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結子の言葉に、伊理穂は眉間に皺を寄せた。
そのほうが大変? どういう意味?
沈痛な表情で結子が言う。
「こういうことは早いほうがいいのよ、伊理穂。流川と長く付き合えばそれだけ、今度は別れるのがつらくな……」
「やめてよ!!」
結子が何を言わんとしているのか気づいて、伊理穂はその先を遮るように声を滑り込ませた。
結子がハッと驚いたように身を硬くする。
伊理穂は耳をふさいで、大きく首を横に振りながら叫んだ。
「やめてやめてやめて! どうして!? どうしてみんなそんなことばっかり言うの!? 結ちゃんまで、わたしが洋平のこと好きだっていうの……!? みんなして、なんなのよ! わたしはちゃんと楓くんが好きなのに……っ! もうやめてよ……! もうわたしのことなんだからほっといて!!」
叫ぶと同時に伊理穂はその場から逃げ出した。
「伊理穂!!」
背中を追いかけてくる結子の声にも振り向かずに、伊理穂はその場を走り去る。
頭の中で、もうひとりの『伊理穂』の嘲笑が聞こえる。
もういやだ。もううんざりだ。
(どうしてこんなことばっかり言われなきゃいけないの……!?)
激しい感情の海に呑まれそうになりながら、伊理穂は無我夢中で走り続けた。
「まずったわね……」
結子はひとり取り残された教室で、伊理穂の駆け去ったほうを見てふうと息を吐き出した。
片手でがしがしと乱暴に頭をかくと、もう一度息をはく。
「とりあえず、バスケ部に伊理穂が早退することと、この報告を三井先輩にしに行こうかしらね……」
ひとり呟いてもう一度肺から息を吐き出すと、結子は体育館へと重い足を向けた。
駆けて駆けて駆けて、気づくと伊理穂は洋平の家の前にいた。
肩で息をしながら、伊理穂は洋平の部屋を見上げる。
そこから明かりが漏れていた。
よかった部屋にいる。
そうホッと息をついて、だけれど、部屋の明かりを確認しなければ洋平がバイトかどうかもわからなくなってしまった自分たちの距離に愕然として、胸が締め付けられた。
前は洋平の予定なんて全部把握していたのに、今ではなにもわからない。
どうしていきなり自分たちの距離がこんなに離れてしまったんだろう。
傍らに洋平がいない。
振り返ればいつもすぐそこにあった、洋平のあたたかい笑顔がない。
たったそれだけのことで、自分がこの世界で迷子になってしまったかのように心が不安になった。
(洋平……!)
すがりつくような思いで、伊理穂は洋平の家のチャイムを押した。
大楠とひと悶着あったあの日から、洋平の部屋の窓には鍵がかけられていて、そこから出入りすることはできなかった。
どうして。
伊理穂の顔が泣きそうに歪む。
そのほうが大変? どういう意味?
沈痛な表情で結子が言う。
「こういうことは早いほうがいいのよ、伊理穂。流川と長く付き合えばそれだけ、今度は別れるのがつらくな……」
「やめてよ!!」
結子が何を言わんとしているのか気づいて、伊理穂はその先を遮るように声を滑り込ませた。
結子がハッと驚いたように身を硬くする。
伊理穂は耳をふさいで、大きく首を横に振りながら叫んだ。
「やめてやめてやめて! どうして!? どうしてみんなそんなことばっかり言うの!? 結ちゃんまで、わたしが洋平のこと好きだっていうの……!? みんなして、なんなのよ! わたしはちゃんと楓くんが好きなのに……っ! もうやめてよ……! もうわたしのことなんだからほっといて!!」
叫ぶと同時に伊理穂はその場から逃げ出した。
「伊理穂!!」
背中を追いかけてくる結子の声にも振り向かずに、伊理穂はその場を走り去る。
頭の中で、もうひとりの『伊理穂』の嘲笑が聞こえる。
もういやだ。もううんざりだ。
(どうしてこんなことばっかり言われなきゃいけないの……!?)
激しい感情の海に呑まれそうになりながら、伊理穂は無我夢中で走り続けた。
「まずったわね……」
結子はひとり取り残された教室で、伊理穂の駆け去ったほうを見てふうと息を吐き出した。
片手でがしがしと乱暴に頭をかくと、もう一度息をはく。
「とりあえず、バスケ部に伊理穂が早退することと、この報告を三井先輩にしに行こうかしらね……」
ひとり呟いてもう一度肺から息を吐き出すと、結子は体育館へと重い足を向けた。
駆けて駆けて駆けて、気づくと伊理穂は洋平の家の前にいた。
肩で息をしながら、伊理穂は洋平の部屋を見上げる。
そこから明かりが漏れていた。
よかった部屋にいる。
そうホッと息をついて、だけれど、部屋の明かりを確認しなければ洋平がバイトかどうかもわからなくなってしまった自分たちの距離に愕然として、胸が締め付けられた。
前は洋平の予定なんて全部把握していたのに、今ではなにもわからない。
どうしていきなり自分たちの距離がこんなに離れてしまったんだろう。
傍らに洋平がいない。
振り返ればいつもすぐそこにあった、洋平のあたたかい笑顔がない。
たったそれだけのことで、自分がこの世界で迷子になってしまったかのように心が不安になった。
(洋平……!)
すがりつくような思いで、伊理穂は洋平の家のチャイムを押した。
大楠とひと悶着あったあの日から、洋平の部屋の窓には鍵がかけられていて、そこから出入りすることはできなかった。
どうして。
伊理穂の顔が泣きそうに歪む。