葉がうまく見つからない。声が出ない。
でも、言わなければ。
これが、最後だ。
思うと伊理穂の胸が余計つかえた。
だけど言わなくては。
今言わなければ、もう二度と伝えられなくなる。
「よう……へ」
「んだよ」
「いま……まで、たくさん、たくさん、嫌な思いさせてきて……ごめんね? 生まれてきてから、16年もの、ながい……間、気づかなくて……しばりつけて……ごめんなさい」
言葉にすると、目がくらんだ。
16年。なんて長い年月。
洋平は生まれてからずっと、ひと時の安らぐ暇もなく、いつも傍らにあった自分の存在に苦しめられて生きてきた。
「お前さ。オレが苦しいのはお前がそばにいるからだって、なんでわかんねぇんだよ」
「!」
段々荒くなる洋平の語調。
「お前の存在がオレを苦しめるんだ。なあ、頼むからオレの目の前から消えてくれよ、伊理穂。お前、流川と付き合ってんだろ? これでやっとオレはお役目ごめんだってホッとしたのに、それなのに、なんでお前はまだオレにつきまとってくるんだ、伊理穂? なあ!」
ほとんど怒鳴り声に近くなった最後の言葉とともに、洋平が伊理穂の後頭部から離した手を、勢いよく伊理穂の顔の横についた。
ごんと激しい音を立てる壁。その振動がそこに触れている背を通して伊理穂のからだにも伝わった。
「よ……へ……」
あまりのショックにほとんど気を失いそうになりながら、伊理穂は必死に声を出す。
「ど……して?」
「あ?」
「だって……よ……へ、いつも……そばにいて……くれたの……に!」
「そんなの、お前の両親に世話になってるからに決まってんだろ? お前が好きだからじゃない。お前の両親への、恩返しなんだよ。ただそれだけだ」
「――!」
雷が落ちたような音を響かせて、心の中の箱が砕け散った。
隠していたものが、目をふさいできたものが、そこから次々とあふれ出していく。
「……っ」
伊理穂は喉を震わせて、酸素を取り込もうとした。
収まる場所を失った箱の中の感情は、あっという間に伊理穂の心を、からだをすべて支配した。
洋平は、やっぱり伊理穂のことが嫌いだった。伊理穂の存在自体が迷惑だった。
苦しくて息が吸えない。
からだの機能が全部停止してしまったみたいだ。
両の瞳からとめどなく涙を溢れさせながら、時折思い出したように息を吸い込む伊理穂から、洋平がからだを離した。
伊理穂に背を向ける。その背中に向けて、伊理穂は言った。
「よ……へ……。ひとつ、聞いても……いい?」
「……なんだよ」
「ほんとうはずっと、邪魔……だった? 中学のあの時も、洋平……同じこと、言ってた……もん……ね? ほんとうは、あの時からずっと……わたしのこと……嫌いで……迷惑だ……った?」
「――そうだよ」
呻くように、洋平が言った。
「あん時からじゃねえ。ずっとずっと最初から、出会ったときからお前のことが嫌いだった。迷惑だった。……お前のせいで、オレの人生めちゃくちゃだ。――わかったら、もう解放してくれよ。頼むから、もうオレと二度と関わらないでくれ」
「わか……った」
言葉がうまく見つからない。声が出ない。
でも、言わなければ。
これが、最後だ。
思うと伊理穂の胸が余計つかえた。
だけど言わなくては。
今言わなければ、もう二度と伝えられなくなる。
「よう……へ」
「んだよ」
「いま……まで、たくさん、たくさん、嫌な思いさせてきて……ごめんね? 生まれてきてから、16年もの、ながい……間、気づかなくて……しばりつけて……ごめんなさい」
言葉にすると、目がくらんだ。
16年。なんて長い年月。
洋平は生まれてからずっと、ひと時の安らぐ暇もなく、いつも傍らにあった自分の存在に苦しめられて生きてきた。