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「あの……ね、洋平。洋平は知ってると思うけど、わたし、今まで知らない人に告白されることが多かったでしょ?」
伊理穂が何を言うのかと身構えていた洋平が、うんと慎重に返事を寄越す。
伊理穂はそれを聞いて苦笑した。
瞳を閉じて思い出す。
小学校、中学校の頃。
伊理穂はなぜか、伊理穂がよく知りもしないような、学年も学校も違う生徒から告白されることが多かった。
お互いのことをよく知らないどころか、伊理穂に至ってはその時が初対面だというのに、好きだと熱心にくりかえし、付き合って欲しいと懇願される。
それまで伊理穂はただごめんなさいと断るだけだったけれど、ある時、ふと気になって告白してきた男の子に聞いてみたことがある。
わたしのどこが好きなの?
「不思議だったの。どうして、話したこともないようなわたしに、こんなに必死に好きだなんて言うのか。そう言われる理由がわからなくて、思い切って訊ねたの。そしたらね」
伊理穂の口元に自嘲が浮かぶ。
答えは簡単だった。
伊理穂の見た目が、かわいいからだという。
性格なんて二の次で、いってしまえばどうでもよかったそうだ。伊理穂の顔が自分の隣りに立つことが重要で、ある種のステイタスになるんだと、彼はそう答えた。
「すごくね、びっくりしたの。驚いた。この人は……ううん、今までわたしに告白してきた人たちは、『わたし』を好きなんじゃなくて、『わたしを象るもの』が好きなんだって思った。それと同時にね、気付いたことがあったの」
ずきずきと軋む胸。
その痛みに負けそうになりながら、伊理穂は言葉を続ける。
「わたし、仲の良い人から告白されたことなんて、そういえば今まで一度もなかったなあって」
そこで気付いた。
その理由。自分がなぜ、自分のことをよく知る人たちから告白されたことがないのか。
自分に告白してくる人が、どうしてみんな決まって、伊理穂のことをよく知らないひとたちだけなのか。
こっちの答えも簡単だった。
伊理穂そのものに、まったく好かれる部分がないからだ。見目麗しい顔を持ってなお補いきれないほどの落ち度が、きっと自分の性格にあるから。
だから、近しい人は誰も自分に言い寄っては来ないのだ。
「それに気付いたときにね、愕然としたの」
「伊理穂」
それまで黙って伊理穂の話を聞いていた洋平が、口を挟む。
伊理穂はそれを聞こえない振りして、しゃべり続けた。
「わたし、よっぽどひどい性格をしてるんだね。だから、わたしのこと知ってる人は、誰もわたしを好きにならない」
「伊理穂、違う。お前は良い子だよ。お前に近しいやつがお前に告白しないのは……」
そこで洋平が不自然に言葉を詰まらせた。
きっと、洋平の中にも、それを否定するだけの要素が見つからなかったんだろう。
伊理穂は思う。
ああ、やっぱり洋平もわたしのことが嫌いなのかもしれない。
グッと胸に込み上げてきた熱いものをなんとか飲み下しながら、伊理穂は弱々しい微笑を浮かべる。
「いいよ、洋平。わかってる。……洋平は、優しいから、だから……」
(たとえ、わたしのことが嫌いだったとしても、こうして傍にいて、慰めて、言葉をかけてくれる……)
伊理穂はそこまで考えたところで、これまで必死で押し返していた涙をもうどうすることもできなくなった。
じんわりと視界が揺れる。
きつく瞳を閉じると、頬に冷たい感触が伝った。
胸が苦しい。
千切れてしまいそうだ。
「ねえ、洋平。……楓くんも、そうだったらどうしよう」
「伊理穂」
伊理穂が何を言うのかと身構えていた洋平が、うんと慎重に返事を寄越す。
伊理穂はそれを聞いて苦笑した。
瞳を閉じて思い出す。
小学校、中学校の頃。
伊理穂はなぜか、伊理穂がよく知りもしないような、学年も学校も違う生徒から告白されることが多かった。
お互いのことをよく知らないどころか、伊理穂に至ってはその時が初対面だというのに、好きだと熱心にくりかえし、付き合って欲しいと懇願される。
それまで伊理穂はただごめんなさいと断るだけだったけれど、ある時、ふと気になって告白してきた男の子に聞いてみたことがある。
わたしのどこが好きなの?
「不思議だったの。どうして、話したこともないようなわたしに、こんなに必死に好きだなんて言うのか。そう言われる理由がわからなくて、思い切って訊ねたの。そしたらね」
伊理穂の口元に自嘲が浮かぶ。
答えは簡単だった。
伊理穂の見た目が、かわいいからだという。
性格なんて二の次で、いってしまえばどうでもよかったそうだ。伊理穂の顔が自分の隣りに立つことが重要で、ある種のステイタスになるんだと、彼はそう答えた。
「すごくね、びっくりしたの。驚いた。この人は……ううん、今までわたしに告白してきた人たちは、『わたし』を好きなんじゃなくて、『わたしを象るもの』が好きなんだって思った。それと同時にね、気付いたことがあったの」
ずきずきと軋む胸。
その痛みに負けそうになりながら、伊理穂は言葉を続ける。
「わたし、仲の良い人から告白されたことなんて、そういえば今まで一度もなかったなあって」
そこで気付いた。
その理由。自分がなぜ、自分のことをよく知る人たちから告白されたことがないのか。
自分に告白してくる人が、どうしてみんな決まって、伊理穂のことをよく知らないひとたちだけなのか。
こっちの答えも簡単だった。
伊理穂そのものに、まったく好かれる部分がないからだ。見目麗しい顔を持ってなお補いきれないほどの落ち度が、きっと自分の性格にあるから。
だから、近しい人は誰も自分に言い寄っては来ないのだ。
「それに気付いたときにね、愕然としたの」
「伊理穂」
それまで黙って伊理穂の話を聞いていた洋平が、口を挟む。
伊理穂はそれを聞こえない振りして、しゃべり続けた。
「わたし、よっぽどひどい性格をしてるんだね。だから、わたしのこと知ってる人は、誰もわたしを好きにならない」
「伊理穂、違う。お前は良い子だよ。お前に近しいやつがお前に告白しないのは……」
そこで洋平が不自然に言葉を詰まらせた。
きっと、洋平の中にも、それを否定するだけの要素が見つからなかったんだろう。
伊理穂は思う。
ああ、やっぱり洋平もわたしのことが嫌いなのかもしれない。
グッと胸に込み上げてきた熱いものをなんとか飲み下しながら、伊理穂は弱々しい微笑を浮かべる。
「いいよ、洋平。わかってる。……洋平は、優しいから、だから……」
(たとえ、わたしのことが嫌いだったとしても、こうして傍にいて、慰めて、言葉をかけてくれる……)
伊理穂はそこまで考えたところで、これまで必死で押し返していた涙をもうどうすることもできなくなった。
じんわりと視界が揺れる。
きつく瞳を閉じると、頬に冷たい感触が伝った。
胸が苦しい。
千切れてしまいそうだ。
「ねえ、洋平。……楓くんも、そうだったらどうしよう」
「伊理穂」