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夢小説設定
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「大丈夫。昨日の大楠くん、ちょっと変だったもん。もう今日は大丈夫だと思う。それに、こんなに人の目のあるところじゃ昨日みたいなことになんてなりっこないし。……なにかあったら、大声で助けを呼ぶから。だからひとりで行かせて?」
「…………」
流川はしばらく考えるように黙り込むと、ゆっくり息を吐き出した。
切れ長の瞳で、じっと伊理穂を見つめる。
「ぜってーなんかあったら大声だせ」
「うん。ありがとう、楓くん」
伊理穂はそれだけ言うと、そこを離れて大楠のもとへと行った。
廊下に出て大楠と共に窓側に移動する。と、大楠が、
「ごめん!」
と勢いよく頭を下げてきた。
伊理穂は一瞬呆気に取られて、すぐに慌てたように大楠の身を起こそうとする。
けれど、大楠はからだを動かさない。
「お、大楠くん! 顔をあげて」
「伊理穂ちゃん、昨日はほんとうにごめん。謝って許されるようなことじゃないけど、でもどうしても謝りたくて……」
「うん……いいよ。わたしもごめんね。大楠くん」
大楠がつと顔をあげた。
伊理穂は眉尻を下げて口端を引っ張る。
「大楠くんの気持ち……全然気付かなくて……」
大楠がゆっくりからだを起こした。
切なそうに笑って、首を振る。
「いいんだ、そんなこと。オレが伊理穂ちゃんに気付かれないようにしてきたんだし。……それに、そういうのに気付けないってのがまた、伊理穂ちゃんのいいところなんだよ」
「……そうかな」
その意見には、大いに賛成しかねるところがある。
思って伊理穂は眉を寄せた。
「そうだって。だから、気付けなくて悪かったなんて自分のこと変に責めるなよ? そんなことになったら、オレの気持ちが浮かばれないだろ?」
「大楠くん……」
大楠が穏やかに笑う。
「いいんだ。伊理穂ちゃんはそれで。オレはそんな伊理穂ちゃんを好きになったんだからさ」
「……ありがとう」
「うん……。伊理穂ちゃん、が、よければ……。これからも、仲良く、してくれよ、な……?」
大楠がおそるおそるというように言った。
伊理穂はそれに、にこりと微笑んでみせる。
「もちろん」
「ありがとう」
大楠もその答えにホッとしたように微笑んだ。
しばらく笑顔で見つめあったあと、そういえば、と伊理穂は口を開く。
「大楠くん。洋平は? 一緒に来てないの?」
「洋平?」
大楠はきょとんと呟き返すと、すぐにやわらかく微笑んだ。
伊理穂は首を傾げる。
「大楠くん?」
「あ、いや、ごめん笑ったりして。――な、伊理穂ちゃん。オレ……さ、やっぱり今でも、伊理穂ちゃんは洋平が好きだと思ってるから」
「――え?」