13
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……伊理穂の、外見も確かに好きだ。だけど、あいつのほんとうのかわいさは、あの性格あってこそだろ。……オレは、あいつを見た目で選んだりしてねー」
どこか落ち込んだように言う流川に、洋平はわざとはははと明るく笑った。
つと流川が地面から目を上げる。
それに、洋平は安心させるように笑って見せる。
「わかってるよ。オレも、流川が伊理穂を外見で選んでないだろうって思ってた。だけど、あいつが泣くから、念のためちゃんと確かめておきたかったんだ。……変なこと聞いて悪かったな、流川」
流川が小さく首を振る。
「……泣いてたのか」
その問いに、洋平は微かに笑む。
「安心しろ、流川。お前のせいじゃねぇよ。オレも昨日知ったんだけど、伊理穂、昔告白してきた男に、お前に告白したのは見た目がかわいいからだ、かわいい女が隣りにいることがステイタスになるんだ、と言われたことがあるらしいんだ。それが、本人の中でトラウマみたいになってるみたいなんだよな。だから、お前の態度に問題があったわけじゃないと思うぜ」
だけど、流川の表情は晴れなかった。
何かを考え込むような流川に洋平が眉を寄せると、流川が小さく呟いた。
「……水戸には、なんでも話すんだな」
「あ?」
聞き取れず洋平がさらに眉間の皺を深めると、流川が無表情で洋平をまっすぐ見つめてきた。
その眼差しにどこか揺らぐものを見つけて、洋平はいぶかしむ。
「流川?」
「オレは、昨日伊理穂と帰った。でも、不安そうな様子なんて微塵も見せなかった。――伊理穂が、ほんとうに心を開いてるのはオメーだけだ。……オメーはほんとうに、オレに伊理穂を取られたままでいいのか?」
「流川? 何言ってんだよ」
話の雲行きが怪しくなってきて、洋平はうろたえた。
流川は何を言っている? 流川は、何を言おうとしている? 伊理穂は確かに流川が好きなのに。
「伊理穂は、多分、オメーが好きだ」
「――は!?」
「だけど、オレは伊理穂を渡すつもりはねー。伊理穂にその自覚がねーのもあるけど、オメーが伊理穂を手に入れるつもりがねーんならなおさらだ。オメーに伊理穂は渡さねー」
「は、ちょ、おい、待てよ流川」
あまりのことに呆然としていた洋平だったけれど、やっと思考が追いついて流川に待ったをかけた。
伊理穂が洋平を好き? 勘違いもいいところだ。
そんなことが起こり得ないことは、洋平自身が嫌というほど知っている。
「何言ってんだよ、流川。落ち着けよ。伊理穂にとって、オレはただの幼馴染みにすぎない。それはお前だってよく知ってるだろ?」
「…………」
「おい、流川?」
返事を返さない流川に、洋平は焦ったようになってその肩を掴んだ。
もしもそんな勘違いをひきずられて、今後伊理穂と別れるようなことになっては困る。
伊理穂が泣くところなんて見たくない。
伊理穂が恋愛として好きなのは自分じゃない。流川だ。
自分に対しての伊理穂の感情は、もはや家族愛だ。
昨日のことで、洋平にはそれがさらに骨身に染みてわかった。
流川が、洋平の瞳を鋭く見返す。
「伊理穂は、いつでもオメーのことを気にしてる。オレじゃなくて、いつもオメーのことばっか考えてる。そこに、オレの入り込む余地はねー」
「流川……」
その言葉を聞いて、洋平は少しだけ安堵した。