12
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
拗ねた顔だろうか。
そう訊きかえすと、流川が小さく首を振った。
「楽しそうにバスケしてる顔。伊理穂、スゲーいい顔してる」
「!」
瞬間、伊理穂の心臓が大きく跳ねた。
顔に熱が集まっていく。
「る、流川くん……」
「楓」
「え?」
「名前で呼べ」
「え、で、でも!」
戸惑うようにおどおど視線をさまよわせると、流川が拗ねたように唇を突き出した。
「水戸も、桜木も、伊理穂は名前で呼ぶ。なのに、彼氏のオレが名字なのはおもしろくねー」
「! そ、そっか、そう……だよね」
言うと、流川が無言で頷いた。
無表情の顔で、けれど期待に瞳を輝かせて伊理穂を見つめてくる。
長い睫毛に縁取られた流川の切れ長の瞳にまっすぐ見つめられて、伊理穂の心臓が壊れそうなくらい速度を速めた。
「か、楓くん……?」
「ん」
どきどきしながら名前を呼ぶと、目の前で流川がふわりと微笑んだ。
ばくんと、心臓が口から飛び出しそうなくらい大きく跳ねる。
「――伊理穂。水戸はいーのか?」
流川から真っ赤な顔を隠すように両手で顔を覆って俯いていると、頭上から戸惑うような流川の声が降って来た。
伊理穂は顔をあげて流川に言う。
「洋平? 洋平は一緒にここに来てもバスケしないし、大丈夫だよ」
「……いや、そういうことじゃねー」
「?」
言いにくそうに顔を俯かせる流川に、伊理穂は小さく首を傾げた。
こんな流川を見るのは初めてだ。
いつも、流川はマイペースで自分の行動に迷いなんてないのに。
「流川くん?」
いぶかしむ様に声を掛けると、流川がハッと我に返ったように顔を持ち上げた。
伊理穂に向けて、ふるふると首を振る。
「いや、なんでもねー。……おめーがわかんねーならいい」
「?」
流川が、どこか思いつめたような表情で言う。
その表情に、伊理穂はいよいよ眉を寄せた。
ほんとうに、どうしたんだろう。
「流川くん?」
「伊理穂」
「!」
近づいてきた流川に腕を持ち上げられて立たされたと思ったら、ふいに抱きすくめられた。
伊理穂の体が、驚いて硬直する。
「る、流川くん……!?」
「楓」
「あ、ご、ごめん。楓くん、どうしたの?」
問いかけると、一段と流川の腕の力が強くなった。
からだに回された逞しい腕の感触に、伊理穂の心臓が再び早鐘を打つ。
と。