ケンカの常套句、その結末
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「うん……」
心臓が狂ったように鼓動を早める。
頭が状況についていかない。
「なんで?」
「教室に忘れ物取りに来たんだ。そうしたら、結花と前島の声が聞こえて」
「え、と。どこから聞いてたの?」
「前島が結花に好きだっていうあたり」
それって最初も最初、ど頭じゃないか。
ということは、その後の会話はすべて、宗一郎の耳に……。
「あー、じゃあ、一応確認するけど、えーと、全部……」
「聞いてたよ」
「ですよねー」
「でも、誤解しないで欲しいんだけど、別に立ち聞きしようと思って聞いてたわけじゃないよ。部費を机の中に忘れちゃったから引き返せなかったんだ」
「それはまた無用心な忘れ物ですね」
「はは、そうだね」
耳の当たっている宗一郎の胸から、直に宗一郎の声が響く。
心地いい声。
胸がきゅっとなる。
「意外?」
問われて頷いた。
宗一郎の胸が震えて、苦笑したのが伝わってくる。
「俺、結花と別れてからこんなことばっかりだよ。忘れ物は増えるし、上の空なことも増えたし、最悪なことに得意なシュートも全然決まらない。どうしてくれるの?」
「……わたしのせいにする宗一郎恐ろしい」
「結花のせいでしょ。俺、別れるつもりなんて微塵もなくて、あの日も言いすぎたこと謝ろうと思ってたのに、結花が俺と別れたなんていうから」
「あー……」
宗一郎の腕が強くなった。
気まずさを隠して、言葉を繋ぐ。
「いや、でもほら。宗一郎さん否定しなかったじゃないですか」
「……あの状況で俺に否定しろって言うの? 結花って結構鬼だよね」
「…………ですよねー」
本日二度目のですよねー。
もうどうしたらいいかわからない。
だけど、だんだん状況が飲み込めてきて、胸の奥底からくすぐったいような気持ちが湧き起こってくる。
「宗一郎!」
感情に任せて、宗一郎の体に腕をまわした。
宗一郎がふふと小さく笑う。
「なに?」
「好き」
「俺も好きだよ」
「別れたなんて言ってごめんね」
「いいよ。俺も……記念日忘れててごめん」
「……うん」
宗一郎の鍛え上げられた細い腰にしがみつくと、宗一郎が頭を撫でてくれた。
久しぶりのその感触に、涙が出そうなくらい幸せに胸が震える。
「だけど、俺もケンカした日の夜にそのこと思い出したんだよ? 電話で謝ろうかとも思ったけど、きちんと顔を見て伝えたかったから我慢したんだ。そうしたら次の日あんなことになってて……。あの日のうちに行動しなかったこと、本気で後悔した」
「宗一郎……」
思い出してくれたんだ。
今度は嬉しい涙で視界が滲む。
心臓が狂ったように鼓動を早める。
頭が状況についていかない。
「なんで?」
「教室に忘れ物取りに来たんだ。そうしたら、結花と前島の声が聞こえて」
「え、と。どこから聞いてたの?」
「前島が結花に好きだっていうあたり」
それって最初も最初、ど頭じゃないか。
ということは、その後の会話はすべて、宗一郎の耳に……。
「あー、じゃあ、一応確認するけど、えーと、全部……」
「聞いてたよ」
「ですよねー」
「でも、誤解しないで欲しいんだけど、別に立ち聞きしようと思って聞いてたわけじゃないよ。部費を机の中に忘れちゃったから引き返せなかったんだ」
「それはまた無用心な忘れ物ですね」
「はは、そうだね」
耳の当たっている宗一郎の胸から、直に宗一郎の声が響く。
心地いい声。
胸がきゅっとなる。
「意外?」
問われて頷いた。
宗一郎の胸が震えて、苦笑したのが伝わってくる。
「俺、結花と別れてからこんなことばっかりだよ。忘れ物は増えるし、上の空なことも増えたし、最悪なことに得意なシュートも全然決まらない。どうしてくれるの?」
「……わたしのせいにする宗一郎恐ろしい」
「結花のせいでしょ。俺、別れるつもりなんて微塵もなくて、あの日も言いすぎたこと謝ろうと思ってたのに、結花が俺と別れたなんていうから」
「あー……」
宗一郎の腕が強くなった。
気まずさを隠して、言葉を繋ぐ。
「いや、でもほら。宗一郎さん否定しなかったじゃないですか」
「……あの状況で俺に否定しろって言うの? 結花って結構鬼だよね」
「…………ですよねー」
本日二度目のですよねー。
もうどうしたらいいかわからない。
だけど、だんだん状況が飲み込めてきて、胸の奥底からくすぐったいような気持ちが湧き起こってくる。
「宗一郎!」
感情に任せて、宗一郎の体に腕をまわした。
宗一郎がふふと小さく笑う。
「なに?」
「好き」
「俺も好きだよ」
「別れたなんて言ってごめんね」
「いいよ。俺も……記念日忘れててごめん」
「……うん」
宗一郎の鍛え上げられた細い腰にしがみつくと、宗一郎が頭を撫でてくれた。
久しぶりのその感触に、涙が出そうなくらい幸せに胸が震える。
「だけど、俺もケンカした日の夜にそのこと思い出したんだよ? 電話で謝ろうかとも思ったけど、きちんと顔を見て伝えたかったから我慢したんだ。そうしたら次の日あんなことになってて……。あの日のうちに行動しなかったこと、本気で後悔した」
「宗一郎……」
思い出してくれたんだ。
今度は嬉しい涙で視界が滲む。