13
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「洋平、もう大丈夫。わたしがそばにいるよ。わたしが洋平の苦しみを全部受け止めるから。だからひとりで泣かないで。ねえ、洋平。どうしたの? なにがあったの?」
「……んだ」
「え?」
声が小さくて聞き取れない。
伊理穂は、うずくまる洋平の顔に、自分の耳を近づける。
「なに? 洋平」
「離れて……くれないんだ……。オレは、ずっと、ずっと、ガマンしてるのに……。なのに……なのに……」
「え?」
「もう、うんざりなんだ。嫌いなのに、もう二度と顔も見たくないのに、なのに無理して笑って、優しくして、オレは、後何年間、この生き地獄に耐えればいい……!」
「よう……へい?」
呻くように言う洋平の言葉。
誰の事を言っているんだろう。
伊理穂の心が、硬く凍りついていく。
さっきよりもひどい恐怖が、伊理穂を包み込んだ。
伊理穂は震える手を、俯いて表情の見えない洋平の頭に伸ばす。
それが洋平に触れたとき。
ふいに世界が反転した。
背中には頼りない地面の感触。目の前に、苦渋に歪む洋平の顔。
力強く掴まれた伊理穂の肩。
洋平がそれを、地面に強く押し付ける。
ずぶりと、伊理穂のからだが沈んだ。
このままでは伊理穂は地面に呑み込まれてしまう。
「洋平……!?」
信じられない気持ちで、伊理穂は洋平の名前を呼んだ。
涙に濡れた洋平の瞳。その色を激しい嫌悪に染めて、洋平が眼下の伊理穂を苦しげに見やる。
弱まる事のない、洋平の腕の力。
瞳から涙を零して、苦痛に表情を歪ませて。救いを求めるように、洋平が言う。
「もう、勘弁してくれ、解放してくれ……! もう、自由にしてくれ……っ! 頼む、伊理穂……っ! オレの、目の前から消えてくれっ!!」
その言葉を言い終わると同時に、洋平が渾身の力を込めて伊理穂の肩を押した。
勢いを増してずぶずぶと埋もれていく伊理穂のからだ。もう止まらない。底なしの闇に、吸い込まれていく。
「よう……へ……」
溢れでる涙でなのか、埋もれていく地面に目の前を覆われてなのか、伊理穂の視界が白んだ。
その煙る視界の先。最後に見えた洋平の顔が、伊理穂から解放された喜びに微笑んでいるような気がした――。
「――っ!!」
伊理穂は弾かれたようにベッドから体を起こした。
まるで体中が心臓にでもなったように、ばくばくと激しく全身が脈打っている。
額に汗が噴き出して、背中を冷たい汗が流れ落ちた。
からだが大きく震えている。
伊理穂はそんな自分自身を落ち着かせるように、からだに腕をまわして、静かにまわりを見渡した。
浅く呼吸を繰り返しながら、自分の状況を確認する。
電球色の心許ない明かりの下に微かに浮かび上がる、見慣れた伊理穂の勉強机、ベッド下にある小テーブル、お気に入りの本がぎっしりつまった本棚。
間違いなく、ここは自分の部屋だ。あの灰色世界ではない。
現実の、自分の、部屋。
伊理穂はベッドからそろりと足を出すと、恐る恐る床に足をついた。
確かな感触が足の裏から返ってきて、ホッと息をつく。
よかった、あれは夢だ。
「……んだ」
「え?」
声が小さくて聞き取れない。
伊理穂は、うずくまる洋平の顔に、自分の耳を近づける。
「なに? 洋平」
「離れて……くれないんだ……。オレは、ずっと、ずっと、ガマンしてるのに……。なのに……なのに……」
「え?」
「もう、うんざりなんだ。嫌いなのに、もう二度と顔も見たくないのに、なのに無理して笑って、優しくして、オレは、後何年間、この生き地獄に耐えればいい……!」
「よう……へい?」
呻くように言う洋平の言葉。
誰の事を言っているんだろう。
伊理穂の心が、硬く凍りついていく。
さっきよりもひどい恐怖が、伊理穂を包み込んだ。
伊理穂は震える手を、俯いて表情の見えない洋平の頭に伸ばす。
それが洋平に触れたとき。
ふいに世界が反転した。
背中には頼りない地面の感触。目の前に、苦渋に歪む洋平の顔。
力強く掴まれた伊理穂の肩。
洋平がそれを、地面に強く押し付ける。
ずぶりと、伊理穂のからだが沈んだ。
このままでは伊理穂は地面に呑み込まれてしまう。
「洋平……!?」
信じられない気持ちで、伊理穂は洋平の名前を呼んだ。
涙に濡れた洋平の瞳。その色を激しい嫌悪に染めて、洋平が眼下の伊理穂を苦しげに見やる。
弱まる事のない、洋平の腕の力。
瞳から涙を零して、苦痛に表情を歪ませて。救いを求めるように、洋平が言う。
「もう、勘弁してくれ、解放してくれ……! もう、自由にしてくれ……っ! 頼む、伊理穂……っ! オレの、目の前から消えてくれっ!!」
その言葉を言い終わると同時に、洋平が渾身の力を込めて伊理穂の肩を押した。
勢いを増してずぶずぶと埋もれていく伊理穂のからだ。もう止まらない。底なしの闇に、吸い込まれていく。
「よう……へ……」
溢れでる涙でなのか、埋もれていく地面に目の前を覆われてなのか、伊理穂の視界が白んだ。
その煙る視界の先。最後に見えた洋平の顔が、伊理穂から解放された喜びに微笑んでいるような気がした――。
「――っ!!」
伊理穂は弾かれたようにベッドから体を起こした。
まるで体中が心臓にでもなったように、ばくばくと激しく全身が脈打っている。
額に汗が噴き出して、背中を冷たい汗が流れ落ちた。
からだが大きく震えている。
伊理穂はそんな自分自身を落ち着かせるように、からだに腕をまわして、静かにまわりを見渡した。
浅く呼吸を繰り返しながら、自分の状況を確認する。
電球色の心許ない明かりの下に微かに浮かび上がる、見慣れた伊理穂の勉強机、ベッド下にある小テーブル、お気に入りの本がぎっしりつまった本棚。
間違いなく、ここは自分の部屋だ。あの灰色世界ではない。
現実の、自分の、部屋。
伊理穂はベッドからそろりと足を出すと、恐る恐る床に足をついた。
確かな感触が足の裏から返ってきて、ホッと息をつく。
よかった、あれは夢だ。