わたしの彼氏はチンパンジー
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わたしの彼氏はチンパンジーだ。
バカでマヌケでおたんこなすなチンパンジー。
そんでもって、極めつけは女の子の気持ちなんてまったくわからない、超絶鈍感野郎だ。
もちろん、チンパンジーは人じゃなくて動物だから! 人間の! ましてやその中でも最も複雑な女心をわかれだなんてバカなノブには無理なのかもしれないけど! でも! だけど!
「彼女だって言うなら……好きだって思ってくれるなら……ほんのちょっとだけでもわたしのこと、考えてくれたっていいじゃない」
なんの連絡も来ないケータイを強く握り締める。
その時、部屋の時計が小さく鐘を鳴らした。
12月4日、午前零時。
梢の誕生日が、終わりを告げた。
「おっはよー!」
教室に響き渡ったノブの場違いに明るい声に、わたしの体が敏感に反応した。
もしも朝一番でお誕生日おめでとうと言ってくれたなら、当日に何もなかったことを許してやろう。
仏のように広い心でそう思って、にこにことこちらに歩いて来るノブをじっと見つめる。
だからどうかおめでとうって言って。一言でいいから。お願い。
「よ、梢。なんだよ朝からそんな目でヒトを見て」
「……。ノブ。わたしに、なにか言いたいことない?」
祈るように言うと、ノブの顔がぱぁっと輝いた。
その反応に、わたしの胸も喜びを取り戻す。
やっぱりノブは覚えててくれた。ちゃんとわたしのことを考えてくれてた。
ノブは嬉しそうに顔をくしゃくしゃにして、ばしばしとわたしの背中を乱暴に叩いて来る。
ちょ、いた……! いくら愛情表現にしても限度ってものが……!
「ちょっとノブ……! 痛いよ!」
「いや、悪い悪い! それにしてもよくわかったな! さっすが梢だぜ!」
そう言って、ノブはわたしに手を突き出した。
「……は?」
ちょっとまて。
なんだこの手は?
昨日誕生日だったのはわたしで、もしも手を突き出すのだとすれば、それはわたしのはずなんじゃないか……?
「ノブ……? なに、この手?」
「は? え、お前昨日BSでやってたNBAの試合、録っといてくれたんだろ? やっぱり持つべきものは出来のいい彼女だよな! サンキュー、梢!」
その時、わたしの中でなにかが音を立てて切れた。
「気安く話しかけないでよ。ザルバカチンパンジー」
「……は?」
冷たく言って、踵を返す。
ノブのやつ、鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔してた。
それだけ、なにが起こってるかわからないってことなんだ。
わたしが生まれた、365日の中のたった1日なのに。
NBAのバスケの試合は覚えてるくせに、わたしのことなんて、たった一日でさえ、ノブの記憶には残らない。
じんわりと景色がゆがんだ。
悔しい。バカみたい。
なによりも1番悔しいのは、きっとノブのことだから忘れているだろうと思って、その試合を録画してやっていたことだった。
自分の誕生日におめでとうも言ってくれない彼氏のために、ケーキでお祝いしようと言ってくれる家族を少し待たせてまで録画した試合。
バカみたい。なんて滑稽なんだろう。
きっとこのことを知ったら、世界中の人が笑うに違いない。
バカでマヌケでおたんこなすなチンパンジー。
そんでもって、極めつけは女の子の気持ちなんてまったくわからない、超絶鈍感野郎だ。
もちろん、チンパンジーは人じゃなくて動物だから! 人間の! ましてやその中でも最も複雑な女心をわかれだなんてバカなノブには無理なのかもしれないけど! でも! だけど!
「彼女だって言うなら……好きだって思ってくれるなら……ほんのちょっとだけでもわたしのこと、考えてくれたっていいじゃない」
なんの連絡も来ないケータイを強く握り締める。
その時、部屋の時計が小さく鐘を鳴らした。
12月4日、午前零時。
梢の誕生日が、終わりを告げた。
「おっはよー!」
教室に響き渡ったノブの場違いに明るい声に、わたしの体が敏感に反応した。
もしも朝一番でお誕生日おめでとうと言ってくれたなら、当日に何もなかったことを許してやろう。
仏のように広い心でそう思って、にこにことこちらに歩いて来るノブをじっと見つめる。
だからどうかおめでとうって言って。一言でいいから。お願い。
「よ、梢。なんだよ朝からそんな目でヒトを見て」
「……。ノブ。わたしに、なにか言いたいことない?」
祈るように言うと、ノブの顔がぱぁっと輝いた。
その反応に、わたしの胸も喜びを取り戻す。
やっぱりノブは覚えててくれた。ちゃんとわたしのことを考えてくれてた。
ノブは嬉しそうに顔をくしゃくしゃにして、ばしばしとわたしの背中を乱暴に叩いて来る。
ちょ、いた……! いくら愛情表現にしても限度ってものが……!
「ちょっとノブ……! 痛いよ!」
「いや、悪い悪い! それにしてもよくわかったな! さっすが梢だぜ!」
そう言って、ノブはわたしに手を突き出した。
「……は?」
ちょっとまて。
なんだこの手は?
昨日誕生日だったのはわたしで、もしも手を突き出すのだとすれば、それはわたしのはずなんじゃないか……?
「ノブ……? なに、この手?」
「は? え、お前昨日BSでやってたNBAの試合、録っといてくれたんだろ? やっぱり持つべきものは出来のいい彼女だよな! サンキュー、梢!」
その時、わたしの中でなにかが音を立てて切れた。
「気安く話しかけないでよ。ザルバカチンパンジー」
「……は?」
冷たく言って、踵を返す。
ノブのやつ、鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔してた。
それだけ、なにが起こってるかわからないってことなんだ。
わたしが生まれた、365日の中のたった1日なのに。
NBAのバスケの試合は覚えてるくせに、わたしのことなんて、たった一日でさえ、ノブの記憶には残らない。
じんわりと景色がゆがんだ。
悔しい。バカみたい。
なによりも1番悔しいのは、きっとノブのことだから忘れているだろうと思って、その試合を録画してやっていたことだった。
自分の誕生日におめでとうも言ってくれない彼氏のために、ケーキでお祝いしようと言ってくれる家族を少し待たせてまで録画した試合。
バカみたい。なんて滑稽なんだろう。
きっとこのことを知ったら、世界中の人が笑うに違いない。
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