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「大楠くん……ほんとう、なのよ。流川くんと伊理穂ちゃん、ほんとうに付き合ってるの。わたしもこの前、伊理穂ちゃんから聞いたわ」
「……うそだろ」
呆然と大楠が呟いた。
「ウソだろ……? なあ、洋平、ウソだろ? お前は、いつからそれを知ってんだ? お前、それを止めなかったのか? なあ、お前、まさか流川に伊理穂ちゃんが取られるのを、指くわえて見てたって言うのかよ! なあ、なんとか言えよ洋平!」
「……そうだよ」
洋平は喉の奥から声を絞りだすように答えた。
大楠が愕然と目を瞠った。
普段血の気の多い大楠がただ呆然とすることしかできないという事実が、大楠がどれほどショックを受けているのかを如実に物語っていて、洋平は胸がつまった。
大楠が唇を小さくわななかせた。まるで言葉を忘れてしまったかのように、そこは震えるだけで何も発せられない。
「大楠……」
大楠はまだ驚きに支配された表情で二、三度首を横に振ると、ぽつりと消え入りそうな声で呟いた。
「わりぃ、オレ、帰るわ……」
「大楠」
引き止める洋平の声にも大楠は振り返らずに、のろのろと覚束ない足取りでその場を去っていった。
洋平はその背中を、心配そうに瞳を細めて見送った。
もっと早く話してやればよかったと、胸に後悔が走る。
それと同時に、洋平の胸が騒いだ。
(あいつ、なんか思い切ったことしなきゃいいけど……)
近いうちに大楠と話をしなければ。
洋平は落ち着かない胸を宥めながらそう思った。
次の日。伊理穂は大楠に呼び出されて、放課後の1年10組の教室にいた。
なんでも大事な話があるから、16時にここで待ってて欲しいとのこと。
伊理穂は自分の席に座ってのんびり本を読みながら、その時を待っていた。
本がきりのいいところまで差し掛かり、つとその目を持ち上げて時計を見る。
15時50分。大楠に指定された16時まであと10分だった。
(話ってなんだろう?)
伊理穂はしおりを挟んで本を閉じると、机に頬杖をついて考える。
もしかしたら昨日の花道のことかもしれない。
昨日の花道の落ち込みようは、見ていてかわいそうなほどだった。
昨日、伊理穂と流川が帰った後の席でなにかあったのかも。
(でも、それなら昨日のうちに洋平から話があるか……)
思い直して伊理穂は首を傾げた。
今日は少し部活に遅れてしまいそうだと、流川から彩子に伝えてくれるようにあらかじめ頼んでおいた。
用事? と聞いてきた流川に、伊理穂はそんなとこ、と適当にごまかした。
流川は少し変に思っていたようだけど、流川と大楠はあまり仲が良くないので、正直に伝える気になれなかったのだ。
それに、大楠とは長い付き合いだけれど、呼び出されるなんて初めてだ。よっぽど大事な話なのかもしれない。
そうであれば、その場に流川がいるのではなおのこと具合が悪いような気がした。
(もしかして、洋平のことについて相談があるのかな。……洋平、最近あんまりわたしと話してくれないし)