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その表情があまりにも切羽つまって見えたので、伊理穂もキャプテンの赤木に話して、今日の放課後、少し部活に遅れることを了承してもらった。今はその帰り道だった。教室では結子が既に待っている。
友人の一大事ならしょうがないと言ってくれた赤木は、ほんとうに出来たキャプテンだと思う。
そんなことを思いながら、伊理穂はあくびをかみ殺した。
頭がぼんやりする。
もうひとりの自分の夢。初めてあれを見た日から、伊理穂は毎日繰り返しあの夢を見続けてろくに睡眠を取れていなかった。
もうひとつあくびをかみ殺す。
少しだけ足元がぐらついた。
このままじゃいけないなと思う。きちんと睡眠をとらなくては。
だけど、最近ではあの夢を見るのが怖くて、ベッドに横になることさえいやだった。
(こんなとき、いつもなら洋平がそばにいてくれるのに)
思って伊理穂の胸はさらに重くなった。
こちらはさらにひどい。
洋平とは、大楠ともめたあの日以来、ろくに会話をしていなかった。
最近ではバスケ部に来ることも少なくなって、顔も見ない日々が続いている。
こんなにも長い間洋平の顔を見ないなんて、伊理穂にははじめてのことだった。
胸がちくりと痛む。
(もしかして、避けられてるのかな)
どうして?
考えても、浮かぶのはよくない想像ばかり。
ふと顔をあげると、いつのまにか自分の教室の前に来ていた。
伊理穂はいままで考えていた事を頭から追いやるように小さく首を横に振ると、教室のドアを開ける。
中で待っていた結子がこちらを振り向いた。
「おまたせ、結ちゃん」
日本人形のように美しい、自慢の親友に伊理穂は声を掛ける。
結子はにこりとも微笑まずに伊理穂を出迎えた。
なんだろう? その表情に、伊理穂の心が小さくさざめく。
「結ちゃん? 話ってなに? どうしたの?」
「流川とのことなんだけど」
問いかけると、結子が言い難そうに唇を持ち上げた。
その言葉に伊理穂の心臓がぎくりと嫌な音を立てる。
伊理穂はそれを気取られまいと、わざと明るく声を出した。
「楓くんのこと? 楓くんがどうかしたの?」
結子が深刻な表情で言う。
「ねえ、伊理穂。あんた、ほんとうに流川のこと好きなの?」
「え?」
「伊理穂がほんとうに好きなのは、流川じゃなくて水戸くんでしょ?」
その時、がしゃんと心の中で、再び鎖がほどけるような音が聞こえた。
前回のときとは比べ物にならないその音量に驚いて、伊理穂は思いっきり動転してしまう。
「な……に言ってるの、結ちゃん。そんなわけないじゃない。洋平は幼馴染みだって……なんで……?」
「なんでって……。あんたほんとうに自分で気づいてないの?」
結子がまるで痛ましいものでも見るかのような目つきで伊理穂を見つめてきた。
その憐れむような視線に、伊理穂の心が激しくかき乱される。
「どうして……? どうして結ちゃんまでそんなこと言うの? みんな、口を開けば洋平洋平って……。わたしが……わたしが楓くんのこと好きじゃいけないの!?」
思わず、口調が荒くなってしまった。
結子が言葉を選ぶように慎重に、重そうに唇を持ち上げる。
「そんなこと言ってないでしょ? ただ、もしもあんたがほんとうに自分の気持ちに気づいてないんなら、そのほうが大変だって思ったのよ」
「え?」
友人の一大事ならしょうがないと言ってくれた赤木は、ほんとうに出来たキャプテンだと思う。
そんなことを思いながら、伊理穂はあくびをかみ殺した。
頭がぼんやりする。
もうひとりの自分の夢。初めてあれを見た日から、伊理穂は毎日繰り返しあの夢を見続けてろくに睡眠を取れていなかった。
もうひとつあくびをかみ殺す。
少しだけ足元がぐらついた。
このままじゃいけないなと思う。きちんと睡眠をとらなくては。
だけど、最近ではあの夢を見るのが怖くて、ベッドに横になることさえいやだった。
(こんなとき、いつもなら洋平がそばにいてくれるのに)
思って伊理穂の胸はさらに重くなった。
こちらはさらにひどい。
洋平とは、大楠ともめたあの日以来、ろくに会話をしていなかった。
最近ではバスケ部に来ることも少なくなって、顔も見ない日々が続いている。
こんなにも長い間洋平の顔を見ないなんて、伊理穂にははじめてのことだった。
胸がちくりと痛む。
(もしかして、避けられてるのかな)
どうして?
考えても、浮かぶのはよくない想像ばかり。
ふと顔をあげると、いつのまにか自分の教室の前に来ていた。
伊理穂はいままで考えていた事を頭から追いやるように小さく首を横に振ると、教室のドアを開ける。
中で待っていた結子がこちらを振り向いた。
「おまたせ、結ちゃん」
日本人形のように美しい、自慢の親友に伊理穂は声を掛ける。
結子はにこりとも微笑まずに伊理穂を出迎えた。
なんだろう? その表情に、伊理穂の心が小さくさざめく。
「結ちゃん? 話ってなに? どうしたの?」
「流川とのことなんだけど」
問いかけると、結子が言い難そうに唇を持ち上げた。
その言葉に伊理穂の心臓がぎくりと嫌な音を立てる。
伊理穂はそれを気取られまいと、わざと明るく声を出した。
「楓くんのこと? 楓くんがどうかしたの?」
結子が深刻な表情で言う。
「ねえ、伊理穂。あんた、ほんとうに流川のこと好きなの?」
「え?」
「伊理穂がほんとうに好きなのは、流川じゃなくて水戸くんでしょ?」
その時、がしゃんと心の中で、再び鎖がほどけるような音が聞こえた。
前回のときとは比べ物にならないその音量に驚いて、伊理穂は思いっきり動転してしまう。
「な……に言ってるの、結ちゃん。そんなわけないじゃない。洋平は幼馴染みだって……なんで……?」
「なんでって……。あんたほんとうに自分で気づいてないの?」
結子がまるで痛ましいものでも見るかのような目つきで伊理穂を見つめてきた。
その憐れむような視線に、伊理穂の心が激しくかき乱される。
「どうして……? どうして結ちゃんまでそんなこと言うの? みんな、口を開けば洋平洋平って……。わたしが……わたしが楓くんのこと好きじゃいけないの!?」
思わず、口調が荒くなってしまった。
結子が言葉を選ぶように慎重に、重そうに唇を持ち上げる。
「そんなこと言ってないでしょ? ただ、もしもあんたがほんとうに自分の気持ちに気づいてないんなら、そのほうが大変だって思ったのよ」
「え?」