わたしの彼氏はチンパンジー
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
これ以上泣いたら枯れ木になっちゃう。
必死で涙を止めようと鏡の中の醜い顔を笑顔にする。
無理矢理持ち上げた頬の筋肉が時折ぴくぴく引き攣って気持ち悪い。
なんてひどい顔。
その時、視界の隅で何かが光った。
鏡の中に目を凝らして、違和感の正体を探す。
と、ベッドの上に投げ出したままになってたケータイが、ぴかぴかと着信のランプを点滅させていた。
誰だろう。
手にとって開けて、ディスプレイに表示されたインフォメーションに体が硬直する。
新着メール13件。不在着信5件。
全部ノブからだった。
「わ……」
こんなにノブから連絡が来たのなんて今日が初めてかもしれない。
これをどうしよう。
メールを読むべきかどうか、ひどく迷った。
中を確認したいようでしたくない。何かが心に引っかかって、ケータイのボタンを押す指を躊躇させていた。
その時、手の中のケータイが再び震えだした。
ノブからの着信だった。
指が動かない。
脳からの信号が全身に届かなくなってしまったのか、からだが全く言うことをきかなかった。
留守番電話に切り替わる。
無機質なガイダンス。それが終わるのを待ちきれなかったように飛び込んでくる、ノブの声。
『梢! 梢、ごめん……! 全部神さんに聞いた……! 頼むから、電話にでてくれ! 頼む! 話をさせてくれ! オレ……オレ……おま』
前触れもなく切断されるノブの声。
プー、プーと繰り返される電子音。
メッセージは15秒以内でお願いします。
さっきのガイダンスのお姉さんの言葉、忘れたの?
再び震える電話。
繰り返される電子音。
飛び込んでくるノブの声。
『梢……! どうすれば電話に出てくれる!? どうすれば声を聴かせてくれる……!? オレのことが嫌いになったんならそれでもいい! だけどせめ』
再び切断される声。
また繰り返して、ノブの声が部屋に響く。
繰り返されるたびに、声がどんどんひっ迫していく。
『せめて……謝りたいんだ……! ちゃんと、顔を見て謝りたい。お前の文句、全部聞くから……だから……梢……!』
愛してるんだ。
無情に時間通り仕事をこなすケータイが通信を切る直前、涙で掠れるノブの声が耳に滑り込んできた。
驚いてケータイを凝視する。
プー、プーと素知らぬ顔で切断音を繰り返し、それきり沈黙するケータイ。
さっきまでひっきりなしにかかってきていた電話が嘘のように、今度は頑なにだんまりを決め込んだ。
愛してるんだ。
最後に聞いたノブの言葉が、耳の奥で繰り返される。
愛してる。そんなこと、初めて言われた。
ケータイにぽたぽたといくつもの雫がこぼれる。
どうしよう。わたしのケータイ防水じゃないのに、このままじゃ水濡れしちゃう。
服の袖で乱暴にケータイを拭いて、窓に近寄った。
少し夜風に当たって、頭を冷やしたかった。
だっていまのは夢かもしれない。
すっきり冷えた頭でケータイを見直したら、メールや着信なんかなにも来てなくて、虚しい気持ちで目が覚めるんだ。
カーテンを開ける。
窓の鍵を開けようとして、その奥の景色がふいに目に飛び込んで来て、息が止まった。
わたしの部屋の前の道路。そこに、ノブの姿があった。
左手で頭を抱えるようにしてうずくまって、その肩が小さく震えている。
投げ出された右手には、関節が白くなるほど強く握り締められたケータイ。
その腕も、体の震えにあわせて小刻みに揺れていた。
「――ノブっ!」
必死で涙を止めようと鏡の中の醜い顔を笑顔にする。
無理矢理持ち上げた頬の筋肉が時折ぴくぴく引き攣って気持ち悪い。
なんてひどい顔。
その時、視界の隅で何かが光った。
鏡の中に目を凝らして、違和感の正体を探す。
と、ベッドの上に投げ出したままになってたケータイが、ぴかぴかと着信のランプを点滅させていた。
誰だろう。
手にとって開けて、ディスプレイに表示されたインフォメーションに体が硬直する。
新着メール13件。不在着信5件。
全部ノブからだった。
「わ……」
こんなにノブから連絡が来たのなんて今日が初めてかもしれない。
これをどうしよう。
メールを読むべきかどうか、ひどく迷った。
中を確認したいようでしたくない。何かが心に引っかかって、ケータイのボタンを押す指を躊躇させていた。
その時、手の中のケータイが再び震えだした。
ノブからの着信だった。
指が動かない。
脳からの信号が全身に届かなくなってしまったのか、からだが全く言うことをきかなかった。
留守番電話に切り替わる。
無機質なガイダンス。それが終わるのを待ちきれなかったように飛び込んでくる、ノブの声。
『梢! 梢、ごめん……! 全部神さんに聞いた……! 頼むから、電話にでてくれ! 頼む! 話をさせてくれ! オレ……オレ……おま』
前触れもなく切断されるノブの声。
プー、プーと繰り返される電子音。
メッセージは15秒以内でお願いします。
さっきのガイダンスのお姉さんの言葉、忘れたの?
再び震える電話。
繰り返される電子音。
飛び込んでくるノブの声。
『梢……! どうすれば電話に出てくれる!? どうすれば声を聴かせてくれる……!? オレのことが嫌いになったんならそれでもいい! だけどせめ』
再び切断される声。
また繰り返して、ノブの声が部屋に響く。
繰り返されるたびに、声がどんどんひっ迫していく。
『せめて……謝りたいんだ……! ちゃんと、顔を見て謝りたい。お前の文句、全部聞くから……だから……梢……!』
愛してるんだ。
無情に時間通り仕事をこなすケータイが通信を切る直前、涙で掠れるノブの声が耳に滑り込んできた。
驚いてケータイを凝視する。
プー、プーと素知らぬ顔で切断音を繰り返し、それきり沈黙するケータイ。
さっきまでひっきりなしにかかってきていた電話が嘘のように、今度は頑なにだんまりを決め込んだ。
愛してるんだ。
最後に聞いたノブの言葉が、耳の奥で繰り返される。
愛してる。そんなこと、初めて言われた。
ケータイにぽたぽたといくつもの雫がこぼれる。
どうしよう。わたしのケータイ防水じゃないのに、このままじゃ水濡れしちゃう。
服の袖で乱暴にケータイを拭いて、窓に近寄った。
少し夜風に当たって、頭を冷やしたかった。
だっていまのは夢かもしれない。
すっきり冷えた頭でケータイを見直したら、メールや着信なんかなにも来てなくて、虚しい気持ちで目が覚めるんだ。
カーテンを開ける。
窓の鍵を開けようとして、その奥の景色がふいに目に飛び込んで来て、息が止まった。
わたしの部屋の前の道路。そこに、ノブの姿があった。
左手で頭を抱えるようにしてうずくまって、その肩が小さく震えている。
投げ出された右手には、関節が白くなるほど強く握り締められたケータイ。
その腕も、体の震えにあわせて小刻みに揺れていた。
「――ノブっ!」