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呑まれたように硬直する二人をしっかり見据えて、流川は言う。
「オメーのものさしでなんでもはかんな。オレは、なんもしねーで諦める方がよっぽどつれー。後悔もする。だから、これでいいんだ」
最後、流川は瞳を伏せた。
結子と三井がはじめて見る流川の気弱な姿に驚いた気配が伝わってくる。
流川はそれにクッと唇の端を持ち上げる。
「話はそれだけか?」
沈黙を肯定ととって、流川はくるりと背を向けた。
「じゃ」
教室へ向けて歩き出す。
胸に小さな棘が突き刺さっていた。
『伊理穂の気持ちに気づいてんのか?』
三井の質問が、抉るように流川の心臓を突き刺してくる。
(うるせー)
流川は小さくかぶりを振った。
わかってる。そんなこと。いちいち他人に釘を刺されなくても、ちゃんと自分にも見えている。
(伊理穂は、水戸が好きだ)
だけど。
(あいつが動かねーならオレがもらう。それだけだ)
それに流川には、伊理穂が自分に向けてくる好意もウソではないように見えた。
たしかに自分への気持ちは、水戸に向けるそれよりもはるかに少ない。
でも、好きな気持ちには変わりないように感じた。
それなら、そのちっぽけな気持ちにすがりついたっていいではないか。
もしかしたらこれから先、伊理穂の自分への気持ちが水戸のそれよりも大きくなるかもしれないではないか。
(ただ、なんもしねーで諦めるのは性にあわねー)
たとえこの幸せが幻だったとしても。
それでも流川はこのときがなければよかったなんて思わない。
(だから、ぐずぐずしてんじゃねーよ。水戸)
そこまで思って、流川はちっと舌打ちをした。
面白くない。実に面白くない。
(やっぱり、ついていくんじゃなかった)
自分の中に伊理穂を諦める下地が出来始めたことに気づいて、流川は忌々しそうに嘆息した。
「驚きましたね、三井先輩」
「だな、結子」
流川の去った後の屋上。結子と三井はそこで、呆然と今しがた流川の消えた扉を見つめながら呟いた。
まさか流川が伊理穂の気持ちに気づいているとは思わなかった。
そのうえで、あんな風に考えているなんて。
(流川……。水戸くんが伊理穂を奪いにきたら、伊理穂の気持ち如何では素直に返すって言ってるように聞こえたけど……)
それはきっと結子の勘違いではないだろう。
結子は今まで、流川は思ったようにやりたいことをやる、まさに天上天下唯我独尊男だと思っていた。けれど、どうやら違ったらしい。
「オメーのものさしでなんでもはかんな。オレは、なんもしねーで諦める方がよっぽどつれー。後悔もする。だから、これでいいんだ」
最後、流川は瞳を伏せた。
結子と三井がはじめて見る流川の気弱な姿に驚いた気配が伝わってくる。
流川はそれにクッと唇の端を持ち上げる。
「話はそれだけか?」
沈黙を肯定ととって、流川はくるりと背を向けた。
「じゃ」
教室へ向けて歩き出す。
胸に小さな棘が突き刺さっていた。
『伊理穂の気持ちに気づいてんのか?』
三井の質問が、抉るように流川の心臓を突き刺してくる。
(うるせー)
流川は小さくかぶりを振った。
わかってる。そんなこと。いちいち他人に釘を刺されなくても、ちゃんと自分にも見えている。
(伊理穂は、水戸が好きだ)
だけど。
(あいつが動かねーならオレがもらう。それだけだ)
それに流川には、伊理穂が自分に向けてくる好意もウソではないように見えた。
たしかに自分への気持ちは、水戸に向けるそれよりもはるかに少ない。
でも、好きな気持ちには変わりないように感じた。
それなら、そのちっぽけな気持ちにすがりついたっていいではないか。
もしかしたらこれから先、伊理穂の自分への気持ちが水戸のそれよりも大きくなるかもしれないではないか。
(ただ、なんもしねーで諦めるのは性にあわねー)
たとえこの幸せが幻だったとしても。
それでも流川はこのときがなければよかったなんて思わない。
(だから、ぐずぐずしてんじゃねーよ。水戸)
そこまで思って、流川はちっと舌打ちをした。
面白くない。実に面白くない。
(やっぱり、ついていくんじゃなかった)
自分の中に伊理穂を諦める下地が出来始めたことに気づいて、流川は忌々しそうに嘆息した。
「驚きましたね、三井先輩」
「だな、結子」
流川の去った後の屋上。結子と三井はそこで、呆然と今しがた流川の消えた扉を見つめながら呟いた。
まさか流川が伊理穂の気持ちに気づいているとは思わなかった。
そのうえで、あんな風に考えているなんて。
(流川……。水戸くんが伊理穂を奪いにきたら、伊理穂の気持ち如何では素直に返すって言ってるように聞こえたけど……)
それはきっと結子の勘違いではないだろう。
結子は今まで、流川は思ったようにやりたいことをやる、まさに天上天下唯我独尊男だと思っていた。けれど、どうやら違ったらしい。