わたしの彼氏はチンパンジー
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あの子はバカだね。彼氏になんとも思われてないのにね。ただの便利屋だって気づいてないのかな。バカだね。バカだね。
頭の中で無数の声がこだまする。
胸が痛い。頭がわんわんする。
ほんとうにバカみたいだ。ううん、バカそのものだ。
そう思うのに、どうしてこんなにあんなザルバカチンパンジーのことが好きなんだろう。
忘れてしまうノブに腹が立つのはもちろんだけど、それ以上にノブにとってわたしがそれほどまでにちっぽけな存在なんだってことに胸が潰れそうだった。
思い起こせば、ノブはいつも口を開けばバスケや部活の先輩たちの話ばっかりだった。
わたしに興味を向けてくれたことなんて一度もない。
そうだ。きっとノブはわたしの好きな食べ物だってろくすっぽ答えられないに違いない。
どうして?
こんなに好きなのに。
わたしの世界はノブが中心でまわってるのに。
ノブの中心はバスケで、牧さんや神さんや部活の先輩たちで、わたしなんかそこには髪の毛一本ほどのスペースもない。
彼氏は一番近い存在のはずなのに、ノブはこの世でもっとも遠い存在なんだって、痛いくらいに理解してしまった。
心がバラバラに砕け散る音がする。
全身が刺すように痺れる。
胸の底から熱いものが込み上げて来て、喉が苦しくなった。
自分の席に座ると、突っ伏してしまいたいのを我慢して、必死で背筋を伸ばして前を向く。
これで泣いたら、ほんとうにただの大バカものだ。
だから絶対に泣きたくなかった。
思って、涙が零れてしまわないように必死で唇を噛み締めた。
それから二時間目の休み時間くらいまでは、なんとかわたしの機嫌を取ろうとノブは必死だったけど、三時間目の休み時間からはもうノブはこっちを見てもくれなくなった。
頑なに無視し続けてたんだから当たり前といえば当たり前なんだけど、だけど、たったそれだけの時間で諦められてしまう自分が悲しい。
きっと、ノブはまた今日から新しい女の子を探すに違いない。
思うと胸に痺れるような痛みが走った。
だけどしょうがない。だって口を開いたら涙が零れてしまいそうだった。
そうしないためには黙ってるしかなかったんだもん。
でもせめて。
せめて別れる前に、便利屋としての最後の役割を果たしたかった。
放課後、人気が少なくなった校舎を歩いてバスケ部が練習している体育館へと向かう。
わたしは月木金と本屋でバイトをしてて、バイトのない日はいつもこんな風にこの道を通って体育館まで行って、ノブの練習を見るのが日課だった。
だけどこの道をこんな風に通るのも、きっと今日が最後だ。
頬を撫でる風の感触さえ忘れないようにそのひとつひとつを心に刻みつけながら、体育館を目指す。
入り口近くまで来ると、誰かが話してる声が聞こえた。
ノブと神さんだった。
思わず物陰に隠れて、ふたりの会話に耳を澄ます。
「ノブ。今日は梢ちゃん練習見に来てないね。いつもバイトのない日はノブの練習見に来てるのに。急遽バイトでも入ったの?」
「あー。いや、違うと思いますよ」
ノブが聞いたこともないような不機嫌な声を出す。
心臓がぎしりと軋んだ。
「ふうん? もしかして梢ちゃん、具合悪いの?」
「いや、違います。とにかく、もういいんですよあいつのことは。これ以上オレの前であいつの名前を出さないでください。もし出したら、いくら神さんでも本気で怒りますからね」
「え、ノブ?」
戸惑うような神さんの声と、ドスドスと大きな足音を響かせてノブが去って行く音が耳に届く。
視界がゆがんだ。
わかっていたことだったけど、やっぱり愛想を尽かされてしまった。
ガクガクと足から力が抜けて、わたしの体が尻餅をつくように無様に地面に落ちる。
頑張ってこらえていた涙も、もうこれ以上我慢することが出来なかった。
堰を切ったように溢れ出す涙。
視界がけぶってなにも見えない。
「ふぇ……の……ぶ……っ」
喉から勝手に嗚咽が漏れる。
とその時。
「あれ? 梢ちゃん?」
驚いたような神さんの声が上から降って来た。
頭の中で無数の声がこだまする。
胸が痛い。頭がわんわんする。
ほんとうにバカみたいだ。ううん、バカそのものだ。
そう思うのに、どうしてこんなにあんなザルバカチンパンジーのことが好きなんだろう。
忘れてしまうノブに腹が立つのはもちろんだけど、それ以上にノブにとってわたしがそれほどまでにちっぽけな存在なんだってことに胸が潰れそうだった。
思い起こせば、ノブはいつも口を開けばバスケや部活の先輩たちの話ばっかりだった。
わたしに興味を向けてくれたことなんて一度もない。
そうだ。きっとノブはわたしの好きな食べ物だってろくすっぽ答えられないに違いない。
どうして?
