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「伊理穂」
「ん?」
スポーツ公園脇のコート。そこのベンチで流川の自主練習をのんびり眺めていた伊理穂は、ふいに流川に手招きされて立ち上がった。
流川の傍まで小走りに駆け寄っていく。
「流川くん、どうしたの?」
「1 on 1の相手しろ」
無表情に放たれた言葉に、伊理穂は驚いて目を丸くする。
「え!? 無理だよ、流川くんの相手なんて!」
一体なに考えてるんだろう。
流川は県内でも注目のルーキーだし、伊理穂はバスケをやめてからもうすぐ一年経つ。それになにより伊理穂と流川は男子と女子だ。力の差は歴然である。
無理無理と首を大きく横に振る伊理穂に、流川は不敵に微笑む。
「ダイジョーブ。手加減するから」
「手加減!? 手加減したら流川くんの練習にならないじゃない」
「――ホラ」
「わっ」
まだ言い募ろうとしていた伊理穂に向かって、流川がバスケットボールを投げた。
伊理穂はそれを反射的にキャッチしてしまい、むーと小さく唸って流川を見る。
当の流川は、拒否されたことなどなかったかのように、腰を低く落としてディフェンスの体勢を取っている。
「…………」
伊理穂は観念したように長く息を吐き出すと、手の中で軽くボールをバウンドさせた。
久々の感触に、伊理穂の胸も次第にわくわくと弾んでいく。
「よーし、じゃあ1 on 1、受けて立つよ。そのかわり、すこしは手加減してね?」
「たりめーだ。来い」
流川のその言葉を合図に、伊理穂は攻撃を開始した。
それからしばらく、二人はバスケを楽しんだ。
久々のバスケで最初はぎこちなかった伊理穂の動きも、最後の方ではかなり現役時代に近い動きを取り戻していた。
最後の攻撃回、流川のオフェンス。
伊理穂は腰を低く落として、ボールをドリブルさせる流川の瞳をじっと見つめた。
相手のドリブルの音に耳を澄ませて、相手の呼吸に自分の呼吸を合わせる。
流川が浅く息を吸い込んだ。
その一瞬の動きを見逃さず、伊理穂は自分も浅く息を吸い込んで、素早く流川の視線の動いた右へと体を滑らせた。
進路をふさがれた流川が驚いたように小さく目を見開く。
(どんぴしゃ)
思って、流川の手元からボールをスティールしようとしたそのとき。
ボールはワンバウンドで流川の右手から離れ左手へと移動した。そして足の下を通すドリブルで再び左手から右手へと戻される。
重心移動をそのまま利用して、流川は伊理穂の左脇をドリブルで素早く通り過ぎていった。
途端に伊理穂の視界がひらけ、背後でボールがネットをくぐる音が聞こえてくる。
伊理穂が振り返ると、レイアップシュートを決めた流川が転がったボールを手に取ったところだった。
伊理穂はどっと疲れを感じて、ふい~と息を吐きながらその場にへたりこむ。
「はあー、やっぱりさすが流川くんだよね。もう、最後絶対止めたと思ったのに」
「進路塞がれたのはオドロイた」
「最後、本気出したでしょ」
「やっぱり最後は勝たねーとな」
「むう、負けず嫌い」
唇を尖らせて言うと、流川がククッと喉の奥で笑った。
しゃがみ込んで肩で息をする伊理穂の頭を、そっと撫でる。
「ワルイ。――でも、伊理穂のその顔が見たかった」
「え?」
「ん?」
スポーツ公園脇のコート。そこのベンチで流川の自主練習をのんびり眺めていた伊理穂は、ふいに流川に手招きされて立ち上がった。
流川の傍まで小走りに駆け寄っていく。
「流川くん、どうしたの?」
「1 on 1の相手しろ」
無表情に放たれた言葉に、伊理穂は驚いて目を丸くする。
「え!? 無理だよ、流川くんの相手なんて!」
一体なに考えてるんだろう。
流川は県内でも注目のルーキーだし、伊理穂はバスケをやめてからもうすぐ一年経つ。それになにより伊理穂と流川は男子と女子だ。力の差は歴然である。
無理無理と首を大きく横に振る伊理穂に、流川は不敵に微笑む。
「ダイジョーブ。手加減するから」
「手加減!? 手加減したら流川くんの練習にならないじゃない」
「――ホラ」
「わっ」
まだ言い募ろうとしていた伊理穂に向かって、流川がバスケットボールを投げた。
伊理穂はそれを反射的にキャッチしてしまい、むーと小さく唸って流川を見る。
当の流川は、拒否されたことなどなかったかのように、腰を低く落としてディフェンスの体勢を取っている。
「…………」
伊理穂は観念したように長く息を吐き出すと、手の中で軽くボールをバウンドさせた。
久々の感触に、伊理穂の胸も次第にわくわくと弾んでいく。
「よーし、じゃあ1 on 1、受けて立つよ。そのかわり、すこしは手加減してね?」
「たりめーだ。来い」
流川のその言葉を合図に、伊理穂は攻撃を開始した。
それからしばらく、二人はバスケを楽しんだ。
久々のバスケで最初はぎこちなかった伊理穂の動きも、最後の方ではかなり現役時代に近い動きを取り戻していた。
最後の攻撃回、流川のオフェンス。
伊理穂は腰を低く落として、ボールをドリブルさせる流川の瞳をじっと見つめた。
相手のドリブルの音に耳を澄ませて、相手の呼吸に自分の呼吸を合わせる。
流川が浅く息を吸い込んだ。
その一瞬の動きを見逃さず、伊理穂は自分も浅く息を吸い込んで、素早く流川の視線の動いた右へと体を滑らせた。
進路をふさがれた流川が驚いたように小さく目を見開く。
(どんぴしゃ)
思って、流川の手元からボールをスティールしようとしたそのとき。
ボールはワンバウンドで流川の右手から離れ左手へと移動した。そして足の下を通すドリブルで再び左手から右手へと戻される。
重心移動をそのまま利用して、流川は伊理穂の左脇をドリブルで素早く通り過ぎていった。
途端に伊理穂の視界がひらけ、背後でボールがネットをくぐる音が聞こえてくる。
伊理穂が振り返ると、レイアップシュートを決めた流川が転がったボールを手に取ったところだった。
伊理穂はどっと疲れを感じて、ふい~と息を吐きながらその場にへたりこむ。
「はあー、やっぱりさすが流川くんだよね。もう、最後絶対止めたと思ったのに」
「進路塞がれたのはオドロイた」
「最後、本気出したでしょ」
「やっぱり最後は勝たねーとな」
「むう、負けず嫌い」
唇を尖らせて言うと、流川がククッと喉の奥で笑った。
しゃがみ込んで肩で息をする伊理穂の頭を、そっと撫でる。
「ワルイ。――でも、伊理穂のその顔が見たかった」
「え?」