11
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「流川くん、わたしを全国に連れて行ってくれるんだもんね!」
「ああ」
「ふふ。なんか、有名なあの作品みたいだよね。お前を甲子園に連れて行く! みたいな?」
「?」
なんのことを言っているのかわからなくて、流川は首を傾げた。
それを見て伊理穂があれ? と目を見開く。
そんな表情もかわいくて、流川は思わず瞳を細めた。
伊理穂は熱心に有名な作品とやらを説明してくれているけれど、流川の耳にはひとつも入ってこなかった。
目の前の伊理穂の、くるくると変わる表情。
やわらかそうな栗色の髪。
それと同じ色をした澄んだ瞳。
薄く色づいた頬に、紅など差さなくてもほどよく赤みを帯びた、ふくよかな唇。
そのどれもが、流川を狂わせる。
ふいに、伊理穂が瞳を伏せた。
長い睫毛の影が、頬に落ちる。
どこか幻想的なその姿に、流川の心臓が早鐘を打った。
「あのね、流川くん」
伊理穂が少しだけ声を緊張に震わせて言う。
「?」
「あの時。流川くんにそんな風に言ってもらえて、すっごく嬉しかったんだよ。……ほんとうに、夢みたいだった」
「……伊理穂」
伊理穂が、薄く頬を染めて、どこか熱を帯びたような瞳で見上げてくる。
流川の心臓が、激しく脈打った。
ばくばくと勢いよく全身を流れる血液と一緒に、狂おしいほどの衝動が体中を駆け巡る。
「――っ!? 流川くん……っ!?」
気付いたときには、流川は伊理穂を抱きしめていた。
引いていた自転車が、がしゃんと音を立てて倒れる。
「伊理穂……」
流川の鼻先にある伊理穂の頭からふわりと香る、甘い匂い。
手の平に触れる、柔らかなからだの感触。
折れそうなほど、細い腰。
全てが愛しくてたまらない。
「る、流川くん……? ど、どうしたの……?」
焦って上ずった伊理穂の声。
その声を聞くと同時に、流川の脳裏に洋平の顔が浮かんで、流川は伊理穂のからだに回した腕の力を強くした。
渡したくない。誰にも。
絶対に。
「……好きだ」
「――!」
耳元で、伊理穂が息を吸い込んだ音が聞こえる。
驚いてみじろぎする伊理穂を逃がすまいと、流川は伊理穂の肩に顔を埋める。
伊理穂の甘い匂いがさらに近く鼻腔をくすぐって、流川の心臓を激しく脈打たせる。
「好きだ、伊理穂。ずっと……おめーだけを見てた」
「る、流川くん……」
伊理穂が何か言おうと口を開く気配を感じて、流川は小さく首を振る。
「返事は、まだいい」
「え?」
「明日の翔陽戦。そのあとに聞かせてくれ」
「流川くん……」
伊理穂が戸惑うような声をあげる。
その声音に、流川の胸がぎゅっと締め付けられた。
手に入れたい。どうしても。
こちらを向かせたい。
今なら、うまくいく。
だから。
「もし、お前がオレのことを好きじゃなかったとしても、明日の試合でオレを好きにさせてやる。だから明日はオレだけ見てろ。いいな?」
「う、うん。わかった……!」
流川はその返事を聞くと、ゆっくりと伊理穂を体から離した。
伊理穂の潤んだ栗色の瞳を見つめて、そっと囁く。
「覚悟してろ。明日の試合も勝って、おめーも絶対手に入れる」
「う、うん……!」
暗がりでもわかるほど顔を赤く染めて勢いよく伊理穂が頷いた。
流川は満足そうにそれを眺めると、倒れた自転車を起こして、強い決意を胸に再び歩き始めた。
(ぜってー、水戸には渡さねー)
「ああ」
「ふふ。なんか、有名なあの作品みたいだよね。お前を甲子園に連れて行く! みたいな?」
「?」
なんのことを言っているのかわからなくて、流川は首を傾げた。
それを見て伊理穂があれ? と目を見開く。
そんな表情もかわいくて、流川は思わず瞳を細めた。
伊理穂は熱心に有名な作品とやらを説明してくれているけれど、流川の耳にはひとつも入ってこなかった。
目の前の伊理穂の、くるくると変わる表情。
やわらかそうな栗色の髪。
それと同じ色をした澄んだ瞳。
薄く色づいた頬に、紅など差さなくてもほどよく赤みを帯びた、ふくよかな唇。
そのどれもが、流川を狂わせる。
ふいに、伊理穂が瞳を伏せた。
長い睫毛の影が、頬に落ちる。
どこか幻想的なその姿に、流川の心臓が早鐘を打った。
「あのね、流川くん」
伊理穂が少しだけ声を緊張に震わせて言う。
「?」
「あの時。流川くんにそんな風に言ってもらえて、すっごく嬉しかったんだよ。……ほんとうに、夢みたいだった」
「……伊理穂」
伊理穂が、薄く頬を染めて、どこか熱を帯びたような瞳で見上げてくる。
流川の心臓が、激しく脈打った。
ばくばくと勢いよく全身を流れる血液と一緒に、狂おしいほどの衝動が体中を駆け巡る。
「――っ!? 流川くん……っ!?」
気付いたときには、流川は伊理穂を抱きしめていた。
引いていた自転車が、がしゃんと音を立てて倒れる。
「伊理穂……」
流川の鼻先にある伊理穂の頭からふわりと香る、甘い匂い。
手の平に触れる、柔らかなからだの感触。
折れそうなほど、細い腰。
全てが愛しくてたまらない。
「る、流川くん……? ど、どうしたの……?」
焦って上ずった伊理穂の声。
その声を聞くと同時に、流川の脳裏に洋平の顔が浮かんで、流川は伊理穂のからだに回した腕の力を強くした。
渡したくない。誰にも。
絶対に。
「……好きだ」
「――!」
耳元で、伊理穂が息を吸い込んだ音が聞こえる。
驚いてみじろぎする伊理穂を逃がすまいと、流川は伊理穂の肩に顔を埋める。
伊理穂の甘い匂いがさらに近く鼻腔をくすぐって、流川の心臓を激しく脈打たせる。
「好きだ、伊理穂。ずっと……おめーだけを見てた」
「る、流川くん……」
伊理穂が何か言おうと口を開く気配を感じて、流川は小さく首を振る。
「返事は、まだいい」
「え?」
「明日の翔陽戦。そのあとに聞かせてくれ」
「流川くん……」
伊理穂が戸惑うような声をあげる。
その声音に、流川の胸がぎゅっと締め付けられた。
手に入れたい。どうしても。
こちらを向かせたい。
今なら、うまくいく。
だから。
「もし、お前がオレのことを好きじゃなかったとしても、明日の試合でオレを好きにさせてやる。だから明日はオレだけ見てろ。いいな?」
「う、うん。わかった……!」
流川はその返事を聞くと、ゆっくりと伊理穂を体から離した。
伊理穂の潤んだ栗色の瞳を見つめて、そっと囁く。
「覚悟してろ。明日の試合も勝って、おめーも絶対手に入れる」
「う、うん……!」
暗がりでもわかるほど顔を赤く染めて勢いよく伊理穂が頷いた。
流川は満足そうにそれを眺めると、倒れた自転車を起こして、強い決意を胸に再び歩き始めた。
(ぜってー、水戸には渡さねー)