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しばらくすると、キャプテンの赤木が大きく手を叩いた。
それに気付いた部員たちがぱらぱらと赤木のもとへと集まっていく。
洋平の視線の先で、伊理穂と花道もそちらへと走っていった。
ぼんやりとそれを眺めていると、解散の合図とともに伊理穂がこちらへ走ってくる。
「洋平っ! 終わったよー!」
「おう。お疲れサン」
伊理穂の頭を撫でてやると、洋平は後ろに続いてきた花道にも目を向けた。
「花道もお疲れ。どうだ? 調子は」
「伊理穂が厳しい……」
花道のその言葉に、伊理穂がムッと唇を尖らせた。
腰に両手を当てて、花道に抗議する。
「あ、なによう! 花道がヘタクソなんだってば!」
「な!? この天才に向かってなんという口の利き方を! いくら伊理穂でも許せん!」
「許してもらわなくって結構ですよーっだ! べろべろばー」
伊理穂は両頬に広げた手をひらひらさせながら、花道にベーっと舌をつきだした。
それを見た花道が眉を凶悪に吊り上げる。
「ふんぬー! 伊理穂―!」
「きゃー、洋平助けてーっ!!」
伊理穂は両手を広げて襲い掛かってきた花道をひょいとかわすと、素早く洋平の後ろへとまわりこんだ。
「おっと」
洋平は首をめぐらせて伊理穂を呆れたように見やると、前を向いて花道を落ち着かせるように両手を突き出す。
「まあまあ、花道。そう怒るなよ」
「止めるな洋平!」
「いいから落ち着けって。花道も、伊理穂の言うこと聞いてちゃんとやってれば、さらに天才に近づけるんじゃないか? なあ、伊理穂?」
洋平の言葉に、伊理穂はうんうんと頷いた。
洋平の背中越しに伊理穂がひょこっと顔を覗かせて言う。
「そう、その通り。花道、スジはすっごくいいよ! だから努力と忍耐! わかる?」
「ぬ、努力と忍耐……?」
「そう。それさえあれば、花道は向かうところ敵なしだよ! 目指せ湘南の星!」
言いながら、伊理穂がびしっと遠くの空を指差した。
「おお、湘南の星……!」
花道もその隣りに並んで、伊理穂の指の先を見つめて瞳を輝かせる。
「はは、相変わらず乗せられやすいやつだな」
さすが単純王だ。さっきまで怒っていたくせにもうすっかりその気である。
洋平は喉の奥で笑いをかみ殺しながら、体育館の時計に視線を移した。
そろそろ移動しないと朝のショートホームルームが始まる時間だ。
まだ遠くの星を眺めてきらきらしている二人に洋平が声をかけようとしたとき、
「月瀬」
新たな声が割り込んだ。
振り返ると流川だった。いつものポーカーフェイスで、洋平や花道には目もくれず、伊理穂だけをじっと見つめて立っている。
「あっ、流川くん!」
伊理穂が流川に駆け寄っていく。
洋平はそれをなんとなくすっきりとしない気持ちで眺めた。
別に自分と流川は友人というわけではない。だから挨拶なんかする必要もない。だけど。