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そのまま伊理穂を振り返りもせずに、洋平は出口に向けて足早に歩き出す。
(なんでそんな冷たい態度なの?)
伊理穂の視界がじんわり滲んだ。
あんな冷たい洋平、今まで見たことがなかった。
伊理穂の胸が混乱に震える。朝練のときまでは普通だったのに。
どうして?
(もしかして、いつも洋平に迷惑かけてばっかだから、わたし嫌われちゃったの……?)
伊理穂の瞳から涙が零れた。
胸がずきずき痛い。
「ふぇ、よ、へ~。ごめんなさあ~い」
だんだんと遠ざかっていく背中に向けて伊理穂が泣きながら謝ると、洋平が出口へ急ぐ足を止めて、ぎょっとしたように振り返った。
先ほどとは正反対に、今度は伊理穂の方へ猛スピードで駆け寄ってくる。
「なっ、伊理穂。なんで泣いてんだよ!」
「だっ、だって……!! よ、へ、わたしのこと、きら、い、になった、んでしょ?」
しゃくりあげながらそう言うと、洋平が素っ頓狂な声をあげる。
「はあ!? いやいやいや、なんでそうなるんだよ」
「だ、だって……! よ、ようへ、いつも、やさ、優しいの、に、なんか、すごく冷た、いから……!」
「…………」
はあ、と洋平の疲れたようなため息が聞こえて、伊理穂は両手で顔を覆った。
胸が紐でぎゅっと縛られたみたいに苦しい。
息がつまる。
(よ、へ……)
さらに涙が溢れて何も言えなくなったときだった。
ふわりと頭にあたたかな手が触れた。
恐る恐る顔をあげると、洋平の優しい眼差しと視線がぶつかる。
洋平は柔らかく笑うと、伊理穂の頭をいつものように優しく撫でた。
「伊理穂、泣くなよ。大丈夫だって、嫌ったりなんかしてねえから。な?」
「うう……。じゃあなんでさっきあんなに冷たかったの?」
「なんでって……。ほら」
言って洋平は背後を親指で指し示した。
促されるままにそちらを見ると、伊理穂と洋平を中心に、半径1mくらいの大きな空白が出来ていた。
「あれ?」
涙の止まった伊理穂は、その現象にぱちぱちと目を瞬かせた。
いまその中にいるのは他には結子と流川の二人だけで、他のクラスメートたちは全員円の外側で壁にはりつくようにして成り行きを見守っていた。
その表情は恐怖に彩られている。
「! あーあーあーあー、なるほど!」
伊理穂は突然合点がいって声をあげた。
「洋平。もしかしてさっき教室が騒がしくなったのって洋平が原因だ!」
ずびしと名探偵よろしく人差し指を向けて言うと、洋平がうんざりした表情で頷いた。
「そうだよ。だから渡すもんだけ渡して、早めに立ち去ろうと思ったんだよ。なのに伊理穂、泣くんだもんなぁ。あーあ、どうすんだよ、伊理穂。これ」
「え、なにが?」
「ほら、見てみろよ伊理穂」
言いながら洋平が顔を伊理穂に寄せてきた。
ぴったりと横にならんで目線の高さを同じにしながら、こちらを見るクラスメートたちを指差す。
(なんでそんな冷たい態度なの?)
伊理穂の視界がじんわり滲んだ。
あんな冷たい洋平、今まで見たことがなかった。
伊理穂の胸が混乱に震える。朝練のときまでは普通だったのに。
どうして?
(もしかして、いつも洋平に迷惑かけてばっかだから、わたし嫌われちゃったの……?)
伊理穂の瞳から涙が零れた。
胸がずきずき痛い。
「ふぇ、よ、へ~。ごめんなさあ~い」
だんだんと遠ざかっていく背中に向けて伊理穂が泣きながら謝ると、洋平が出口へ急ぐ足を止めて、ぎょっとしたように振り返った。
先ほどとは正反対に、今度は伊理穂の方へ猛スピードで駆け寄ってくる。
「なっ、伊理穂。なんで泣いてんだよ!」
「だっ、だって……!! よ、へ、わたしのこと、きら、い、になった、んでしょ?」
しゃくりあげながらそう言うと、洋平が素っ頓狂な声をあげる。
「はあ!? いやいやいや、なんでそうなるんだよ」
「だ、だって……! よ、ようへ、いつも、やさ、優しいの、に、なんか、すごく冷た、いから……!」
「…………」
はあ、と洋平の疲れたようなため息が聞こえて、伊理穂は両手で顔を覆った。
胸が紐でぎゅっと縛られたみたいに苦しい。
息がつまる。
(よ、へ……)
さらに涙が溢れて何も言えなくなったときだった。
ふわりと頭にあたたかな手が触れた。
恐る恐る顔をあげると、洋平の優しい眼差しと視線がぶつかる。
洋平は柔らかく笑うと、伊理穂の頭をいつものように優しく撫でた。
「伊理穂、泣くなよ。大丈夫だって、嫌ったりなんかしてねえから。な?」
「うう……。じゃあなんでさっきあんなに冷たかったの?」
「なんでって……。ほら」
言って洋平は背後を親指で指し示した。
促されるままにそちらを見ると、伊理穂と洋平を中心に、半径1mくらいの大きな空白が出来ていた。
「あれ?」
涙の止まった伊理穂は、その現象にぱちぱちと目を瞬かせた。
いまその中にいるのは他には結子と流川の二人だけで、他のクラスメートたちは全員円の外側で壁にはりつくようにして成り行きを見守っていた。
その表情は恐怖に彩られている。
「! あーあーあーあー、なるほど!」
伊理穂は突然合点がいって声をあげた。
「洋平。もしかしてさっき教室が騒がしくなったのって洋平が原因だ!」
ずびしと名探偵よろしく人差し指を向けて言うと、洋平がうんざりした表情で頷いた。
「そうだよ。だから渡すもんだけ渡して、早めに立ち去ろうと思ったんだよ。なのに伊理穂、泣くんだもんなぁ。あーあ、どうすんだよ、伊理穂。これ」
「え、なにが?」
「ほら、見てみろよ伊理穂」
言いながら洋平が顔を伊理穂に寄せてきた。
ぴったりと横にならんで目線の高さを同じにしながら、こちらを見るクラスメートたちを指差す。