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離れていくぬくもりに、伊理穂は泣き出しそうなほどの不安に襲われて、洋平の顔を見る。
「洋平? 帰っちゃうの?」
「はは、帰らねぇよ。だからそんな顔すんな、伊理穂。今日は特別に一緒に寝てやるから」
一緒に寝るのは流川と付き合うまで。そのリミットは昨日超えていた。それゆえの特別だろう。
洋平は立ち上がると、ベッドの上に座っていた伊理穂の肩を優しく押して、そこに横たえさせた。
夢で洋平に地面へ沈めれた光景が頭をよぎって、一瞬伊理穂の心が恐怖に震えたが、優しく微笑む洋平の表情に、伊理穂はホッと息をつく。
洋平は伊理穂の首の辺りまで布団をかけると、自分もそこに体を滑り込ませた。
いつもはそのまま背を向けて眠る洋平が、今日は伊理穂の方を向いて転がった。
そのまま洋平側にあった伊理穂の手を、その大きな手で優しく包み込んでくれる。
手から伝わってくる洋平のぬくもりに、伊理穂の冷えた心が少しずつあたたかさを取り戻していく。
「洋平」
「ん?」
「いいの?」
一緒に寝ても。
言外にその言葉を含ませて言えば、洋平が眉を下げて笑った。
「はは。いいのもなにも、お前『例の夢』見た後、いつもひとりじゃ怖くて寝れねぇだろ?」
「うん」
「だから、今だけは流川の代わりをしてやるよ。――お前を寝不足で学校に行かせたら、おふくろも怖ぇしな」
「弥生さん……。そっか、そうだよね。……ごめんね、洋平。迷惑かけて」
「いまさらだろ」
笑う洋平の言葉が、小さな棘となって伊理穂の胸に刺さった。
いまさら。
(やっぱり、迷惑なんだ……)
ほんとうは洋平に嫌われているのかもしれない。伊理穂の心の中にある、その感情を閉じ込めていた箱の蓋が、ぴしりと音を立ててひび割れた。
その僅かな隙間から出た感情が、ゆらりと立ち昇る薄煙のように、ゆっくりと伊理穂の心の中に広がっていく。
「ねえ、洋平。ひとつ、聞いていい?」
「ん?」
「どうして楓くんと付き合ったら、もう一緒には寝れないの?」
「楓くん?」
洋平が眉を寄せて呟いた。
伊理穂はそれにぎこちなく口角を持ち上げる。
「流川くんだよ。洋平や花道みたいに、名前で呼んで欲しいって」
「ああ、そういやあいつ楓って名前だったか。へえ。流川がそんなことを」
「うん。ねえ、そんなことより洋平、どうして?」
「どうしてって……」
洋平が困ったように眉尻を下げた。
「自分の彼女が他の男と一緒のベッドで寝てるなんて、男は嫌なもんなんだよ。だから、これはオレなりのけじめなの。流川にたいしてな」
「ふうん」
ほんとうにそれが洋平の本音なのだろうか。
ほんとうは、自分と一緒にいるのがいい加減限界に近づいているからではないだろうか?
洋平の表情から少しでもなにか読み取ろうと伊理穂がじっと見つめていると、洋平が悪戯っぽく笑って唇が触れるほど近くにぐいと顔を寄せてきた。
「!」
突然のことにからだを硬直させる伊理穂に、洋平は意地悪く片方の口角を持ち上げて笑う。
「それに、寝ぼけたオレがお前を襲ったら大変だろ?」
「え!?」
言いながら、洋平が伊理穂の唇をそっと人差し指で撫でてきた。
「洋平? 帰っちゃうの?」
「はは、帰らねぇよ。だからそんな顔すんな、伊理穂。今日は特別に一緒に寝てやるから」
一緒に寝るのは流川と付き合うまで。そのリミットは昨日超えていた。それゆえの特別だろう。
洋平は立ち上がると、ベッドの上に座っていた伊理穂の肩を優しく押して、そこに横たえさせた。
夢で洋平に地面へ沈めれた光景が頭をよぎって、一瞬伊理穂の心が恐怖に震えたが、優しく微笑む洋平の表情に、伊理穂はホッと息をつく。
洋平は伊理穂の首の辺りまで布団をかけると、自分もそこに体を滑り込ませた。
いつもはそのまま背を向けて眠る洋平が、今日は伊理穂の方を向いて転がった。
そのまま洋平側にあった伊理穂の手を、その大きな手で優しく包み込んでくれる。
手から伝わってくる洋平のぬくもりに、伊理穂の冷えた心が少しずつあたたかさを取り戻していく。
「洋平」
「ん?」
「いいの?」
一緒に寝ても。
言外にその言葉を含ませて言えば、洋平が眉を下げて笑った。
「はは。いいのもなにも、お前『例の夢』見た後、いつもひとりじゃ怖くて寝れねぇだろ?」
「うん」
「だから、今だけは流川の代わりをしてやるよ。――お前を寝不足で学校に行かせたら、おふくろも怖ぇしな」
「弥生さん……。そっか、そうだよね。……ごめんね、洋平。迷惑かけて」
「いまさらだろ」
笑う洋平の言葉が、小さな棘となって伊理穂の胸に刺さった。
いまさら。
(やっぱり、迷惑なんだ……)
ほんとうは洋平に嫌われているのかもしれない。伊理穂の心の中にある、その感情を閉じ込めていた箱の蓋が、ぴしりと音を立ててひび割れた。
その僅かな隙間から出た感情が、ゆらりと立ち昇る薄煙のように、ゆっくりと伊理穂の心の中に広がっていく。
「ねえ、洋平。ひとつ、聞いていい?」
「ん?」
「どうして楓くんと付き合ったら、もう一緒には寝れないの?」
「楓くん?」
洋平が眉を寄せて呟いた。
伊理穂はそれにぎこちなく口角を持ち上げる。
「流川くんだよ。洋平や花道みたいに、名前で呼んで欲しいって」
「ああ、そういやあいつ楓って名前だったか。へえ。流川がそんなことを」
「うん。ねえ、そんなことより洋平、どうして?」
「どうしてって……」
洋平が困ったように眉尻を下げた。
「自分の彼女が他の男と一緒のベッドで寝てるなんて、男は嫌なもんなんだよ。だから、これはオレなりのけじめなの。流川にたいしてな」
「ふうん」
ほんとうにそれが洋平の本音なのだろうか。
ほんとうは、自分と一緒にいるのがいい加減限界に近づいているからではないだろうか?
洋平の表情から少しでもなにか読み取ろうと伊理穂がじっと見つめていると、洋平が悪戯っぽく笑って唇が触れるほど近くにぐいと顔を寄せてきた。
「!」
突然のことにからだを硬直させる伊理穂に、洋平は意地悪く片方の口角を持ち上げて笑う。
「それに、寝ぼけたオレがお前を襲ったら大変だろ?」
「え!?」
言いながら、洋平が伊理穂の唇をそっと人差し指で撫でてきた。