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夢小説設定
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それが原因での誤解なら、簡単に解くことができる。
思って、そのすぐ後に苦しいくらいの切なさが追いかけてきて、洋平は自嘲した。
痛む胸を抑えて、流川に言う。
「ちげえよ、流川。伊理穂がオレのこと気にするのは、オレのことが好きだからじゃねぇよ」
流川が瞳を細めた。
洋平はさらに言葉を続ける。
「伊理穂は、オレに責任を感じてるんだ」
「――セキニン?」
わけがわからないというように、流川が小さく眉を寄せる。
「そう、責任だ。……伊理穂は、オレがこんなんなっちまったのは、自分のせいだって思ってるんだよ」
そうして、洋平は語り始めた。どうして伊理穂が洋平に対して責任を感じているのかと、それに関わる自分たちの事情。
「オレ……さ、父親が十二の時に死んでんだ」
十二歳の冬に父親を亡くして、それを機に母親が看護学校に通うようになった。
その間、洋平は隣家でもあり、両親の古くからの友人でもある伊理穂の家に預けられた。
「オレはさ、まだ……ガキだったから。だから……まあ、早い話が悲劇の主人公ぶってたんだよな。その時期は、世界で一番自分が不幸なような気がしてた。素直に、伊理穂の家の優しさを受け入られなかったんだ。ありがたい気持ちと、どうして自分だけがって気持ちとがぶつかり合って、すげえ葛藤してた。だけど、それでもしばらくの間はありがたい気持ちのが勝ってたんだ。だけど……」
今でも思い出す。
あの日。
もともと洋平のことをよく思っていなかったクラスメートが、洋平の家に父親がいないことをバカにしてきた。
それを境に伊理穂の家に預けられていることも、母親に愛されていないからだと声高らかに言ってきた。
母親に関しては、洋平も一度となく思ったことだったから、悪意の固まりでしかないクラスメートの言葉がすんなりと心に入り込んでしまった。
そうして肥大する洋平の被害者意識。
極めつけは、伊理穂に関してのことだった。今でも鮮明に思い出せる。
普段つっぱってるくせに、いざとなったら伊理穂に守られて情けねーやつだよなー。
そのときの伊理穂は、父親を亡くして気落ちしている洋平を心配して、寄り添うように傍にいてくれた。
伊理穂に密かに想いを寄せていたそいつらからしたら、そのことが面白くなかったんだろう。
だけど、その時の洋平にとってはただのかわいいヤキモチじゃすまなかった。
許せなかった。屈辱だった。
「どうしてオレがこいつらにこんなこと言われなきゃいけないんだって、カッとなってボコボコにしちまった。向こうも人数がいたから当然オレも無事じゃすまなかったけど、もうそんなのどうでもよかった。自分が傷つくのも、相手が傷つくのも、もうどうでもよかったんだ。全てが嫌で、自暴自棄になって、そんな状態で帰った自分の家に伊理穂がいてさ……」
どうしたの、洋平!?
