ケンカの常套句、その結末
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それだけははっきりわかる。
昨日のすれ違いは、おそらくこの先の自分たちにずっと暗い影を落とし続ける。
そんな状態で付き合い続けなくちゃいけないなら、目の前の彼女たちに向かって別れたと認めて、そのまま本当に別れてしまえばいいやと思った。
そのほうが、後で宗一郎と別れ話をするよりも、ずっと楽だ。
思って頷いた。
「ほんとう。宗一郎とは昨日別れたの」
答えると、目の前のクラスメートが嬉しそうに歓声を上げた。
どうでもいいけど、別れたって言ってる人の目の前であからさまに喜ぶのは失礼なんじゃないかい? どうでもいいけど。
まだしつこく食い下がってくる彼女たちを適当にあしらって席に着くと、宗一郎が教室に入ってきた。
わたしと同じく黒板を見て固まっている宗一郎に、さっきの女の子たちが一斉に駆け寄っていく。
「神くん、おはよう!」
「おはよう、佐伯さん」
「ねえ、神くん。柏木さんと別れたんだって?」
宗一郎と彼女のやり取りが聞こえてくる。
なんとなく気になってしまって、思わずそちらに注目してしまった。
じっと耳を澄ませる。
……宗一郎は、なんて答えるんだろう。
「……それって誰が言ってたの?」
宗一郎の硬い声音に、彼女たちが戸惑った様子で言う。
「え? あ、柏木さん本人にさっき聞いたんだけど……」
「結花に?」
「うん。柏木さんもその黒板を凝視してて、だからわたしたちが別れたの? って聞いたら、そうだよって……」
違うの? 彼女たちが困ったように宗一郎を見上げた。
その視線につられてわたしも宗一郎の顔に視線を移すと、宗一郎の真剣な瞳と目が合った。
やばい。
勢い良く顔を背けると、宗一郎がため息をつくのが聞こえた。
次の瞬間、教室に響き渡る宗一郎の声。
「確かに、俺と結花は昨日別れたよ。だけどさ、中学生じゃないんだからこんな風に黒板に書いたりするなよ。おおかた、昨日教室にいた前島あたりだろ? ちゃんと消しなよ」
また心臓が凍りついた。
わかってたけど、宗一郎は否定なんてしてくれなかった。
思わず伏せた視界が、だんだんと滲んでいく。
教室のざわめきがとても遠く聞こえる。
前島がバレたか、なんて言って黒板に駆け寄る姿とその音があってなくて、まるで遠い国とのテレビ中継を見ているみたい。
すべてが遠のいていく。
もう、宗一郎がどんな顔をしているのかなんて、とてもじゃないけど確認できなかった。
それから数日。
宗一郎とは一言も会話を交わさない日が続いた。
同じクラスなのに、視線だって交わらない。
他人よりも遠い距離。
前はあんなに近くにいたのに、一旦離れてしまえばこんなにもカンタンに接点がなくなってしまう関係だったなんて、その希薄さに愕然となる。
宗一郎はあれから何人もの女の子に告白されてるらしい。
モテるもんね。
知ってる。
そんな人がわたしと一年近く付き合ってくれてたって言うことも、今となっては信じられないくらいだよ。
――結局、一年目を迎えることはできなかったけど。
「…………」
昨日のすれ違いは、おそらくこの先の自分たちにずっと暗い影を落とし続ける。
そんな状態で付き合い続けなくちゃいけないなら、目の前の彼女たちに向かって別れたと認めて、そのまま本当に別れてしまえばいいやと思った。
そのほうが、後で宗一郎と別れ話をするよりも、ずっと楽だ。
思って頷いた。
「ほんとう。宗一郎とは昨日別れたの」
答えると、目の前のクラスメートが嬉しそうに歓声を上げた。
どうでもいいけど、別れたって言ってる人の目の前であからさまに喜ぶのは失礼なんじゃないかい? どうでもいいけど。
まだしつこく食い下がってくる彼女たちを適当にあしらって席に着くと、宗一郎が教室に入ってきた。
わたしと同じく黒板を見て固まっている宗一郎に、さっきの女の子たちが一斉に駆け寄っていく。
「神くん、おはよう!」
「おはよう、佐伯さん」
「ねえ、神くん。柏木さんと別れたんだって?」
宗一郎と彼女のやり取りが聞こえてくる。
なんとなく気になってしまって、思わずそちらに注目してしまった。
じっと耳を澄ませる。
……宗一郎は、なんて答えるんだろう。
「……それって誰が言ってたの?」
宗一郎の硬い声音に、彼女たちが戸惑った様子で言う。
「え? あ、柏木さん本人にさっき聞いたんだけど……」
「結花に?」
「うん。柏木さんもその黒板を凝視してて、だからわたしたちが別れたの? って聞いたら、そうだよって……」
違うの? 彼女たちが困ったように宗一郎を見上げた。
その視線につられてわたしも宗一郎の顔に視線を移すと、宗一郎の真剣な瞳と目が合った。
やばい。
勢い良く顔を背けると、宗一郎がため息をつくのが聞こえた。
次の瞬間、教室に響き渡る宗一郎の声。
「確かに、俺と結花は昨日別れたよ。だけどさ、中学生じゃないんだからこんな風に黒板に書いたりするなよ。おおかた、昨日教室にいた前島あたりだろ? ちゃんと消しなよ」
また心臓が凍りついた。
わかってたけど、宗一郎は否定なんてしてくれなかった。
思わず伏せた視界が、だんだんと滲んでいく。
教室のざわめきがとても遠く聞こえる。
前島がバレたか、なんて言って黒板に駆け寄る姿とその音があってなくて、まるで遠い国とのテレビ中継を見ているみたい。
すべてが遠のいていく。
もう、宗一郎がどんな顔をしているのかなんて、とてもじゃないけど確認できなかった。
それから数日。
宗一郎とは一言も会話を交わさない日が続いた。
同じクラスなのに、視線だって交わらない。
他人よりも遠い距離。
前はあんなに近くにいたのに、一旦離れてしまえばこんなにもカンタンに接点がなくなってしまう関係だったなんて、その希薄さに愕然となる。
宗一郎はあれから何人もの女の子に告白されてるらしい。
モテるもんね。
知ってる。
そんな人がわたしと一年近く付き合ってくれてたって言うことも、今となっては信じられないくらいだよ。
――結局、一年目を迎えることはできなかったけど。
「…………」