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「楓くん、わたしのバスケをする姿が好きだって言ってた。笑顔が好きだって言ってくれた。でも、それだって見た目のことでしょう? わたしのことじゃないかもしれない。わたし自身を好きなんじゃないかもしれない。わたし、わたし……っ」
それ以上はもう言葉が胸につかえてしまって、何も言うことができなかった。
体を小さく丸めて、両手で顔を覆って咽びなく伊理穂を、洋平が優しく抱きしめてくれる。
「伊理穂、大丈夫だよ。オレは、ちゃんと伊理穂自身が好きだよ。かわいい……幼馴染みだと思ってるよ。……流川もそうだ。流川だって、お前の見た目も中身も全部含めて、ちゃんと好きになってる。あいつが、見た目だけに拘るわけないだろ? だから……そんなこと言うなよ、伊理穂」
洋平の声が苦しげに掠れた。
伊理穂はその声を聞いて、さらに胸が苦しくなる。
「よ……へ……。ごめ……んね」
(洋平も……本当はわたしが嫌いかもしれないのに……)
心を殺して無理に言わせてるのかもしれないと思うと、息も吸えなかった。
灰色世界の夢が、伊理穂の頭によみがえる。
消えて欲しいと、伊理穂から解放されたいと望む洋平。
それが洋平の本心でないと、誰が言いきれるだろうか?
嗚咽を漏らす伊理穂のからだを抱く腕に、洋平が無言で力を込める。
そのあたたかいぬくもりに、伊理穂は一縷の望みを託すようにからだを寄せた。
そうして、このぬくもりの方がウソかもしれないということを確かめることもできずに、ただ洋平の優しさにすがって自分のエゴを満たす、わがままな子供のような醜い自分を、心底嫌悪した。
翌日。洋平は学校に行くと、伊理穂の目を盗んで、流川を昼休みに屋上に呼び出した。
洋平は昼休みのひとつ前、3時間目の授業から、その屋上に体を投げ出して、雲を眺めながらのんびり過ごしていた。
もしも他の連中が屋上に来たら、追い返そうと思ったからである。
流川と二人きりで話がしたいので、他のやつが屋上にいては都合がわるい。
それもあって、花道が一緒にサボると言い出したのを洋平はやんわりと断った。
最初渋っていた花道も、伊理穂のことで流川に話したいことがあるといえば、あっさりと引き下がった。
その際に事情を聞かなかった花道に、洋平は胸のうちで感謝する。
普段の花道だったら、どういうことだと鼻息も荒く聞いてきそうなものだが、あいつも大人になったものだななんて洋平は思う。
(それとも、よっぽどオレの表情がまずかったか)
思って洋平は自嘲した。
昨日の伊理穂の話を思い出す。
自分は性格が悪くて、人に嫌われているのかもしれない。そんな風に伊理穂が思っているなんて、意外だった。
あんな良い子を絵に描いたような伊理穂の性格が悪いなんて、いったいどこからそんな発想が出たんだろう。
洋平の知る限り、誰もそんな風には思っていない。
それどころか、小学校でも中学校でも、屈託ない笑顔と裏表のない性格で、伊理穂は学校の人気者だった。
――伊理穂が、理由を尋ねた人がたまたままずかったのだ。
それだけの話だ。あんな風に思いつめるようなことではない。
なのに……。
洋平は唇を噛み締めて、自分の手の平を顔の前に掲げた。
ぐっとその手を握る。
昨日の夜。洋平の腕の中で、小さく肩を震わせて泣いていた伊理穂。
その感触が、今でも手に残っている。
「伊理穂……」
あのとき、仲の良い人から告白されたことが一度もないと言った伊理穂に、それは自分が傍にいるからだと言うことができなかった。
それ以上はもう言葉が胸につかえてしまって、何も言うことができなかった。
体を小さく丸めて、両手で顔を覆って咽びなく伊理穂を、洋平が優しく抱きしめてくれる。
「伊理穂、大丈夫だよ。オレは、ちゃんと伊理穂自身が好きだよ。かわいい……幼馴染みだと思ってるよ。……流川もそうだ。流川だって、お前の見た目も中身も全部含めて、ちゃんと好きになってる。あいつが、見た目だけに拘るわけないだろ? だから……そんなこと言うなよ、伊理穂」
洋平の声が苦しげに掠れた。
伊理穂はその声を聞いて、さらに胸が苦しくなる。
「よ……へ……。ごめ……んね」
(洋平も……本当はわたしが嫌いかもしれないのに……)
心を殺して無理に言わせてるのかもしれないと思うと、息も吸えなかった。
灰色世界の夢が、伊理穂の頭によみがえる。
消えて欲しいと、伊理穂から解放されたいと望む洋平。
それが洋平の本心でないと、誰が言いきれるだろうか?
嗚咽を漏らす伊理穂のからだを抱く腕に、洋平が無言で力を込める。
そのあたたかいぬくもりに、伊理穂は一縷の望みを託すようにからだを寄せた。
そうして、このぬくもりの方がウソかもしれないということを確かめることもできずに、ただ洋平の優しさにすがって自分のエゴを満たす、わがままな子供のような醜い自分を、心底嫌悪した。
翌日。洋平は学校に行くと、伊理穂の目を盗んで、流川を昼休みに屋上に呼び出した。
洋平は昼休みのひとつ前、3時間目の授業から、その屋上に体を投げ出して、雲を眺めながらのんびり過ごしていた。
もしも他の連中が屋上に来たら、追い返そうと思ったからである。
流川と二人きりで話がしたいので、他のやつが屋上にいては都合がわるい。
それもあって、花道が一緒にサボると言い出したのを洋平はやんわりと断った。
最初渋っていた花道も、伊理穂のことで流川に話したいことがあるといえば、あっさりと引き下がった。
その際に事情を聞かなかった花道に、洋平は胸のうちで感謝する。
普段の花道だったら、どういうことだと鼻息も荒く聞いてきそうなものだが、あいつも大人になったものだななんて洋平は思う。
(それとも、よっぽどオレの表情がまずかったか)
思って洋平は自嘲した。
昨日の伊理穂の話を思い出す。
自分は性格が悪くて、人に嫌われているのかもしれない。そんな風に伊理穂が思っているなんて、意外だった。
あんな良い子を絵に描いたような伊理穂の性格が悪いなんて、いったいどこからそんな発想が出たんだろう。
洋平の知る限り、誰もそんな風には思っていない。
それどころか、小学校でも中学校でも、屈託ない笑顔と裏表のない性格で、伊理穂は学校の人気者だった。
――伊理穂が、理由を尋ねた人がたまたままずかったのだ。
それだけの話だ。あんな風に思いつめるようなことではない。
なのに……。
洋平は唇を噛み締めて、自分の手の平を顔の前に掲げた。
ぐっとその手を握る。
昨日の夜。洋平の腕の中で、小さく肩を震わせて泣いていた伊理穂。
その感触が、今でも手に残っている。
「伊理穂……」
あのとき、仲の良い人から告白されたことが一度もないと言った伊理穂に、それは自分が傍にいるからだと言うことができなかった。