真っ青な顔で、今にも泣き出しそうに顔を歪めて、駆け寄ってきた伊理穂。
「オレは、そんな伊理穂にも牙を剥いたんだ。あいつはいつもオレのそばにいてくれて、ヘコんだオレの気持ちをやわらげてくれて、救ってくれてたのに。なのに、そんな伊理穂に、オレは、ひとの気もしらねぇでへらへら呑気に笑ってんじゃねぇよって……お前なんか、大ッ嫌いなんだよって言っちまった」
洋平の言葉に、流川が驚いたように目を瞠った。
洋平はそれに自嘲を浮かべる。
「最低だろ? ガキだったじゃすまされねぇよな。それだけじゃなくて、今ここで口にするのもやんなるような、ひでぇこともたくさん言った。ずいぶん……あいつを傷つけた。その日が、オレが本格的にグレた日」
「じゃあ、セキニンって……」
「そ。伊理穂は、オレがこんなんなったのは、自分がちゃんとつらい気持ちを気付いてやれなかったからだって思ってるんだ。自分が気付いていれば、オレがこんな風になることもなかったのにって……」
思って、そのすぐ後に苦しいくらいの切なさが追いかけてきて、洋平は自嘲した。
痛む胸を抑えて、流川に言う。
「ちげえよ、流川。伊理穂がオレのこと気にするのは、オレのことが好きだからじゃねぇよ」
流川が瞳を細めた。
洋平はさらに言葉を続ける。
「伊理穂は、オレに責任を感じてるんだ」
「――セキニン?」
わけがわからないというように、流川が小さく眉を寄せる。
「そう、責任だ。……伊理穂は、オレがこんなんなっちまったのは、自分のせいだって思ってるんだよ」
そうして、洋平は語り始めた。どうして伊理穂が洋平に対して責任を感じているのかと、それに関わる自分たちの事情。
「オレ……さ、父親が十二の時に死んでんだ」
十二歳の冬に父親を亡くして、それを機に母親が看護学校に通うようになった。
その間、洋平は隣家でもあり、両親の古くからの友人でもある伊理穂の家に預けられた。
「オレはさ、まだ……ガキだったから。だから……まあ、早い話が悲劇の主人公ぶってたんだよな。その時期は、世界で一番自分が不幸なような気がしてた。素直に、伊理穂の家の優しさを受け入られなかったんだ。ありがたい気持ちと、どうして自分だけがって気持ちとがぶつかり合って、すげえ葛藤してた。だけど、それでもしばらくの間はありがたい気持ちのが勝ってたんだ。だけど……」
今でも思い出す。
あの日。
もともと洋平のことをよく思っていなかったクラスメートが、洋平の家に父親がいないことをバカにしてきた。
それを境に伊理穂の家に預けられていることも、母親に愛されていないからだと声高らかに言ってきた。
母親に関しては、洋平も一度となく思ったことだったから、悪意の固まりでしかないクラスメートの言葉がすんなりと心に入り込んでしまった。
そうして肥大する洋平の被害者意識。
極めつけは、伊理穂に関してのことだった。今でも鮮明に思い出せる。
普段つっぱってるくせに、いざとなったら伊理穂に守られて情けねーやつだよなー。
そのときの伊理穂は、父親を亡くして気落ちしている洋平を心配して、寄り添うように傍にいてくれた。
伊理穂に密かに想いを寄せていたそいつらからしたら、そのことが面白くなかったんだろう。
だけど、その時の洋平にとってはただのかわいいヤキモチじゃすまなかった。
許せなかった。屈辱だった。
「どうしてオレがこいつらにこんなこと言われなきゃいけないんだって、カッとなってボコボコにしちまった。向こうも人数がいたから当然オレも無事じゃすまなかったけど、もうそんなのどうでもよかった。自分が傷つくのも、相手が傷つくのも、もうどうでもよかったんだ。全てが嫌で、自暴自棄になって、そんな状態で帰った自分の家に伊理穂がいてさ……」
どうしたの、洋平!?
真っ青な顔で、今にも泣き出しそうに顔を歪めて、駆け寄ってきた伊理穂。
「オレは、そんな伊理穂にも牙を剥いたんだ。あいつはいつもオレのそばにいてくれて、ヘコんだオレの気持ちをやわらげてくれて、救ってくれてたのに。なのに、そんな伊理穂に、オレは、ひとの気もしらねぇでへらへら呑気に笑ってんじゃねぇよって……お前なんか、大ッ嫌いなんだよって言っちまった」
洋平の言葉に、流川が驚いたように目を瞠った。
洋平はそれに自嘲を浮かべる。
「最低だろ? ガキだったじゃすまされねぇよな。それだけじゃなくて、今ここで口にするのもやんなるような、ひでぇこともたくさん言った。ずいぶん……あいつを傷つけた。その日が、オレが本格的にグレた日」
「じゃあ、セキニンって……」
「そ。伊理穂は、オレがこんなんなったのは、自分がちゃんとつらい気持ちを気付いてやれなかったからだって思ってるんだ。自分が気付いていれば、オレがこんな風になることもなかったのにって……」