こんなに好きなのに。
わたしの世界はノブが中心でまわってるのに。
ノブの中心はバスケで、牧さんや神さんや部活の先輩たちで、わたしなんかそこには髪の毛一本ほどのスペースもない。
彼氏は一番近い存在のはずなのに、ノブはこの世でもっとも遠い存在なんだって、痛いくらいに理解してしまった。
心がバラバラに砕け散る音がする。
全身が刺すように痺れる。
胸の底から熱いものが込み上げて来て、喉が苦しくなった。
自分の席に座ると、突っ伏してしまいたいのを我慢して、必死で背筋を伸ばして前を向く。
これで泣いたら、ほんとうにただの大バカものだ。
だから絶対に泣きたくなかった。
思って、涙が零れてしまわないように必死で唇を噛み締めた。
それから二時間目の休み時間くらいまでは、なんとかわたしの機嫌を取ろうとノブは必死だったけど、三時間目の休み時間からはもうノブはこっちを見てもくれなくなった。
頑なに無視し続けてたんだから当たり前といえば当たり前なんだけど、だけど、たったそれだけの時間で諦められてしまう自分が悲しい。
きっと、ノブはまた今日から新しい女の子を探すに違いない。
思うと胸に痺れるような痛みが走った。
だけどしょうがない。だって口を開いたら涙が零れてしまいそうだった。
そうしないためには黙ってるしかなかったんだもん。
でもせめて。
せめて別れる前に、便利屋としての最後の役割を果たしたかった。
放課後、人気が少なくなった校舎を歩いてバスケ部が練習している体育館へと向かう。
わたしは月木金と本屋でバイトをしてて、バイトのない日はいつもこんな風にこの道を通って体育館まで行って、ノブの練習を見るのが日課だった。
だけどこの道をこんな風に通るのも、きっと今日が最後だ。
頬を撫でる風の感触さえ忘れないようにそのひとつひとつを心に刻みつけながら、体育館を目指す。
入り口近くまで来ると、誰かが話してる声が聞こえた。
ノブと神さんだった。
思わず物陰に隠れて、ふたりの会話に耳を澄ます。
「ノブ。今日は梢ちゃん練習見に来てないね。いつもバイトのない日はノブの練習見に来てるのに。急遽バイトでも入ったの?」
「あー。いや、違うと思いますよ」
ノブが聞いたこともないような不機嫌な声を出す。
心臓がぎしりと軋んだ。
「ふうん? もしかして梢ちゃん、具合悪いの?」
「いや、違います。とにかく、もういいんですよあいつのことは。これ以上オレの前であいつの名前を出さないでください。もし出したら、いくら神さんでも本気で怒りますからね」
「え、ノブ?」
戸惑うような神さんの声と、ドスドスと大きな足音を響かせてノブが去って行く音が耳に届く。
視界がゆがんだ。
わかっていたことだったけど、やっぱり愛想を尽かされてしまった。
ガクガクと足から力が抜けて、わたしの体が尻餅をつくように無様に地面に落ちる。
頑張ってこらえていた涙も、もうこれ以上我慢することが出来なかった。
堰を切ったように溢れ出す涙。
視界がけぶってなにも見えない。
「ふぇ……の……ぶ……っ」
喉から勝手に嗚咽が漏れる。
とその時。
「あれ? 梢ちゃん?」
驚いたような神さんの声が上から降って来た。