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夢小説設定
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ふいをつかれて動けない流川に大楠の拳が振り下ろされる直前。洋平がそれを手の平でぱしりと受け止めた。
大楠を見つめるまなじりをきつくして、洋平は諭すように口を開く。
「大楠、もうやめろ。オレを殴って、それでおしまいでいいだろ?」
「――洋平!」
煮えたぎる感情を持て余すように、大楠が洋平の名を叫んだ。
それを洋平は苦しげに見つめて、叱りつけるように自分もまた声を荒げる。
「いい加減にしろ大楠! 伊理穂を悲しませたいのか!?」
その言葉に、大楠がハッと目を見開いた。
のろのろと伊理穂に視線を向けて、その顔が涙で濡れていることに気付くと、大楠はゆっくりと自分の顔を両手で覆った。
「わりい……」
弱々しく、大楠が言う。
「伊理穂ちゃん、ごめん。……オレ、どうかしてた。伊理穂ちゃんを悲しませるつもりじゃなかったんだ……」
「大楠くん……」
洋平はそんな大楠の背中を慰めるようにして優しく触れると、くるりと流川を振り向いた。
その場を取り繕うように、わざと明るい声で言う。
「わるかったな流川、騒がせて。――まあ、ただの失恋組の足掻きだと思って、勘弁してくれよ」
「…………」
今度は伊理穂に向けて、優しく瞳を細めて言う。
「伊理穂も気にするな。――泣かせて、ごめんな」
「洋平……」
「じゃあ、オレたちは行くわ。流川、伊理穂のことよろしく頼むな」
洋平はそれだけ言い置くと、力をなくした大楠を支えるようにして教室を出て行った。
伊理穂はそれを見送ると、溢れる涙を隠すように両手を顔に当てた。
「伊理穂……」
いたわるような流川の声が聞こえたかと思うと、伊理穂のからだが流川のぬくもりに包まれた。
伊理穂はその胸にすがりつく。
「どうしよう……どうしよう楓くん……。わたし、わたし大楠くんがわたしのことそんな風に思ってくれてたなんて、全然気付かなかった。だって、いっつも、明るく笑ってくれてて……」
脳裏にひらめく大楠の笑顔。一瞬後、それが先ほどの苦痛に歪んだ表情にとってかわる。
大楠のあんなつらそうな表情、初めて見た。
伊理穂の胸が、きりきりと軋む。
傷つけてしまった。
あんなに明るく優しい人を。いつも元気に笑ってくれた彼を。
傷つけてしまった。
(また、わたしの愚鈍さが人を傷つけた……!)
もしも伊理穂が大楠の気持ちに気付けていれば、彼をあそこまで追い詰めることはなかったかもしれないのに。
「伊理穂……。大丈夫、大丈夫だ」
流川の大きな手が、優しく伊理穂の背中をなでてくれる。
伊理穂はそのあたたかさに耐え切れずに嗚咽をもらした。
どうして。
どうしてわたしはこんなに愚かなんだろう。
どうして。
「どうしよう……こんな時どうすれば……! ……ようへい……っ!」
伊理穂がまぶたの裏に浮かんだ幼馴染みの名を呼んだその時。
突然流川が伊理穂を抱きしめていた腕を解いた。
大楠を見つめるまなじりをきつくして、洋平は諭すように口を開く。
「大楠、もうやめろ。オレを殴って、それでおしまいでいいだろ?」
「――洋平!」
煮えたぎる感情を持て余すように、大楠が洋平の名を叫んだ。
それを洋平は苦しげに見つめて、叱りつけるように自分もまた声を荒げる。
「いい加減にしろ大楠! 伊理穂を悲しませたいのか!?」
その言葉に、大楠がハッと目を見開いた。
のろのろと伊理穂に視線を向けて、その顔が涙で濡れていることに気付くと、大楠はゆっくりと自分の顔を両手で覆った。
「わりい……」
弱々しく、大楠が言う。
「伊理穂ちゃん、ごめん。……オレ、どうかしてた。伊理穂ちゃんを悲しませるつもりじゃなかったんだ……」
「大楠くん……」
洋平はそんな大楠の背中を慰めるようにして優しく触れると、くるりと流川を振り向いた。
その場を取り繕うように、わざと明るい声で言う。
「わるかったな流川、騒がせて。――まあ、ただの失恋組の足掻きだと思って、勘弁してくれよ」
「…………」
今度は伊理穂に向けて、優しく瞳を細めて言う。
「伊理穂も気にするな。――泣かせて、ごめんな」
「洋平……」
「じゃあ、オレたちは行くわ。流川、伊理穂のことよろしく頼むな」
洋平はそれだけ言い置くと、力をなくした大楠を支えるようにして教室を出て行った。
伊理穂はそれを見送ると、溢れる涙を隠すように両手を顔に当てた。
「伊理穂……」
いたわるような流川の声が聞こえたかと思うと、伊理穂のからだが流川のぬくもりに包まれた。
伊理穂はその胸にすがりつく。
「どうしよう……どうしよう楓くん……。わたし、わたし大楠くんがわたしのことそんな風に思ってくれてたなんて、全然気付かなかった。だって、いっつも、明るく笑ってくれてて……」
脳裏にひらめく大楠の笑顔。一瞬後、それが先ほどの苦痛に歪んだ表情にとってかわる。
大楠のあんなつらそうな表情、初めて見た。
伊理穂の胸が、きりきりと軋む。
傷つけてしまった。
あんなに明るく優しい人を。いつも元気に笑ってくれた彼を。
傷つけてしまった。
(また、わたしの愚鈍さが人を傷つけた……!)
もしも伊理穂が大楠の気持ちに気付けていれば、彼をあそこまで追い詰めることはなかったかもしれないのに。
「伊理穂……。大丈夫、大丈夫だ」
流川の大きな手が、優しく伊理穂の背中をなでてくれる。
伊理穂はそのあたたかさに耐え切れずに嗚咽をもらした。
どうして。
どうしてわたしはこんなに愚かなんだろう。
どうして。
「どうしよう……こんな時どうすれば……! ……ようへい……っ!」
伊理穂がまぶたの裏に浮かんだ幼馴染みの名を呼んだその時。
突然流川が伊理穂を抱きしめていた腕を解いた。